自己批判
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自己批判(じこひはん、Self-criticism)とは、自分の行いや考え方の誤りを自ら見つめなおして、反省することである[1]。ただし、度重なる自己批判は「こうあるべき」「ねばならない」という自縄自縛的な思考に陥りがちで、後述の通り、自分を追い詰めてしまうことによる抑うつ状態やうつ病発症を招く危険性をはらんでいる[2]
共産主義自己批判させられるチベット人女性(1958年)

共産主義においては、自分の「誤り」を「自発的」に認め、公開の場で自分自身を批判する事を指す。各国の共産党や当初の武装革命を支持した革新組織などで行われ、中国では自己批判に加えて、集団で糾弾して吊し上げること(総括と呼ばれた)が行われた[3]

共産主義運動では、時に「自己批評」セッションによって自らのイデオロギーの誤りを書かせたり口頭で声明を出すことで、党内の新たな信念を肯定することとなった。

これはソ連で誕生し、その後共産主義国家・各国共産主義を掲げる組織の主流派によって、所属を問わず分派言動など反党行為をしたと見なした人物らへ行わされた行為であった。党員だった場合は組織からの除名処分、軽いと自己批判のみで済む場合もあるが、場合によって自己批判させられた後に粛清処分がされた。ソ連では大粛清モスクワ裁判中国では文化大革命紅衛兵による自己批判強要(吊し上げ)が有名である[3]

日本の新左翼運動では「自己否定」がテーマになっていた側面もあり[4]連合赤軍の「総括」で死者を出した山岳ベース事件が有名な事例として知られる。自己否定論および戦後の歴史観も参照。
自己批判をさせられた人物

共産主義体制下および政党内では、指導層を含むすべての構成員が平等であるという建前の下、個人の過ちを明らかにする原則唯一の方法であるとされる。そのため、ソ連などでは権力闘争の勝者が敗者に自己批判を強要し、左遷や粛清を正当化することがあった。

ゲオルギー・ピャタコフ - ソ連の政治家レフ・トロツキーを支持して失脚。自己批判の後一旦政界復帰するも粛清。

レフ・カーメネフ - ソ連の政治家。ヨシフ・スターリンとの権力闘争に敗れ、自己批判ののち粛清。

劉少奇 - 中国共産党の政治家。文化大革命の際に「走資派」と批判され、自己批判。

筆坂秀世 - 日本共産党幹部。セクハラ事件を起こしたとして自己批判の後に失脚。のち離党。

小池晃 - 日本共産党幹部。パワハラ事件を起こしたのち自己批判[5]

自己批判を行った指導者

金正恩 - 北朝鮮最高指導者朝鮮労働党委員長)。2017年の新年の辞で「いつも気持ちだけで、能力が伴わない」と自らの批判を行った[6]

宗教

いくつかの宗教文化においては、自己批判が生涯満足(lifetime satisfaction)のため、肯定的で不可欠な慣行であると考える。「告解」および「痛悔機密」も参照
精神病理学への示唆

心理学においては、典型的には人が自己アイデンティティ(self-identity)を崩壊させる否定的なパーソナリティ特性として研究・議論されている[7]

自己批判はしばしば大うつ病と関連付けられている。いくつかの論者はある種のうつ病(病的うつ病、introjective depression)の兆候として自己批判を挙げており、一般的にうつ病患者は一般市民よりも自己批判的な傾向がある[7][8]。 うつ病患者は、一般市民よりもより自己批判的であり、患者らはうつ病エピソード後も引き続き自己批判的パーソナリティを示し続ける[9] 自己批判に対して多くの科学的焦点が当てられるのは、うつ病との関連性によるものである[10][11]
うつ病へのリスクファクター

自己批判は、いくつかのネガティブな変数と関連している[12][13].[14][15]。あるサンプルでは、自己批判的パーソナリティは知覚視点の違い、負の影響、自己イメージ目標、明白な自己批判と関連があった[16]。これらはすべてうつ病の経験に関係する特性であり、自己批判がうつ病に影響を及ぼすことが明らかとなった。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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