自動販売機
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清涼飲料水の自動販売機スナック菓子の自動販売機新聞自動販売機(米国シカゴ

自動販売機(じどうはんばいき、: vending machine)とは、不特定多数の人間が通貨貨幣)もしくはそれに代替するカードなどを投入して対価を払うことで自動で商品(物品)の購入やサービスの提供を受けることができるようにした機器[1][2]。自販機(じはんき)とも略される。乗車券食券などの券を販売する機械については「自動券売機」とも言う。
概説

自動販売機とは、お金を支払うと(たとえば、現金や電子マネーのカードをタッチするなどして)押しボタン操作などをすることにより、自動的に商品(物品や情報やサービス)を購入することができる機械である。代金を投入し、機械を操作すれば、商品を受け取り、釣りを用意する機構が伴う機械では釣り銭を受け取ることができる。

ただし、公衆電話機や娯楽機(ジュークボックスアーケードゲーム機など)は、サービスを無人で自動で提供しているものの自動販売機の範疇には含めないのが一般的である[3]

商品の販売者の側から見れば、自動で販売を行ってくれる機械である。人手不足や人件費高騰の対応策として効果があり、休日夜間も営業できる利点がある[3]。自販機はロボットの一種であるともいえる。自動販売機は、商品の買い手の側から見れば、有人の店が閉まっている休日や夜間でも商品を提供してくれるわけである。

世界最古の自動販売機は、アレクサンドリアのヘロンの著書に記述されている古代エジプトの聖水販売機だったとされる。近代の、硬貨で煙草が買える自動販売機としては1615年のイギリスのものが現存している。日本では、1890年に、小野秀三、俵谷高七それぞれが自動販売機の特許を得た(詳細は節「歴史」を参照)。

自動販売機の操作機構としては、硬貨の重量や購入者自身の操作による機構で作動する手動式[4]のものも存在するが、現代の自動販売機は多くは電気式である。その内部的な機構は一般的に、「金銭装置」「指示装置」「貯蔵・加工装置」「販売装置」から構成されている(詳細は節「構成と構造」を参照)。

現金決済のほか電子マネーなどのキャッシュレス決済が可能な機種もあり、現金の場合には金銭の投入後に商品を選択し、電子マネー等のキャッシュレス決済の場合は商品選択後にICカード等により決済を行う[5]。購入時にポイントを加算する機能を持つものもある。また最近では、災害時に飲料を無償で提供する機能や、自動体外式除細動器(AED)の収納、無線LANのアクセスポイント機能など、特殊な機能を追加したものもある(詳細は節「多機能化」を参照)。

自動販売機は、消費電力の大きさ、光害問題、未成年喫煙飲酒への影響、窃盗問題などさまざまな問題に直面してきたが、問題に対処すべく対策が打たれ、進化した機種の登場を繰り返してきた。現在もキャッシュレス決済に対応した機種の開発や導入が徐々に行われている(詳細は節「問題点と対策」を参照)。
歴史
最初の自動販売機

世界初の自動販売機は、古代エジプトの寺院に設置された聖水を販売するための装置である[6]。この装置は完全自動で5ドラクマ硬貨を投入すると、硬貨の重みで栓が開き、蛇口から水が出る構造であった[6]。この記述図解はアレクサンドリアのヘロン著『気体装置(Pneumatika)』にある(原本は失われているが、1587年の写本がフィレンツェ国立中央図書館に所蔵されている)[7]。しかし、ヘロン自身の発明なのか彼の師の発明を記述したものかは分かっておらず、この装置の発明者は不明である[6]。また、どのくらい広く用いられていた装置なのかもよくわかっていない[6]
イギリスイギリスのたばこ販売機(1931年)

現存している最古の自動販売機は、1615年のイギリスの煙草自販機で、居酒屋や宿屋に設置されていたものである[6]。箱の上部の硬貨投入口から半ペンスコインを投入すると蓋が開いて商品を取り出すことができる仕掛けであるが、蓋が開いたあとは手動で閉じる必要があり、宿の主人や使用人が蓋を閉めていたため実用的なものではなかった[7]

イギリスでは1857年にデンハムの郵便切手自販機に対して、初めて特許が付与された[8]
アメリカ

アメリカ合衆国では1884年にフルーエンの自動引出装置に対して特許が与えられた[8]

1888年にはトーマス・アダムスが自社製のガムを販売するための機械を開発して駅に設置した[7]。また、販売を促進するゲーム性を自動販売機に追加するアイデアは、1897年にPulver Manufacturing Companyによって小さなフィギュアおまけつきのものが設置された。このアイデアは売買活性機(trade stimulator)として知られる新しい仕組みとして広まっていき、スロットマシーンピンボールの誕生につながることになる。

1925年にはウィリアム・ロウによって異なる価格の多品種の商品を販売できる煙草自動販売機が開発され、一般にはこれによって近代自販機の歴史が始まったとされている[9]
日本現存する日本最古の自動販売機「自働郵便切手葉書売下機」(展示はレプリカ)。1904年(明治37年)に発明家の俵谷高七が作成した。逓信総合博物館の展示。1960年ごろの紙コップ式ジュース販売機(大英堂製パン店不動前デジタルサイネージ自動販売機 JX34(富士電機)ボタン操作を排し、47インチ液晶ディスプレイについたタッチパネルで操作する。
前面にカメラを内蔵しており、客の接近や自動認識した客の属性判断から、おすすめの商品を動的に変化させる機能を持つ。

日本では、物品の販売機ではないが、1876年(明治9年)に上野恩賜公園内にあった新聞縦覧所に自動体重測定器が設置された記録があるものの、製造者や設置期間などは不明である[7]

物品販売の自動販売機としては、1890年(明治23年)、小野秀三による自動販売機の特許(1888年3月出願、特許第848号)と俵谷高七による自動販売機の特許(1888年12月出願、特許第964号)の2件の特許がなされた[8][10]。このうち俵谷高七は、郵便局からの依頼を受けて器具類を製作していた長州藩(現・山口県)の下関の指物師で、1890年の第3回内国勧業博覧会への出品を果たした[10]。俵谷の自動販売機にはすでにスラグリジェクター(偽貨排除)やコインリターン(売切時の硬貨返却)の機能が搭載されており、当時の欧米の機器にも見られない先駆的なものであった[11]


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