自動体外式除細動器
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AED(外観)パッドを取り出したところ駅に設置されているAED

自動体外式除細動器(じどうたいがいしきじょさいどうき、: Automated External Defibrillator, AED)は、心停止(必ずしも心静止ではない)の際に機器が自動的に心電図の解析を行い、心室細動を検出した際は除細動を行う医療機器除細動器の一つであるが、動作が自動化されているため施術者が非医療従事者でも使用できる。
概要

心室細動していた心臓は、AEDによる電気ショックで静止状態になるので、使用後は速やかに胸骨圧迫によって、拍動の回復を促す必要がある(および、技術があり可能ならば人工呼吸を併用することが望ましい[1])。通常であれば拍動は自発的に再開する。主に不特定多数の者が出入りする空港や航空機内、ホテルなどの公共施設に広く設置され、消火器などと同様に、万一の事態が発生した際には、その場に居合わせた人(バイスタンダー)が自由に使えるようになっている。

電気除細動器は1950年代に初めて開発され、初期の通電波形は単相性で、通電により「心室細動」が除細動されることは驚きをもって受け止められた[2]。1980年代になって二相性波形のほうがより良い効果を示すことが明らかになると、低エネルギー通電も可能な二相性通電波形が採用されるようになり、1995年にAHA(米国心臓協会)のPAD勧告が公共スペースでの市民による除細動を推奨したことで自動体外式除細動器が普及するきっかけになった[2]

日本では、救急車が現場到着するまで平均で約8分を要するが、心室細動が起きると数秒で意識がなくなり約5分後には不可逆的な脳障害が発生して死亡することとなるため[3]、一刻も早く電気的除細動を施行することが必要とされている[4]。救急車の到着以前にAEDを使用した場合には、救急隊員医師が駆けつけてからAEDを使用するよりも、救命率が数倍も高いことが明らかになっている[5][6]
機器の使用
使用方法

収納スタンドは、蓋を開けるとサイレンやブザー鳴動・赤ランプの点滅で緊急事態発生を周囲に告げる他、使用された事を示す信号が、当該施設の防災センターに送られるようになっているものもある(これにより防災センターは、警備員を現場に向かわせ対応する)。

電源を入れると、電極パッドを胸に貼り付けるように音声案内が流れる。パッドを素肌に直接貼り付けることができていれば、ブラジャーは外す必要はなく、もし余裕があれば、パッドを貼った後に、上から上着やタオルなどを掛ければよい(電気ショックの時間を遅らせないことが重要)[7]。電極パッドを胸に貼り付けると自動的に心電図の解析が始まり、電気ショックを与えるべきかの判断が行われる。

電気ショックが必要と判断された場合には、放電のボタンを押すようにアナウンスが流れ、施術者がボタンを押すと電気ショックによる除細動が行われる。

ショックボタンがない代わりに自動で電気ショックを実行するオートショックAED(フルオート機)も存在する。従来機(セミオート機)だとショックボタンを押すのを躊躇ってしまったり、操作ミス等でショックが適切に行われなかったという問題が調査により報告されているが、フルオート機ではショックが必要と判断した場合は音声ガイドかブザー音による3カウント後に自動でショックを実行するために確実に処置を行え、同時に救助者の精神的負担も抑えられるとしている [8]。しかし、ボタンがないことで救助者が困惑する可能性があったり実行前に救助者が患者から離れるのが遅れてしまうと感電する可能性がセミオート機よりも高いといった相違点に伴う問題もあり、厚労省からも注意が呼びかけられている[9]。日本国内では2021年に初めて製造販売承認を取得した製品が発売されたが、2022年現在、販売条件として日本救急医療財団の指導に基づいた設置要件を満たした場所へ設置すること、そして使用者が適切な講習・訓練を受けている必要がある[10]。当該製品にはセミオート機と区別する為にJEITA(電子情報技術産業協会)によって策定された共通のロゴが製品本体やキャリングケースに掲示されている。

AEDの使用方法については、製造メーカーのホームページなどを参照のこと。
使用目的の誤解メドトロニックのAEDトレーニングシステム。AEDは電気ショックの発生源となる本体と人体に装着する電極パッドから構成される。本体は、電源スイッチの他に心電図の解析を行う解析ボタンと電気ショックを与える通電ボタンを備えている。

AEDとは「異常な拍動を繰り返し、ポンプとしての役割を果たしていない状態(心室細動)」の心臓を、電気ショックによって一時静止させることにより正常な拍動の再開を促すものであり、「静止した心臓を電気ショックで再起動させる」ものではない。

また、AED使用によって一時静止させられた心臓は、本来であれば自動的に拍動を再開するが、酸欠等の状態にあると拍動が再開しにくいため、AED使用後は、速やかに(人工呼吸と)胸骨圧迫(一般に心臓マッサージといわれるもの)を行い、拍動の再開を促す必要がある。AED機器が心室細動ではないと診断した場合は、除細動は行われず、胸骨圧迫を行うようアナウンスが流れる[11][12]
講習
救命講習の様子公的団体
日本では、各地の
消防本部日本赤十字社の都道府県支部が、心臓マッサージやAEDの使用方法などの救命講習会を開催している。病院や保健所で独自に行っているところもある。
民間団体
アメリカ心臓協会 (AHA: American Heart Association) 公認講習を開催する日本蘇生協議会所属のNPO法人愛宕救急医療研究会、NPO大阪ライフサポート協会、日本ACLS協会や、メディックファーストエイド社、国際救急救命協会、日本救急蘇生普及協会(財団法人日本救急医療財団指定事業者)が非医療従事者向けにトレーニングを提供している。また、プロ野球球団に入団したばかりの新人選手に対して救命講習会を行った例がある[13]
設置と保守
主な設置場所

2005年のヨーロッパのガイドラインでは、空港、カジノ、スポーツ施設など少なくとも2年に1件院外心停止が発生する可能性がある施設への設置を推奨している[14]。また、米国のガイドラインでは5年に1件心停止が発生する場所への設置を推奨している[14]
交通機関

空港旅客機内(旅客機は、1990年代から諸外国の航空会社がいち早く機内に搭載を開始し、日本航空も、2001年10月に国際線機内に搭載を始めている[15]

鉄道駅構内(大都市周辺や地方主要都市のJR駅、大手私鉄地下鉄)、新幹線特急列車

フェリーターミナル、フェリー内

バス(主に観光バス)、バス営業所


中部国際空港に設置されたAED

京橋駅 (大阪府)に設置された緑色のランプ付きのタイプ(フィリップス製)

Osaka Metro難波駅千日前線四つ橋線ホームに設置(日本光電製)

JR西日本ひかりレールスター700系7000番台)6号車に設置(フィリップス製)

JR九州800系4号車に設置

JR東日本E7系7号車デッキに設置(日本光電製)

医療機関龍谷大学に設置されているAED搭載の自動販売機(AEDは日本光電製)

病院(病棟、ロビー)、診療所歯科医院含む)


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