自傷
[Wikipedia|▼Menu]

Self-harm
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
精神医学
ICD-10X84
DiseasesDB3060529126
Patient UK自傷行為
MeSHD016728
テンプレートを表示

世界の疾病負荷(WHO, 2004年)[1]疾患DALY
(100万)割合
(%)
1下気道感染症94.56.2%
2下痢性疾患72.84.8%
3大うつ病65.54.3%
4虚血性心疾患62.64.1%
5HIV / AIDS58.53.8%
6脳血管疾患46.63.1%
7未熟児、低出生体重44.32.9%
8出生時仮死出生外傷41.72.7%
9交通事故41.22.7%
10新生児の感染症など40.42.7%
11結核34.22.2%
12マラリア34.02.2%
13COPD30.22.0%
14屈折異常27.71.8%
15成人発症性の難聴27.41.8%
16先天異常25.31.7%
17アルコール使用障害23.71.6%
18他傷による怪我21.71.4%
19糖尿病19.71.3%
20自傷行為怪我19.61.3%

自傷行為(じしょうこうい、self-harm、以前はself-mutilation)とは、意図的に自らの身体をつけたり、毒物を摂取する事であり[2]、致死性が低い点で自殺とは異なる。リストカット、ライターやタバコで肌を焼く(根性焼き)、髪の毛を抜く、怪我をするまで壁を殴るなどの行為がある。虐待トラウマ心理的虐待及び摂食障害、低い自尊心完璧主義と正の相関関係があると考えられている。また抗うつ薬や、他の薬物などが自傷行為を引き起こすことが知られている。

自傷行為は、1994年の『精神障害の診断と統計マニュアル』第4版(DSM-IV)の診断名としては独立しておらず、精神障害の症状の1つとして扱われていた。背景となる障害には、境界性パーソナリティ障害双極性障害心的外傷後ストレス障害解離性障害統合失調症知的障害があり、また近年では何ら問題の見られない一般人口での伝染も見られる。治療方針は全く異なってくるので患者本人および家族に自傷行為についての誤解を解いてもらうことなど、その評価が非常に重要である。脳の器質的障害が原因とされる自閉症にも自傷と呼ばれる行動障害があり、自分の手を噛む、壁や床に頭を打ち付ける、自分の顔を叩くなどの行動が見られることがある。ただし統計的に親族間での関連性がある双極性障害、統合失調症、境界性人格障害、解離性障害などに見られる自傷行為とストレス性のものは別物である。依存症との関係も指摘されるが、伝統的精神医学の勢力が強い日本では薬物依存の恐れがあるのに精神科医が薬物を処方したりといった事態が発生していた。もっとも、アメリカ合衆国でもスティーブン・レベンクロンのように、自傷行為そのものを疾患として扱うべきだという主張もあり、2013年の第5版では「非自殺性自傷行為」が独立の疾患として扱われることになった。

自傷行為はWHOのICD-10では独立した疾患として扱われていた。自傷行為による疾病は、世界の障害調整生命年(DALY)の1.3%を占め、20位に位置づけられる(WHO,2003年)。特に青年においては一般的である[3]。さらに自傷行為は自殺リスクと関連性があり、自傷行為を行う人は12ヶ月後の自殺死亡リスクが50-100倍であると英国国立医療技術評価機構(NICE)は報告している[3]。WHOは世界で88万人が自傷行為によって死亡していると推定している(2010年)[4]。また、2019年5月にはICDは第11版(ICD-11)への改定が行われたが、この中に盛りこまれた複雑性PTSDの症状の一つである感情の制御困難の一種として自傷行為が挙げられている。

治療は、欧米では認知行動療法が主体である。それは自傷行為に替わる、危険性の少ない行動を身につけるということで達成される。
目次

1 用語の歴史

2 自傷と自殺の区別

3 原因

3.1 精神疾患

3.2 薬物とアルコール

3.3 遺伝的・生化学的因子

3.4 身体の自己所有意識の欠如

3.5 虐待との関連性

3.6 直接的動機について


4 経過

4.1 初期の症状

4.2 常習化

4.3 回復


5 治療

5.1 援助の方針

5.2 心理社会的支援

5.3 薬物使用の方針


6 疫学

6.1 伝染

6.2 日本での疫学


7 社会的側面

7.1 スティグマ


8 動物の自傷行為

9 脚注

10 出典

11 参考文献

12 関連項目

13 外部リンク

用語の歴史

アメリカではリストカットのような自傷行為は、1960年代より流行した[5]。1990年代以前には、自傷行為を表す英単語としてself-mutilationという語が使われていたが、mutilationとは機能不全にするように切断するというような意味であり、1990年代半ばからself-injuryという語に置き換わっていった[6]。偶発的に起こることではない[7]。日本で1999年に、スティーブン・レベンクロンの『自傷する少女』を邦訳した訳者は、そのあとがきで「自傷」という言葉がなじみの薄いものであると紹介しており、日本で問題化するのはそれ以降である[5]

1983年に、PattisonとKahanが「故意に自らを害する症候群」(Deliberate self-harm syndrome)という概念を提唱し、その3徴候として、「薬物の乱用または依存」、「自傷」、「食行動異常」を挙げた[8]。女性では摂食障害の60?70%に自傷行為を、また男性では薬物乱用の50%以上に自傷行為を伴うとされており、共通の病理、または共通の行動化要素としての関連が考えられる。

身体改造は、タトゥーピアスなどの形態をとるが、これらはほとんどの文化において文化的に是認され、象徴性あるいは美的に施されるものであり、それを自傷ととらえることは不適切であるが、そうした美的な観点を欠いたまま自分で施されたり、特にそれが衝動的に心理的な苦痛から逃れるという動機でなされた場合には、自傷でありうる[9]。アメリカでタトゥー、ピアスを自傷行為と考える専門家は80?90%であったが、2000年半ばには5?10%であり、ゆえに社会的に容認されていれば、身体改造を自傷と考えることは不適切である[9]
自傷と自殺の区別

自傷と自殺については厳密に異なる。自傷行為を自殺行為と誤解することは治療の妨げとなる(Lineham,1993a[要文献特定詳細情報]) とされている。

自殺が、意識を終わらせたい、苦痛から永遠に遠ざかりたいという動機から行われる[10]。自傷に多い、切るという方法は、自殺では1.4%の者しかとらない[10]

自傷は、自傷者の多くが自己報告するように、心理的な苦痛を和らげ変化させるためであり、一方少数はロボットのような感情の空虚さが苦痛でありそこから逃れるためにであると報告する[10]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:73 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef