膿疱性乾癬
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乾癬
発音[s??ra??s?s, ps-, s?-, s??-, so?-]
[1][2]
(psora + -iasis)
概要
診療科皮膚科膠原病リウマチ科整形外科免疫学
分類および外部参照情報
ICD-10L40
ICD-9-CM696
OMIM177900
DiseasesDB10895
MedlinePlus000434
eMedicineemerg/489
plaque derm/365
guttate derm/361
nails derm/363
pustular derm/366
MeSHD011565
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乾癬(かんせん、: psoriasis)は、慢性の皮膚角化症状をはじめとする全身炎症性の自己免疫疾患である。伝染性感染症ではない。明らかに難病[3]だが、2023年7月現在、特定疾患指定難病になっているのは 膿疱性乾癬(汎発型)のみ。

皮膚症状に対しては、ビタミンD3外用薬ステロイド外用薬ナローバンドUVB療法などが使用される。これらで治療不十分な場合や、皮膚症状以外の症状に対しては、各種の免疫抑制剤、古くはジェネリック医薬品のシクロスポリンや、近年ではメトトレキサート生物学的製剤が用いられる。
分類

下位分類

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん、 psoriasis vulgaris: PV) - 「尋常性」とは「普通の、ありふれた」という意味であり、乾癬で最も患者数が多い。

乾癬性関節炎(関節症性乾癬)(かんせんせいかんせつえん、かんせつしょうせいかんせん、psoriatic arthritis: PsA)

膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)

滴状乾癬(てきじょうかんせん)

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)は日本においては乾癬に分類されないが、他国では乾癬に分類される場合が多い。他の言語の乾癬の記述を参照。

疫学

世界的には1.6%程度の有病率。人種により差があり白色人種では2 - 4%と多く、黒人と黄色人種に少ない。一卵性双生児の発症一致度が70%(二卵性双生児の発症一致度は約20%)であり、遺伝的要素[4] が主たる要因と考えられている。

これと一見矛盾するかのようだが、欧州よりも白色人種の割合が低いアメリカ合衆国の方が欧州より有病率が高い。また日本では戦前はまれな病気であったため、欧米に比べ認知度が低かったが、食生活が大きく変化した太平洋戦争後に患者が増加し、1970年代から1990年代の間に有病率が0.025%から0.1%と上昇しており、2010年代には約0.4%に達している。これらのことから、遺伝的要因だけでなく、食生活を中心とした生活習慣も要因の1つと考えられている。

乾癬患者では心臓冠動脈動脈硬化プラークの断面積比率が高いとの報告がある[5]



原因

ゲノムワイド連鎖解析では、HLA class I近傍のほか、6番染色体上のPSORS1や17番染色体上のPSORS2をはじめとする複数の遺伝子座が候補遺伝子領域として報告がある。

近年、乾癬は関節リウマチクローン病とならぶ代表的なTh17細胞性慢性疾患と考えられるようになり、治療上も抗TNF-αモノクローナル抗体のアダリムマブインフリキシマブ、抗ヒトIL-12/23p40モノクローナル抗体のウステキヌマブ、抗IL-17A抗体のセクキヌマブ、抗IL-17A受容体A抗体のブロダルマブなどが効果をあげている。
尋常性乾癬典型的な尋常性乾癬の皮疹
典型的な症状

皮膚症状のみ。特有の光沢を有した白色の鱗屑(りんせつ。皮膚上皮角質細胞が剥がれ落ちたもので、皮屑(ひせつ)とも呼ばれる)をその表面に伴う、皮膚が肥厚し、やや硬くなった、赤い発疹が出現する。病変部は周りの皮膚より少し盛り上がった状態へ移行し、大きな紅色局面(きょくめん。発疹によって一様な広がりをもった病変のこと)を形成する。これを俗にハム様皮疹と形容されることがある。

外部からの物理的な刺激で症状が引き起こされる(Koebner現象(ケブネル現象))のが特徴で、肘、尾てい骨部からの発症が典型的だが、本人の視界に入りづらい部位であり、痒みを伴わない場合など発症後直ちの受診とならないことがある。膝(視界に入りやすい)、頭皮(しばしば強い痒みを伴い、掻いてしまうと、これが物理刺激になる。)で気づき受診する場合も多いが、眼球以外ならば全身どこにでも発疹が出現し得る。の生成部に発症した場合は爪が変形して凹凸や穿孔、荒れになる。これは爪乾癬(つめかんせん)とも呼ばれる。爪に症状が出た場合は、尋常性乾癬にとどまらず、乾癬性関節炎へと進行する可能性が高い。

強い発疹のわりには他の皮膚疾患に比べて痒みが少ない場合もあれば、一方で強い痒みを伴う場合もある。症状の度合や病変部位、使用する薬剤の刺激などによって非常に多様性のある病態を形成する。

他人に伝染することはない。しかし他の伝染性の皮膚病と外観が似ており、一般の人のみならず、皮膚科専門医以外の医師にも見分けが難しい。かといって患者が周囲の人々に対し乾癬だと口頭で説明しても、一般における認知度が低く、感染と乾癬の音が同じ「カンセン」であるため、やはり伝染性の病気と誤解されやすい。[6][7] このため、乾癬に治療効果がある海水浴(海水と太陽光線の効果)やある種の温泉への入浴を、人目を気にして避けることで、せっかくの治癒・症状改善の機会を逃しているという問題がある。伝染しないことを理解してもらうなどの啓発活動が行われている[8]
発症機序

皮膚の表皮を作るスピードが通常の10倍速を上回り(正常皮膚の細胞周期は約457時間、対して病変部位は37.5時間と.mw-parser-output .frac{white-space:nowrap}.mw-parser-output .frac .num,.mw-parser-output .frac .den{font-size:80%;line-height:0;vertical-align:super}.mw-parser-output .frac .den{vertical-align:sub}.mw-parser-output .sr-only{border:0;clip:rect(0,0,0,0);height:1px;margin:-1px;overflow:hidden;padding:0;position:absolute;width:1px}1⁄10以下。細胞の増殖を超える速度)、真皮の血管が肥大しつつ組織を炎症しながら、ターンオーバー(表皮が角化し剥離して入れ換わる周期)が通常なら4週間のところ3?4日で完了する。どんどん表皮が増殖し、角化が亢進している状態によって、白いかさぶた状の皮疹を多く生じる。

病態形成にT細胞性自己免疫系が関与する可能性が示唆されている[9]
増悪要因

冬季に悪化し夏季に軽快、腸疾患を伴う患者が多い、食生活により症状が増悪・軽快する、乾癬モデルマウスを無菌状態で飼育すると発症しない、歯周病の悪化で増悪する、腸内細菌叢の特異的な偏りが潰瘍性大腸炎患者と共通するなど、上記の遺伝的要因を背景とする増悪原因が研究されているが、未だ解明には至っていない。
検査

Auspitz現象(アウスピッツ現象):発疹のある部分を水平に削ると、点状の出血が出現する現象。

Koebner現象(ケブネル現象):正常な皮膚に物理的刺激を与えると、その部分に発疹が出現する現象。

蝋片現象(ろうへん現象):発疹の表面にある鱗屑(ガサガサ)をこすると、
が剥がれるように剥げる現象。

病理検査:皮膚の一部を麻酔して採取し、顕微鏡でみる検査。不全角化、表皮突起の延長、 Munro の微小膿瘍(角層内の好中球の浸潤が原因)が特徴的。

参考画像

乾癬のプラーク

乾癬のプラーク

プラーク・タイプ乾癬で覆われた腕



乾癬性関節炎(関節症性乾癬)

出典:[10]

関節炎を発症するのは乾癬の患者の 1-20%程度とされ、近年増加傾向である[11]

背中や腰の関節に炎症が生じた場合は、脊椎関節炎の一種として分類される。

乾癬の皮膚症状が先行し皮膚科を受診する場合が多いが、手足の関節症状が先行した場合には膠原病リウマチ科、腰や背中の痛みが先行した場合には整形外科を受診することとなる。皮膚症状が先行した場合、尋常性乾癬の諸症状に加え、全身の関節に炎症が起き、まず起床時に関節の強ばりを感じ、次いで痛みと腫れが生じる。関節破壊・変形に至る場合もあるが、関節リウマチや他の脊椎関節炎のような急激な進行はまれである。

指のDIP関節(第一関節)にも起きる点が関節リウマチとの相違点である。


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