脳幹
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脳: 脳幹
大脳間脳中脳延髄脊髄小脳脳の矢状断。延髄、橋、中脳、間脳が脳幹。脳内での脳幹の位置。赤色で示した部分が狭義の脳幹(下位脳幹)。オレンジ色で示した部分(間脳)まで含めて脳幹とする事もあり。
名称
日本語脳幹
英語brain stem, brainstem
ラテン語truncus encephali
関連構造
上位構造
構成要素間脳中脳小脳を除く菱脳延髄)。間脳を除いて下位脳幹と呼ぶ
画像
アナトモグラフィー三次元CG
関連情報
IBVD ⇒体積(面積)
Brede Database ⇒階層関係、座標情報
NeuroNames ⇒関連情報一覧
NIF ⇒総合検索
MeSHBrain+Stem
グレイ解剖学書籍中の説明(英語)
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脳幹(のうかん、: brain stem)は、中枢神経系を構成する器官集合体の一つ。広義には中脳延髄間脳を含む部位。狭義には中脳と延髄と橋のみを指す。また、間脳を含まない狭義の括りを下位脳幹 (lower brainstem) と呼ぶ。
脳幹の機能

脳幹は多種多様な神経核から構成されており、その機能も多様であり、この小さな部分に多数の生命維持機能を含む。
多数の脳神経が出入りし、多数の神経核が存在する。

自律神経機能中枢が存在する。

意識と覚醒に重要な神経回路があるとされる。網様体の項を参照。

脊髄から視床へ上行する感覚神経路が存在する。

上位中枢から脊髄に下降する運動神経路が存在する。

姿勢反射の中枢である。

脳幹の形態評価

非侵襲的な頭部MRIによる評価法を中心に述べる。この評価法は神経変性疾患の診療に応用されている。

部位正常測定値 (mm)[1]
中脳視蓋2.6±0.6
中脳被蓋11.1±1.4
橋上部被蓋6.5±0.8
橋上部底部17.4±1.4
橋下部被蓋4.6±0.9
橋下部底部15.3±1.0
延髄11.3±1.4
第四脳室前後径11.7±1.7
第四脳室横径15.4±2.3

中脳脳幹の構造全面像

中脳前脳間脳終脳)の間に位置して長さはおよそ2.5cmである。両側の側頭葉海馬)の間に存在し、大脳外表からは見えない。矢状断では中脳中脳水道によって2つの部位に分かれて見える。中脳水道より背側の部分は上丘下丘からなる部位であるが、鍋の蓋のようにみえることから中脳蓋(tectum)と呼ばれる。中脳水道より腹側の部分は鍋の胴体で蓋をされる部分であることから中脳被蓋(tegamentum)と呼ぶ。

。この中脳被蓋には黒質や腹側被蓋野といったドパミンの経路に重要な領域が含まれている。進行性核上性麻痺では中脳被蓋が萎縮する結果ハミングバードサインが出現する。中脳蓋、中脳被蓋、大脳脚の三部位に分けて概説する。八木下らの方法では正中矢状断像で中脳水道の腹側と背側の前後径を上丘下丘の間の高さで計測して便宜上それを中脳被蓋と中脳視蓋の前後径とする。
中脳蓋

中脳蓋中脳水道の背側部分で左右一対の上丘下丘の四丘体からなる。上丘は下丘よりも扁平で松果体の下方に位置する。上丘は視蓋ともよばれ視覚反射に関与する。視索?外側膝状体?上丘腕を経て視覚線維の一部を受け、残りは皮質視覚野・脊髄視蓋路から受ける。上丘からは視蓋延髄路と視蓋脊髄路が下行し、視覚・聴覚刺激に対する頭部頸部の運動に関与する。上丘の前方が視蓋前野である。下丘は聴覚反射に関与し、外側毛帯?内側膝状体?下丘腕を経て、側頭葉聴覚野、脊髄視蓋路からの一部の線維が入る。
中脳被蓋

中脳被蓋は大脳脚と中脳蓋の間に位置して大脳脚とは黒質で境界される。赤核、動眼神経核、滑車神経核、視床下核、被蓋核、網様体核、三叉神経中脳路核・主知覚核を含む。赤核は小脳歯状核とともに鉄含有量がおおいためT2WIで低信号を示す。下方では橋網様体に連続する。毛帯線維、内側・背側縦束が被蓋を通過する。
大脳脚

大脳脚は橋上縁から上前外側に正中を挟んでV字状の丸みを帯びた柱状構造である。ほぼ全体が下行線維で構成されている。両側の大脳脚の間が脚間窩で脚間窩底部の後有孔質で多数の穿通動脈が貫通する。脚間窩からは動眼神経が前方へ向かう。大脳脚の前?外側を後大動脈と上小脳動脈が走行する。下丘の下縁から脳幹を出た滑車神経が大脳脚の外側下縁を前方に向かい走行する。

中脳延髄の間で小脳の前方に位置する。左右の三叉神経が脳幹からでる間の部分が橋でその外側が中小脳脚である。隆起した橋腹側部(橋底部)正中の溝(正中溝)を脳底動脈が上行する。背面は第四脳室底の上半部を形成する。橋は底部と橋被蓋部に内側毛帯によって境界される。MRIでは内側毛帯がT1WIで低信号、T2WIで高信号で示される。正常では橋底部:被蓋部は3.5:1である。橋底部(小脳求心系)に萎縮がある場合には正常のふくらみが消失する。橋底部の最大正常前後径は15?17mmで14mm以下の場合は橋底部萎縮を疑う。橋被蓋の正常前後径は約4.5mmであり4.0mm以下の場合は萎縮を考える。また八木下らの方法では正中矢状断像で橋を上下にほぼ3等分し、その境界線上で前後径を計測し、それぞれを橋上部と下部の前後径とした。これを内側毛帯の腹側と背側とに分け、それぞれを底部と被害の前後径とした。
橋腹側部(橋底部)

縦走線維と横走線維が灰白質の小塊である橋核と混在する。内部に橋核が介在する橋線維の間を錐体路が頭足方向に走行する。縦走線維は皮質脊髄路(錐体路)と皮質橋路からなり錐体路はいくつかの小束となって分散して走行する。皮質橋路の神経線維は橋核細胞とシナプス結合する。橋核細胞の軸索は正中を交叉して横走し、集合して中小脳脚を構成し大脳橋小脳結合が形成される。
橋背側部(橋被蓋)

外転神経核・顔面神経核・蝸牛神経核および台形体核と前庭神経核、三叉神経運動核・中脳路核・主知覚核のそれぞれ一部、台形体(一側蝸牛神経腹側核から台形体背側核に入る聴覚伝導路の一部)、中脳や延髄と連絡する網様体がある。橋被蓋は上方の中脳被蓋、下方の延髄被蓋に移行する。
延髄

延髄と脊髄との境界は錐体交叉の下端、橋との境界は橋延髄溝である。延髄には前面の前正中裂、舌下神経根が出る前外側溝、舌咽神経迷走神経副神経根の出る後外側溝があり前部、外側部、後部に分けられる。また正中縫線より左右に分けられる。前部は錐体で構成される。外側部は上方はオリーブ、下方は脊髄側索起始部からなる。後部は第四脳室底下半部と脊髄後索起始部から構成される。錐体背側には灰白質が波板状のU字形を示す下オリーブ核があり、内側の開口部から多数の神経線維がでて交叉部に対側の小脳脚に入る。正中縫線の両側に内側毛帯、視蓋脊髄路、内側縦束がある。第四脳室底下半部直下には両側に舌下神経核、迷走神経背側核、前庭神経核がある。深部には網様体、孤束と孤束核、疑核、三叉神経脊髄路と脊髄路核、脊髄視蓋路、前脊髄小脳路、後脊髄小脳路、外側脊髄視床路があり、延髄の後外側部には下小脳脚がある。八木下らの方法では正中矢状断で上下の中央の高さで前後径を計測している。
脊髄

脊髄の第三頸椎レベルでの頚髄前後径は正常で8.3±0.8mmとされている。
小脳

後頭蓋窩の後部を広く占める小脳は両側半球とそれを中央で結合する虫部からなる。三対の小脳脚によって脳幹と結合している。

小脳回、小脳裂は水平方向に走るため横断像では評価しにくい。虫部皮質の評価には正中矢状断像、半球皮質の評価には矢状断、冠状断が適している。小脳裂が2.5?3.5mm以上で萎縮有りと判断する。

中小脳脚(小脳求心系)の萎縮は横断像では中小脳脚の厚みの減少、小脳橋角槽の開大、第四脳室は側方拡大で示される。正常例では下部橋レベルでの第四脳室の最大左右径は20mmほどとされる。またT1WIの冠状断像で第四脳室底を含む脳幹背側縁に平行な断面にて正常の中小脳脚は上外方凸のなだらかな曲線を描くが萎縮がある場合はその膨らみは消失し、高度になるとダイヤ型、棘状を呈する。

小脳遠心系(歯状核?上小脳脚?赤核系)の萎縮に伴う変化としては第四脳室の拡大が報告されている。下部橋レベルでは歯状核の萎縮により前後に、上部橋レベルでは上小脳脚の萎縮により側方に拡大する。正中矢状断像では第四脳室の正常最大前後径13mmであり14mm以上で拡大とされている。冠状断像は第四脳室底から背側5mmの断面で正常な第四脳室が二等辺三角形にみえる。底部には小脳小節、小脳扁桃が上方に突出し、側壁は直線状に示すが、尾側には歯状核による内側への小突起を認める。歯状核、上小脳脚に萎縮があると側壁尾側の内側突起が不明瞭となり、側壁は外上方に膨隆して釣鐘状となる。八木下らの方法では第四脳室は正中矢状断像で最大前後径を計測し、これを前後径とした。水平断像で橋中央部レベルにおける最大横径を計測し、これを横径とした。
脳幹の脳梗塞
脳幹の血管支配

ヒトの場合で説明する。脳幹、および小脳は椎骨動脈系で栄養される。椎骨動脈は前脊髄動脈と後下小脳動脈 (PICA) を分枝した後、左右が合流して脳底動脈となる。脳底動脈は基本的に橋腹側部の脳底溝に沿って上行し、中脳の脚間窩で左右の後大脳脳脈 (PCA) に分枝する。脳底動脈からの主要分枝は前下小脳動脈 (AICA) と上小脳動脈 (SCA) であるが、他に橋動脈という穿通枝も分枝している。


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