脚気
脚気患者
概要
診療科内分泌学
分類および外部参照情報
ICD-10E51.1
脚気(かっけ、英語: beriberi)とは、ビタミン欠乏症の1つであり、重度で慢性的なビタミンB1(チアミン)の欠乏により、心不全と末梢神経障害をきたす疾患である[1]。軽度の場合は、チアミン欠乏症と呼ばれる[1]。 心不全によって脚の浮腫が起き、神経障害によって脚のしびれが起きるため、脚気と呼ばれる。心臓機能の低下・不全(衝心、しょうしん[2])を併発した場合は、脚気衝心と呼ばれる。最悪の場合には死亡に至る。 診断は、症状、尿中のチアミンの排泄量低下、高血中乳酸、および指導治療による改善に基づく[3]。 脚気のリスク因子には、白米中心の食生活、アルコール依存症、人工透析、慢性的な下痢、利尿剤の多量投与などが挙げられる[1][4]。ただし、稀に遺伝的要因として、食物中チアミンの吸収困難が問題になり得る[1]。 なお、乾性脚気により、ウェルニッケ脳症、コルサコフ症候群が引き起こされ得る[4]。 本症は多発神経炎、浮腫(むくみ)、心不全(脚気心、脚気衝心)の3つを典型的な特徴とする[5]。 多発神経炎を主体とし、表在知覚神経障害からしびれ、腱反射低下などを来たす。またウェルニッケ脳症、コルサコフ症候群も、乾性脚気に分類される[6]。 末梢の動脈は拡張し、血管抵抗の低下から高拍出性心不全を呈して浮腫が起こる[7][信頼性要検証][5]。 膝蓋腱 なお、膝蓋腱反射を確認する検査は、日本で脚気の多発していた1960年代頃までは、日本における健康診断の必須項目であった。 世界的な視野で観るならば、脚気は21世紀においても、監獄において頻発する疾患である。 例えば、1999年には、中華民国の拘置所において脚気が流行した[8]。2007年には、過密収容であったハイチ刑務所で脚気患者が多数発生し、その発病率および死亡率の高さは、調理前に米を洗うという伝統的な慣習が原因であった[9]。2011年の報告によれば、コートジボワールにおいては、重度級の囚人達は、その64%が脚気だった[10]。 日本でいつから脚気が起こるようになったか定かではないが、すでに『日本書紀』に脚気の症状の記述が見られる。平安時代には、天皇や公卿を中心に白米食が広がり、脚気が発生した。江戸時代の元禄年間には、江戸において一般の武士や町人にも白米食が普及して脚気が流行し、享保年間には大阪、京都にも広がり、天保以後は地方都市でも流行した。 明治に入ってからも、脚気の流行は続いた。例えば、1870年から翌年にかけて脚気が多発しだした。陸海軍での脚気発症率は特に高かった。海軍は兵食改革を実施して脚気を撲滅した。陸軍でも白米食の代わりに麦飯とすることで脚気対策をしたが、戦時兵食を白米食にしたため、戦時には脚気惨害を招いた。 1923年には脚気死亡者数のピークに達し約2万7千人となった。1925年に脚気の原因がビタミンB不足と確定したものの、脚気は無くならなかった。1937年に勃発した日中戦争の前まで、脚気死亡者数は年間1万人から2万人で推移した。しかし、日中戦争が始まると食糧用の米が不足したために、脚気死亡者数は6千人台まで減った。 第2次世界大戦後は、栄養改善政策による栄養状態の改善や保健薬としてのビタミン剤の普及などにより、脚気死亡者数は減少していった。1956年には1000人を下回り957人、1965年に100人を下回り92人、1970年には20人と特殊希少疾患以下となり、脚気は消滅状態となった。
概要
症状
乾性脚気
湿性脚気
検査
疫学
日本における歴史詳細は「日本の脚気史」を参照
脚注
注釈[脚注の使い方]
出典^ a b c d “Beriberi
^ “衝心 (精選版
^ Swaiman, Kenneth F.; Ashwal, Stephen; Ferriero, Donna M.; Schor, Nina F.; Finkel, Richard S.; Gropman, Andrea L.; Pearl, Phillip L.; Shevell, Michael (2017) (英語). Swaiman's Pediatric Neurology E-Book: Principles and Practice
^ a b “Nutrition and Growth Guidelines 。Domestic Guidelines - Immigrant and Refugee Health” (英語). CDC (2012年3月). 2017年11月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年11月11日閲覧。
^ a b Johnson 2014.
^ Johnson, Larry E. (2014年). “チアミン(ビタミンB1、サイアミン)〈09-栄養障害/ビタミン欠乏症,依存症,および中毒〉”. MSDマニュアルプロフェッショナル版. 2019年4月28日閲覧。
^ ⇒その他(Miscellaneous)シリーズ3 【症例 ME 15】 徳洲会グループ