脂肪族アルコール
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脂肪族アルコール

脂肪族アルコール(しぼうぞくアルコール、: Fatty alcohol)とは、脂肪族アルコールで、通常8個から22個の炭素鎖から構成されているものを指すが、36個以上の炭素が繋がることもできる。脂肪族アルコールの炭素原子数は通常偶数であり、末端炭素に1つのヒドロキシ基を持つ。非飽和のものや分岐のあるものもある。化学産業に広く用いられている。目次

1 生産と生成

1.1 天然物から

1.2 石油から


2 応用

2.1 栄養


3 安全性

3.1 ヒトの健康

3.2 環境

3.3 水生生物


4 種類

5 出典

6 外部リンク

生産と生成

天然に生成するほとんどの脂肪族アルコールは、脂肪酸と脂肪族アルコールのエステルであるの形で見られる[1]細菌植物動物が、浮力を得るためや水やエネルギーの代謝源、反響定位のレンズ(海洋ほ乳類)、熱絶縁(植物や昆虫)等を目的として生産する[2]。1900年代初頭になって初めて、脂肪族アルコールが利用されるようになり、当初はブーボー・ブラン還元反応を用いてナトリウムで蝋エステルを還元して製造されていた。1930年代に触媒水素化が実用化され、ヘット等の脂肪酸エステルをアルコールに変換できるようになった。1940年代から1950年代には、石油が化学製品の重要な原料となり、またカール・ツィーグラーエチレン重合を発見した。この2つの発見が脂肪族アルコール合成の道を拓いた。
天然物から

伝統的で現在も重要な脂肪族アルコールの原料は、脂肪酸エステルである。蝋エステルはかつてマッコウクジラ油から抽出されていた。その代替となる植物由来の原料はホホバであった。トリグリセリドとして知られる脂肪酸トリエステルは、植物や動物から得られていた。それらのトリエステルはエステル交換反応によってメチルエステルとされ、水素化されてアルコールに変換される。ヘットは通常C16からC18であったが、植物由来の鎖長はより変化に富んでおり、長いC20からC22はセイヨウアブラナから、短いC12からC14はココナッツオイルから得られる。
石油から

脂肪族アルコールは、石油原料からも作られる。ツィーグラー過程により、エチレンをトリエチルアルミニウムを用いてオリゴマー化し、その後空気酸化することにより、偶数番号のアルコールが生産される。 Al ( C 2 H 5 ) 3   + 18 C 2 H 4 ⟶ Al ( C 14 H 29 ) 3 {\displaystyle {\ce {Al(C2H5)3\ + 18 C2H4 -> Al(C14H29)3}}} Al ( C 14 H 29 ) 3   + 3 2 O 2   + 3 2 H 2 O ⟶ 3 HOC 14 H 29   + 1 2 Al 2 O 3 {\displaystyle {\ce {Al(C14H29)3\ + {\frac {3}{2}}O2\ + {\frac {3}{2}}H2O -> 3 HOC14H29\ + {\frac {1}{2}}Al2O3}}}

もう1つの方法として、エチレンをオリゴマー化してアルケンの混合物を生じ、それをヒドロホルミル化することにより、奇数番号のアルデヒドを生産し、それを水素化してアルコールが生産される。例えば、1-デセンのヒドロホルミル化でC11アルコールが生産される。 C 8 H 17 CH = CH 2   + H 2   + CO ⟶ C 8 H 17 CH 2 CH 2 CHO {\displaystyle {\ce {C8H17CH = CH2\ + H2\ + CO -> C8H17CH2CH2CHO}}} C 8 H 17 CH 2 CH 2 CHO   + H 2 ⟶ C 8 H 17 CH 2 CH 2 CH 2 OH {\displaystyle {\ce {C8H17CH2CH2CHO\ + H2 -> C8H17CH2CH2CH2OH}}}

シェル高級オレフィンプロセスにより、アルケンオリゴマーの混合物の鎖長の分布は、市場の要求に合うように調整することができる。ロイヤル・ダッチ・シェルは、中間体のメタセシス反応を用いてこれを行った[3]。得られた混合物は分画され、続く過程でヒドロホルミル化や水素化される。
応用

脂肪族アルコールは主に洗剤界面活性剤の製造に用いられる。また化粧品、食品、溶媒の原料にもなる。両親媒性の性質により、脂肪族アルコールは非イオン性界面活性剤としても働く。化粧品や食品産業における乳化剤保湿剤増粘安定剤としても用いられている。
栄養

植物の蝋や蜜蝋から得られる非常に長い鎖の脂肪族アルコールは、ヒトの血漿コレステロール値を下げるという報告がある。未精製の穀物、蜜蝋、多くの植物由来の食物等に含まれ、1日当たり5から20mgのC24-C34アルコール混合物の摂取で、低密度リポタンパク質コレステロールが21から29%低下し、高密度リポタンパク質コレステロールが8から15%増加したという報告もある。蝋エステルは、胆汁の塩依存性カルボキシルエステラーゼ加水分解され、消化器で吸収される長鎖のアルコールと脂肪酸を生成する。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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