「胃炎」とは異なります。
胃腸炎
胃腸炎ウイルス: A = ロタウイルス, B = アデノウイルス, C = ノロウイルス D = アストロウイルス サイズ比較のため、各ウイルスは同じ拡大率で示してある。
概要
診療科消化器学
分類および外部参照情報
ICD-10A02.0
胃腸炎(いちょうえん、英語: gastroenteritis)とは、感染性下痢(infectious diarrhea)、ガストロとも知られ、消化管 胃 ("gastro"-)および小腸 ("entero"-)の炎症を特徴とする疾患であり、発熱、下痢、嘔吐、腹痛および腹部痙攣などの症状を呈する[1]。食物によって生じるものは食中毒とも称される。山陰地方では、感染性胃腸炎の事を腸感冒とも呼ぶ[2]。
世界的にみて小児の発症例のほとんどがロタウイルスによるものである[3]。成人ではノロウイルス[4]およびカンピロバクター[5]に起因するものが最も多い。次いでその他の細菌 (またはその毒素)や寄生虫を原因とするものがよくみられる。調理が不適切な食品や汚染された水を摂取したり、感染者との密接な接触などによって感染する。
治療の基本は十分な水分補給である。軽度または中等度の症例では経口補水液の補給が効果的である。重症例になると静脈内輸液が必要となる場合がある。 胃腸炎では通常下痢と嘔吐の双方がみられることが多く[6]、また頻度は下がるものの、そのいずれかのみがみられることもある[1]。腹部痙攣を生じる場合もある[1]。症状および徴候は通常、感染から12?72時間で発現しはじめる[7]。 ウイルス性胃腸炎の場合、症状は通常1週間以内に軽快し[6]、発熱、倦怠感、頭痛、筋肉痛を伴うことがある[6]。血便がみられる場合、ウイルス性である可能性は低く[6]、細菌感染が疑われる[8]。一部の細菌感染では重度の腹痛を伴い、数週間続くことがある[8]。 ロタウイルスに感染した小児は通常3?8日以内に全快する[9]。ただし貧困国では重度の感染に対する治療が行き届かないことが多く、下痢が長引くことが多い[10]。下痢の合併症として脱水が頻繁にみられる。[11]脱水の程度が顕著な小児例では毛細血管再充満時間が長く、皮膚の張りの低下、呼吸異常などがみられる[12]。衛生状態が悪く栄養失調のみられる地域では感染を繰り返すことも多く[7]発育不全や長期的な認知機能の発達遅延をもたらす場合がある[13]。 カンピロバクター属細菌感染者の1%が反応性関節炎を、0.1%がギラン・バレー症候群を発症する[8]。志賀毒素(ベロ毒素)を産生する腸管出血性大腸菌や赤痢菌に感染すると、血小板減少や腎不全、溶血性貧血の結果、溶血性尿毒症症候群 (HUS)を発症することがある。[14]小児の方が成人よりもHUSを発症しやすい[13]。ウイルス感染では良性小児てんかん ウイルスおよび大腸菌や カンピロバクター属菌などの細菌が胃腸炎の主な原因である[15][7]。感染リスクは小児の方が高くなっており、これは免疫が不十分であったり不衛生になりやすいためである[1]。 急性胃腸炎の原因として知られるウイルスにはロタウイルス、ノロウイルス、アストロウイルス 小児の胃腸炎ではロタウイルスがもっとも多く[15]、先進国でも発展途上国でも発症率は同程度である[9]。小児の感染性下痢の70%がウイルスによるものである。[19]成人は獲得免疫を有するため、ロタウイルス感染はあまりみられない[20]。 アメリカではノロウイルスが成人の胃腸炎の主要な原因となっており、集団発生の90%以上がこのウイルスによるものである[6]。このような限局性の流行は、クルーズ客船 [6]や病院、レストランなど、人々が密接した空間で過ごしている時に発生しやすい[1]。下痢が治まった後も保菌者の感染性は持続しており[6]1ヶ月程度ウイルスを排出し続ける[21][6]。小児の感染例の約10%はノロウイルスによるものである[1]。 先進国ではカンピロバクター・ジェジュニが細菌性胃腸炎の主な原因となっており、その半数は家禽との接触によるものである[8]。小児では細菌が感染例の15%の原因となっており、最もよくみられるものに大腸菌、サルモネラ菌、赤痢菌、カンピロバクター属などがある[19]。
症状および徴候
原因
ウイルス性
細菌性Salmonella enterica 血清型Typhimurium (ATCC 14028) グラム染色後100倍で観察