肥満
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肥満症

腹囲の比較(通常:左、過体重:中央、肥満:右)
概要
診療科内分泌学
分類および外部参照情報
ICD-10E66
ICD-9-CM278
OMIM601665
DiseasesDB9099
MedlinePlus007297
eMedicinemed/1653
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肥満(ひまん、Obesity, Corpulence)とは、一般的に、正常な状態に比べて体重が多い状況、あるいは体脂肪が過剰に蓄積した状況。体重や体脂肪の増加に伴った症状の有無は問わない。体内に脂肪が過剰に蓄積しており[1]。「健康が脅かされるほどに太っている」状態を指す[2]。肥満はあらゆる病気の原因でもある。厚生労働省は肥満を「生活習慣病」の1つに含めている[3]

ペットの肥満(英語版)も参照。
分類

人間の肥満体型は下記の2種類に分けられる

リンゴ型:アンドロイド型脂肪分布
(英語版)、男性に多いビール腹・太鼓腹などと言われる腹部肥満(英語版)が目立つ体型。別名、内臓脂肪型肥満

洋ナシ型:ガイノイド型脂肪分布(英語版)、女性に多い腰や臀部回りに脂肪がつく体型。別名、皮下脂肪型肥満

肥満の診断

標準体重よりも20%以上体重が超過した辺りからを「肥満」と呼んでいる。
体重による肥満の診断BMI と肥満度の関係を示したグラフ

体重に基づく肥満診断として、BMI が頻繁に用いられている。BMIの数値が一定以上だと「肥満」と判定される。

その基準は様々な組織や団体が設けているが、主な基準は以下の通りである。

世界保健機関 (WHO) の基準[4][5]状態BMIの指標
痩せすぎ(重度の痩せ)16.00未満低体重(18.50未満)
痩せ(中度の痩せ)16.00以上、17.00未満
痩せぎみ(軽度の痩せ)17.00以上、18.50未満
普通体重18.50以上、25.00未満標準
過体重(前肥満)25.00以上、30.00未満太り気味(25.00以上)
肥満(1度)30.00以上、35.00未満肥満(30.00以上)
肥満(2度)35.00以上、40.00未満
肥満(3度)40.00以上

日本肥満学会の基準状態BMIの指標
低体重(痩せ)18.50未満低体重
普通体重18.50以上、25.00未満標準
肥満(1度)25.00以上、30.00未満肥満
肥満(2度)30.00以上、35.00未満
肥満(3度)35.00以上、40.00未満高度肥満
肥満(4度)40.00以上

乳幼児では BMIはカウプ指数と呼ばれ、18.0 以上が肥満傾向とされる。学童では、ローレル指数 (= 10 × kg/m3) が 160以上で「肥満」と見なされる。これらは身長と体重から単純に計算された値であり(成人の正常体重では BMIは「22」とされている)、大体の目安にはなるが、これだけでは筋肉質なのか脂肪過多なのかが分からない。BMIは標準体型の人には当てはまるが、骨太の人、足長な人、骨細の人、筋肉の量が多い人には間違った判定が出る欠点がある。このため、肥満と診断する際は下のような定義と併用することがある。
体脂肪率による肥満の診断

適正な体脂肪率は、男性では15%から19%、女性では20%から25%とされ、これを上回ると「肥満」と見なされる。正確な測定には困難を伴うため、その値の扱いを巡っての一定の見解は得られてはいない。筋肉質なのか脂肪過多なのかどうかを判断するには精密な機械を用いる必要があり、その際にはCTMRIで体脂肪面積を測定し、体脂肪率を推定するのが最も正確と言われる。
診断

通常は医師が腹囲を見て診断するが、その診断基準は統一されてはいない。2007年6月、アメリカ糖尿病協会・アメリカ栄養学会・北米肥満学会は共同声明を発表し、「現時点では、腹囲の基準値はすべて、科学的根拠が不十分であり、今後確立される科学的基準値は人種別、性別、年齢別、肥満度別の非常に複雑なものになるであろう」と指摘した。
交感神経活動の亢進

過剰に分泌されたレプチン交感神経の活動を亢進させ、血管が収縮し、血圧が上昇する[6]

レニン-アンジオテンシン系の活性化

アンジオテンシノーゲンは肝臓で産生されるが、肥大化脂肪細胞からも産生、分泌される。アンジオテンシノーゲンから生成されたアンジオテンシンUは、副腎皮質球状帯に作用してナトリウムの再吸収を促進するアルドステロンの分泌を促進し体内に水分を貯留する[7]。また、脳下垂体に作用し利尿を抑えるホルモンである抗利尿ホルモンであるバソプレッシン(ADH)の分泌を促進し同じく体内に水分を貯留する[8]。これらのことにより高血圧を招く。肥満患者において高血圧症が多いのはこのためである[9]

また、肥満細胞の肥大化によるインスリン抵抗性の発現は高インスリン血症(Hyperinsulinemia)の原因となる。これは尿細管に直接作用してナトリウムの貯留につながり、水分の貯留により血圧が上昇する[10][11]
肥満と疾患
単純性肥満肥満体のトースカーナの将軍
アレッサンドロ・デルボロ作(17世紀)肥満の女(病草紙から)

親のいずれか、もしくは両親とも肥満であることが多く、身長が暦年齢相当で、精神運動発達は正常、奇形は見られない。食生活が最も影響する。
肥満、疾患、合併症

シンシナティ小児病院医療センター(Cincinnati Children's Hospital Medical Center)で行われた研究では、「肥満の女の子は思春期初来が早く、胸が大きくなり始める(乳房の発達が始まる)のが早い」という。これは男の子でも同様であり、「肥満の男児は第二次性徴が早く発現する」[12]。脂肪沈着は、皮下脂肪から内臓脂肪へ、さらには脂肪以外の臓器(異所性脂肪)へと進行し、それに伴って以下の合併症の頻度が大きくなる。

肝臓癌・・・多くの癌で死亡リスクが増大するが、相対危険度が最も高いのは肝臓癌であった[13]。膵癌、胃癌がこれに次ぐ[13]

変形性関節症・・・体重が1kg増加するごとに、膝関節への負荷は3kgほど増加するとされる[14]。肥満は変形性膝関節症変形性股関節症といった関節症のリスクも助長する。体重が5kg増えるごとに、変形性膝関節症のリスクは36%上昇するという[15]

下肢静脈瘤[16]

生活習慣とがんの関連[17][18](抄)
(WHO/国際がん研究機関(IARC))関連の強さリスクを下げるもの(部位)リスクを上げるもの(部位)
確実身体活動(結腸)過体重と肥満(食道<腺がん>、結腸、直腸、乳房<閉経後>、子宮体部、腎臓)、(略)
可能性大身体活動(乳房)、(略)(略)

症候性肥満・二次性肥満

肥満による代謝異常や内分泌疾患を「症候性肥満」「二次性肥満」と呼ぶ[19]

ナルコレプシーによる代謝異常[20][21]

視床下部性肥満 : プラダー・ウィリー症候群 - フレーリッヒ症候群 - ローレンス・ムーン・ビードル症候群

クッシング症候群・・・副腎皮質ステロイドの過剰による症状の一環として肥満になる

甲状腺機能低下症・・・甲状腺機能の低下によって脂肪分解が阻害される


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