聴覚障害者
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この項目では、聴覚障害者と諸制度について説明しています。聴覚障害の原因となる疾患については「難聴」をご覧ください。
.mw-parser-output .pathnavbox{clear:both;border:1px outset #eef;padding:0.3em 0.6em;margin:0 0 0.5em 0;background-color:#eef;font-size:90%}.mw-parser-output .pathnavbox ul{list-style:none none;margin-top:0;margin-bottom:0}.mw-parser-output .pathnavbox>ul{margin:0}.mw-parser-output .pathnavbox ul li{margin:0}障害 > 身体障害 > 聴覚障害者聴覚障害者の国際シンボルマーク。(なお、現在は2003年に行われた世界ろう連盟会議をもって使用を取りやめになっている。)
日本においては別に「耳マーク」と呼ばれるマークが存在する[1]

聴覚障害者(ちょうかくしょうがいしゃ)とは、聴覚障害がある(耳が不自由な)人のことである。
概要

聴覚障害者身体障害者のうち、聴覚器に感覚鈍磨を生じる聴覚障害(聴力障害)を持つ者であり、感覚器障害者の一種である。聴覚障害者にはろう者(聾者)のほか、軽度難聴から高度難聴などの難聴者、成長してから聴覚を失った中途失聴者、加齢により聴力が衰える老人性難聴者が含まれる。健常者及び聴覚障害を持たない障害者のことを総じて聴者または健聴者と呼ぶ。

聴覚障害者のうち、ろう者の定義は多義的である。一般には音声言語の基本的習得前に重度の聴覚障害をもち、補聴器の装用を行っても音がほとんど聞こえないか識別困難で、主に手話を使って生活する聴覚障害者をいう[2]。ろう者は健聴者や難聴者と異なる独特のろう文化を形成していることがある。漢字の「聾」を分解すると、上記のように「」「耳」になることから、日本ではタツノオトシゴが聴覚障害者の象徴として使われており、全日本ろうあ連盟をはじめ、一部の聴覚障害者団体のシンボルマークに用いられている[3][4][5]

聴覚障害者は情報障害者あるいはコミュニケーション障害者の一種であるとも言える[6]。これは聴覚・音声による情報取得や情報伝達というコミュニケーションに困難を生じる障害と言えるからである。聴覚障害者は一般的に外見から障害者と判断されにくく、第三者から障害の有無や程度を判別することが難しい「見えない障害」の一種である。

障害の程度により身体障害者手帳が取得できない軽度聴覚障害者であっても、生活に困難を感じる程度が比例するとは限らない。重度聴覚障害者とは異なった点で不自由を感じていても、手帳という客観的な書類がないために合理的配慮を申し出ることができないケースもある。このようないわゆる福祉制度の谷間と言われる状態にある聴覚障害者は日本国内でおよそ600万人ほどいると推定されている[7]
原因

聴覚障害の原因には先天性風疹症候群遺伝による先天性[8]と、様々な原因による後天性がある。後者には、病気(流行性耳下腺炎外耳炎中耳炎内耳炎メニエール病など様々)、薬の副作用ストレプトマイシンが代表的)、点滴の副作用、長期間にわたる重度騒音や頭部への衝撃、精神性ストレスによる突発性難聴加齢などがある。機能性難聴(心因性難聴)は聴覚障害に含まれず、精神障害に区分される。一般的に、聴覚障害者は聴覚以外に身体的欠陥はないが、重複障害を持つものもある。例えば、重度難聴者(ろう者)の場合は音声機能障害を併発することがある。また、聴覚障害の原因が内耳疾患の場合は平衡機能障害を併発することがある。
分類

聴覚障害のタイプには、伝音性と感音性と混合性がある。伝音性は内耳までの間の音を伝える経路に原因がある場合で、感音性は内耳から奥の聴覚神経や脳へ至る神経回路に問題がある場合である。混合性は伝音性と感音性の2つが合わさったものである。

さらに、両方の耳に同時に症状が現れる両側性難聴とどちらか一方の耳にのみ症状が現れる一側性難聴に分けられる。なお一側性難聴かつ逆側の耳が健聴の場合もしくは逆側の耳が軽度難聴の場合(この場合は両側性に分類される)、日本の現行制度では難聴は存在するが身体障害者手帳は交付されず、障害者とはみなされない。

言葉の意味として、聴覚はセンサー機能について述べ、聴力は聞く能力について述べているといえる。つまり、ある特定の聴覚神経が欠けていると、その波長の音は聞こえない。一方、聴力は聞き取る能力が低下したりする場合にいう。大きな騒音環境にいて、一時的に聞こえの能力が低下した場合は聴力低下という。
治療、対処

医師の診断に基づき、主に言語聴覚士によって各種の検査、評価、訓練、指導がなされる。
発話訓練
生まれつき、または3?5歳までの言語機能形成期に聴覚を失ったり、聴力に低下を来した場合、発話障害を伴う場合がある。しかし、最近の聾学校では性能が発達した補聴器の装用で発話訓練を十分に行うようになっている。このため、昔は聾唖(ろうあ)・?唖(いんあ)と呼ばれたが、最近では発話面の障害がないことが多いため聾者(ろうしゃ)と呼ばれることが多い。ちなみに、「聾」・「?」は聞こえないこと、「唖」は話せないことを指す。
補聴器
加齢などで聞こえの程度に不自由を生じた場合、補聴器を装用することが多い。集音器や拡声器と異なり、補聴器では特定周波数の音圧を上げることができる。ただし、特定周波数をとらえる聴覚神経が欠損している場合もあり、補聴器を装用したからといって、必ずしも健康な状態と同等の聞こえになるとは限らない。患側耳のマイクに入った音を健側耳のスピーカーに流すクロス型補聴器も登場している。
人工内耳
聴神経に音が伝わらない場合、内耳の中に電極を挿入して、補聴システムでとらえた音声信号を電気信号に変えて、その電極から聴覚神経へ直接伝える人工内耳が普及してきた。電極の数に制限があり、一方残存聴覚神経にも個体差があるため、電子回路で患者一人一人に合わせた信号補正を行っている。人工内耳の手術後も言語聞き取りのために訓練期間が必要になってくる。同様な人工聴覚器として人工中耳や聴性脳幹インプラント、埋込型骨導補聴器が登場している[9]
文法訓練
聴覚障害教育で「9歳の壁」「9歳の峠」と言う言葉が使われているが、これは重度聴覚障害者のコミュニケーション能力が小学3?4年生で停滞してしまう現象を指す[10]。同学年から抽象的思考や文章の複雑化が始まるため、音声言語非習得者が躓きやすい。聴覚障害教育では早期に文法訓練などを実施して克服を図っている。
新生児聴覚スクリーニング(新生児聴覚検査)
出生後早期に産科小児科において他覚的聴力検査を実施することで先天性難聴の早期発見を目的としている。スクリーニングで要再検査と判定された新生児に対しては耳鼻咽喉科に引き継ぎ精密検査を実施する。
義耳
耳介の機能が何らかの理由で失われた場合に装用する人工耳介(顔面エピテーゼの一種)を義耳という。形成外科の領域であるが、耳介がないことによる伝音性難聴の治療に使われる。
聴覚障害の程度
程度による区分
純音聴力レベルによる区分

聴覚障害の程度は、医学的にはデシベル(dB)で区分する。デシベルとは音圧レベルの単位であり、音の大きさが大きいほど高い値を示す。これにより健康な場合に対しどれだけ聞こえが悪くなったか(大きな音でないと聞こえないか)が示される。

聴覚障害のdB区分dB聴覚障害聞こえの程度
0聴者 
10ささやき声
20
30軽度難聴 
40普通の会話
50中度難聴
60 
70高度難聴大声
80
90怒鳴り声
100ろう
重度難聴ガード下での鉄道走行音
110地下鉄走行音
120 
130飛行機のエンジン音

日本では両耳で70dB以上もしくは患側耳90dB以上かつ健側耳50dB以上になると、身体障害者手帳を交付される。40dB前後を超えると「話すのにやや不便を感じる」レベルになる。聴覚障害による身体障害者手帳の取得者は推計29,7万人である[11]。身体障害者手帳が交付されない40?70dBの人達も含めると、聴覚障害者は日本全国で約600万人いると言われる[7]。そのうち、約75%は加齢に伴う老人性難聴である。

世界保健機関(WHO)では25dB超で軽度難聴とし、成人40dB超・児童30dB超は中度難聴として補聴器の装用を推奨している[12][13][14]。また、デフリンピックの参加資格である聾者は55dB以上である[15]。日本においても国際基準同等の障害判定基準に緩和するデシベルダウン運動が全日本難聴者・中途失聴者団体連合会の提唱で行われている[16][註 1]
語音弁別能による区分

聴覚障害の程度は語音明瞭度で区分することもできる。日本では単音明瞭度の検査(語音弁別検査)で正答率が50%以下になると、身体障害者手帳を交付される。


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