聖書ヘブライ語
古代ヘブライ語
アレッポ写本(10世紀)のヨシュア記冒頭
話される国古代イスラエル。典礼言語としては世界各地
話者数?
言語系統アフロ・アジア語族
セム語派
中央セム語
北西セム語
カナン諸語
聖書ヘブライ語
表記体系ヘブライ文字、古ヘブライ文字
言語コード
ISO 639-3hbo
聖書ヘブライ語(せいしょヘブライご)は、ヘブライ語聖書の本文に使われている言語であり、紀元前200年以前のヘブライ語をいう。古代ヘブライ語とも呼ばれる。 聖書ヘブライ語は鉄器時代に使用されたセム語派北西セム諸語の一種であり、フェニキア語などとともにカナン諸語を構成する。 語彙の上からは他のカナン諸語と共通する点が多いが、フェニキア語のような北部の言語とは異なる点も多い。たとえば存在を表す動詞はヘブライ語で√hyy(???
概要
ヘブライ語聖書は紀元前1千年紀に書かれたが、現存する写本で時代のわかる最古のものは9世紀のものである。ただし紀元前1世紀ごろのものと考えられる死海文書中には聖書の断片が含まれるほか、聖書以外の多数のヘブライ語の文書が含まれる[3]。
碑文は紀元前10世紀より古いものはなく、また充分な資料が現れるのは紀元前8世紀にはいってからである[4](シロアム碑文がよく知られる)。碑文からは南北で異なる方言が使われたことがわかるが[5]、とくに南部のユダ王国の碑文は基本的に聖書のヘブライ語と同一の言語で書かれているといって差し支えない[4]。ヘブライ語に方言差があったことに関しては有名なシボレトの故事がある。
文字としては最初フェニキア文字から派生した古ヘブライ文字を使用したが、バビロン捕囚以降は主にアラム文字を使用するようになった。ユダヤ人の使ったアラム文字の変種がヘブライ文字である。ただしアラム文字自体フェニキア文字に由来し、文字体系そのものは同じだったため、アラム文字への移行は単純なものだった[6]。
古代のイスラエルは複雑な国際関係の中に置かれ、ヘブライ語には多数の借用語という形でそれが現れている。とくにアラム語の影響は早くから見られ、時代とともに影響が増大していった。ほかにエジプト語、アッカド語(新バビロニア語)、古代ペルシア語、ギリシア語、ラテン語からの借用語が見られる[2]。 モーセ五書中の詩文である「ヤコブの祝福」(創世記49)、「井戸の歌」(民数記21:17-18)、「紅海の歌」(出エジプト記15)、「モーセの祝福」(申命記33)などの言語を指す[7]。ダビデによるイスラエル統一王国の成立(紀元前1000年ごろ)以前の言語と考えられており、散文部分の言語との違いが大きい。 なお、「デボラの歌」(士師記5)が聖書最古の部分とされることがあるが、言語はむしろ後期聖書ヘブライ語と共通する[8]。 紀元前1000-500年ごろの言語。聖書の主要な部分はこの言語で書かれており、狭義の「聖書ヘブライ語」はこの言語を指す。古典ヘブライ語とも呼ばれる。 紀元前500-200年ごろの言語。後期古典ヘブライ語とも呼ぶ。エズラ記、ネヘミヤ記、歴代志、ダニエル書、エステル記、コヘレトの言葉、ハガイ書、ゼカリヤ書、マラキ書、ヨナ書などがこの言語で書かれる。雅歌、ヨブ記、および詩篇の一部分もこの時期のものではないかと推論されている[7]。 サマリア五書の言語もこの時代のヘブライ語の資料である[4]。 紀元前1千年紀のヘブライ語の発音については不明な点が多い。6世紀以降にマソラ学者によって正確な発音を表記する工夫がなされ、そのひとつであるティベリア式発音の記号が聖書にはつけられている。 各地の離散ユダヤ人はそれぞれ独自の伝統に従って聖書を読んだ。イスラエルでは現代ヘブライ語の発音で聖書を朗読している[9]。 セム祖語には29種類の子音が立てられるが、そのうち歯摩擦音の系列(? ? /θ d/)はヘブライ語ではそれぞれ/? z/に融合した。また強勢音の /θ? ??/ は ? /s?/ に融合した[10][11]。 ヘブライ文字で1つの子音字がセム祖語の複数の音に対応するものには、ほかに?(? ? /? x/)、?(? ? /? ?/)、?(? ? /? ?/)があるが、これらの音は同じ字で書かれていてもヘレニズム時代にはまだ区別されていた可能性がある[12]。ティベリア式発音ではこのうち ? ? の区別のみが残ったが、おそらく後者の ? はすでに s に融合していた[13][14]。 ヘブライ語で強勢音がどのように発音されたかは不明である。本来は放出音だったかもしれないが、後にアラビア語圏では咽頭化し、ヨーロッパでは単純な子音になった[15]。 ほかにセム祖語に由来しない子音として、ギリシア語やイラン語派の無気音のpを表すための強勢音の?があったと考える学者もある[13]。 6つの破裂音/p b t d k ?/は、母音の後の重子音以外の位置で摩擦音/f v θ d x ?/に変化した(翻字するときには横線を加えてp? ? ? ? ? ?と記される)。本来これらは音韻論的には条件異音であって音素としては同一だった[16]。しかし後に条件を成りたたせる母音が消失することによって音韻論的に異なる子音になった[17]。 「喉音」と呼ばれる4子音/?, h, ?, ?/は時代とともに弱化し、また周辺の母音の音色に影響を与えた[16]。これらによって以下のような不規則な現象が引きおこされた。
時代区分
古代詩文ヘブライ語
標準聖書ヘブライ語
後期聖書ヘブライ語
発音
子音
喉音および/r/は重子音化しないため、重子音は単純子音化した。そのかわりに先行する母音を長母音化(代償延長)することがあった。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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