翻案小説(ほんあんしょうせつ)は先行作品の大体の筋・内容を元に別の作品に書き改めたり、一部を変更した文学作品である。 外国作品から風俗・地名・人名などを自国に合わせて改作した小説も含まれる。古典の日本文学には中国文学の翻案作品や再翻案作品が多い。19世紀からの西洋の文物が東洋に流入した際に、各国で欧米作品を自国の内容に置き換えた翻案作品が作られた。 翻訳・剽窃と混同されやすいが、作者の創造性によっては異なる。ただし、昔は現代の著作権及び著作隣接権の基準に当てはめれば複製・剽窃に該当する作品も多数制作されている。日本は明治32年(1899年)にベルヌ条約に加盟しているが、それ以降も翻案権を取得していない作品も多い。 日本では、江戸時代に中国の小説(文言・白話を問わず)を材料にした翻案作品が多く作られた。上田秋成の『雨月物語』にも、翻案の作品がある。三遊亭圓朝のレパートリーとして知られる『牡丹灯籠』が明代の『剪灯新話』からの翻案であるのも、その一例である。 明治以降、西洋の作品を日本風に改作する傾向にあった。黒岩涙香の『鉄仮面』『巌窟王』なども、その一例である。また、尾崎紅葉の『金色夜叉』にも、翻案のおもかげがあると指摘されている。初期の、特に涙香作品では人名のみを日本化し設定は現地のままとなっており(イギリス人刑事の名前が森だったり検事が丸部だったりする)、現在ではこの手法は全く受け継がれていないため異様な印象を与えるが、当時はこれが読みやすいとして歓迎された。これに対して、江戸川乱歩の翻案小説(一部は涙香作品を再翻案)は日本を舞台に日本人が登場する前近代スタイルに戻っており、今日ではこの形式の方が多く読み継がれている。欧米文学を日本で映画化、ドラマ化する場合も、人種の関係で同じ方法が取られるため(舞台の場合は日本人がそのまま欧米人を演じることが多い)、これも翻案と呼ぶことができる。 朝鮮の翻案小説の中の代表的なものでは、高麗時代には『太平広記』から始まった仮伝体小説の翻案があったし、李氏朝鮮時代には中国の三言二拍から始まった翻案がある。 開化期には、唱歌や新小説が出る以前に、外国の作品を朝鮮語に翻訳した作品や翻案小説が、その準備過程として先に現われた。日本や西洋の文学を原典として翻案が成り立った。1897年に李海朝(ko:??? 日本の家庭小説の翻案小説が多く『毎日申報』に連載され、新派劇の公演とも連携していたが、朝鮮の風俗改良の意図もあった[1]。
概念
日本の翻案小説
前近代
近代
朝鮮の翻案小説
作家と作品
天路歴程英国の牧師で小説家であるジョン・バニヤンの寓話。聖書から取った簡潔な言葉と変化のある人物と場面がいきいきと描写されて近代小説の母胎としての意義が大きい。朝鮮では1895年にイギリスの宣教師ゲールによって朝鮮語に翻訳されて広く読まれた。
鉄世界(??? 1897年)李海朝が作った翻案小説。フランスの作家ジュール・ヴェルヌの "Les Cinq Cents Millions de la Begum
瑞士建国誌(????? 1907年)朴殷植の翻案で毎日申報に連載された長編小説。文章は漢文にハングルの送り仮名(?)をつけた程度で、内容はフリードリヒ・フォン・シラーの戯曲『ウィリアム・テル』を中国の鄭哲寛が改作したものから重訳敍述したもの。
具然学(???)新小説作家。1908年に『雪中梅』を発表して開化期小説に大きい影響を与えた。若干の政治論説も発表した。
雪中梅(??? 1908年)日本の末広鉄膓が開化・啓蒙思想を鼓吹するために書いた政治小説『雪中梅』の翻案。
趙重桓(ko:???
長恨夢(??? 1913年)日本の尾崎紅葉の『金色夜叉』を翻案したもの。