翔んで埼玉_(映画)
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『翔んで埼玉』(とんでさいたま)は、魔夜峰央漫画翔んで埼玉』を原作とした日本の映画

2019年2月22日第1作『翔んで埼玉』が公開される[1]続編の『翔んで埼玉 ?琵琶湖より愛をこめて?』は2023年11月23日に公開された[2]
第1作

翔んで埼玉
Fly Me To The Saitama
監督
武内英樹
脚本徳永友一
原作魔夜峰央このマンガがすごい!comics 翔んで埼玉』
製作若松央樹
古郡真也
出演者二階堂ふみ
GACKT
伊勢谷友介
ブラザートム
麻生久美子
島崎遥香
成田凌(友情出演)
中尾彬
間宮祥太朗
加藤諒
益若つばさ
武田久美子
麿赤兒
竹中直人
京本政樹
音楽Face 2 fAKE
主題歌はなわ「埼玉県のうた」
撮影谷川創平
編集河村信二
制作会社FILM
製作会社映画「翔んで埼玉」製作委員会
配給東映
公開 日本2019年2月22日
上映時間106分
製作国 日本
言語日本語
興行収入37.6億円[3][4]
次作翔んで埼玉 ?琵琶湖より愛をこめて?
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2019年2月22日公開[1]二階堂ふみGACKTのダブル主演。なお、壇ノ浦百美役の二階堂は初めての男役を演じる。

原作が未完であることに鑑み、原作をベースとした「伝説パート」と、後年に埼玉在住のある一家が伝説と化した悲劇を聞いたことがきっかけとなり、郷土への愛を深めるという映画オリジナル展開「現代パート」が交錯する構成となる。埼玉県への対抗組織に属する千葉県出身キャラクターも登場する[5]

冒頭しばらく「埼玉県民として見ていられないくらいのひどさで埼玉を痛めつけ」県民にとっては不愉快な場面が続くが、公開直前の2月7日には、埼玉県知事上田清司(当時)へ表敬訪問し“公認”も得た。2月22日の封切初日には、埼玉県の『埼玉新聞』が特別号、協賛企業が「埼玉県民が愛する“高級野菜の種”」を上映館で配布するなど、埼玉県では歓迎一色となっている[6]

埼玉県出身者、千葉県出身者が多数キャスティングされている。ただし、主役の二階堂ふみ・GACKTは、いずれも沖縄県出身である[7]。物語の額縁となる現代パートだけは、全員が設定どおりの埼玉、千葉出身者で固められた。
第1作の制作の経緯

本作のプロデューサーの若松央樹(フジテレビ)は『電車男』(2005年)の制作時に、当時の同僚だった武内英樹と初めて協働し[8]、また脚本家の徳永友一とも協働しており、このチームが後に本作映画版を制作することになる。若松と武内は『のだめカンタービレ』(2006年)などの人気ドラマで共に仕事をしていたが、徐々に協働の機会が減ってきたため、たまに2人で酒を飲みながら「また馬鹿なことやりたいね」「一緒に映画をやりませんか」と話していた[8][9]

その後、若松はフジテレビの映画制作部署に移動となり、武内と協働で映画を制作する機会がやってきた。若松は最初、映画原作として別の作品を提案したが、武内が「若松、これ面白いからちょっと読んでくれない?こっちやれないかな」と書店に平積みされていた本作のマンガを持ってきたのが、本作映画版が制作されることになったきっかけである[8][9]

若松も本作マンガ版を読んでみたところ、上述のとおり埼玉に対する激しい「ディスり」マンガの上、作者の魔夜峰央の都合によりわずか3話で未完として終わっていた。仮にドラマ化した場合、せいぜい15分程度で終わる短い内容だったため、若松は武内の提案に大変困惑した[8]

未完のため、映画として制作するためには新たな結末を用意する必要があった。そこで、若松は武内と何回も飲みに行って、千葉県出身の武内の「埼玉VS千葉で最終的に盛り上がる!」というアイデアを聞かされた結果、若松も「(映画として)なんとかなるかな…」と同調し、映画企画として成立させる方向に動き始めた[8][9]

しかしフジテレビ内には、コンプライアンスの視点から特定の地域である埼玉県を「ディスる」本作の映画制作に反対する声も強く[8]、本作の企画は難航した[9]。最終的に若松・武内のコンビなら面白い映画を作ってくれるだろうとの上司の判断により本作の制作にゴーサインが出された[8]

若松は『電車男』で武内と協働した際に、武内の「爆発的な演出力」「独特の世界観」を目の当たりにしており[8]、本作において武内との協働を開始した際にも『電車男』当時のノリに近い印象で、「笑い」としての自信があった。日本のコメディ作品の数が足りないと感じていた若松は、独特の「武内ワールド」で冒険したいと考えるようになった[9]

本作1作目のエンディング曲にははなわのファーストアルバム「HANAWA ROCK」(2003年)の4曲目に収録されている『埼玉県』を使用することが決定したが、この歌の歌詞には、埼玉県について事実と異なる内容や卑猥な内容が一部含まれていた。そのため、コンプライアンス上の観点から弁護士を入れて『埼玉県』の歌詞の一部を修正した曲を『埼玉県のうた』として作成するとともに、ディスりをフォローするためのカップリング曲として『咲きほこれ埼玉』を収録した[10]。『咲きほこれ埼玉』はテレビ埼玉開局40周年記念ソングに起用されるとともに、再録版の『ニュー咲きほこれ埼玉』が本作2作目のエンディングに採用された。

ただし、キワモノ的な内容の本作だけに、1作目が公開されるまでは若松・武内とも埼玉県民から暴動が起きるのではないかと、大変な不安を感じていた[8]。そこで、観客などからのクレーム対応の想定問答集を作成し、フジテレビと東映の関係部署向けに配布した[11][12]。しかし、本作の公開後にはこの懸念は全くの杞憂であったことがわかった。苦情はほとんど来ず、逆に埼玉県の様々な方面から「よくやってくれた」といった評価を多数得た[8]。1作目は興行的にも大成功だったため、続編の制作が決定した。2作目の制作経緯については#第2作の舞台が滋賀県に決まった経緯を参照。
あらすじ(第1作)

日なたで卵を焼くことができるほど暑い夏のある日、埼玉県熊谷市に住む菅原家の一家は、娘の愛海の結納のため、父の運転する自家用車[注 1]で東京都内に向かっていた。結婚を機に、東京都に引っ越して東京都民になりたいと愛海がはしゃいでいると、カーラジオ[注 2]NACK5で、都市伝説を題材にしたラジオドラマが始まった。それは「埼玉解放の伝説の人物・麻実麗」の物語だった。

19XX年、東京では埼玉への迫害が続いていた。埼玉県人は通行手形なしでは都内に入ることもできず、過度に虐げられた生活を余儀なくされている。そんな東京の中でも、代々東京都知事を生み出してきた超名門校・白鵬堂学院に、海外から麻実麗という美少年が転校してきた。

差別を受ける埼玉出身のZ組生徒をなぜか庇い立てする麗に、不快感を抱く生徒会長・壇ノ浦百美は、全校生徒の前で東京各地の空気の匂いを当てさせる「東京テイスティング[13]という無理難題を吹っかけて、麗に恥をかかせようとするが、麗はそれを見事クリア。逆に百美は麗に心惹かれるようになってゆく。

しかし麗と百美のデート中に、麗の家政婦おかよがSAT(Saitama Attack Team、埼玉急襲部隊)に追われているところに出くわす。おかよは埼玉県民でありながら東京都内を歩いていたために逮捕されそうになっており、彼女を助けたものの、SATが差し出したシラコバトの絵柄が入った草加せんべいを踏み付けられなかった麗も埼玉県人であることが発覚してしまう。しかも彼は埼玉の通行手形制度の撤廃を目標とする地下組織「埼玉解放戦線」の一員だった。埼玉に対する激しい拒絶反応に苦しみながらも、愛する麗と共に逃避行を続ける百美。そしてこの騒動の陰では、埼玉より先に通行手形制度の撤廃を狙う「千葉解放戦線」が蠢いており、やがて事態は埼玉対千葉の全面戦争へと発展してゆく。

埼玉解放戦線、千葉解放戦線は流山橋付近の江戸川を挟んで対峙するが、実は百美が群馬県の赤城山で歴代の東京都知事が不正に蓄財した金塊を発見したことにより、事前に和解が成立しており、両軍は合流して東京都内に攻め込む。そして百美が不正蓄財を暴露したことにより、壇ノ浦建造は失脚する。百美と麗は埼玉デュークが計画していた、これといった特色のない埼玉の文化を、秘密裏に日本全国に広める「日本埼玉化計画」を開始する。

このドラマを聞きながら、埼玉出身の父・好海と千葉出身の母・真紀が夫婦喧嘩を始めてしまうが、埼玉と千葉の和解の顛末を聞いて感涙に咽びつつ仲直りする。それを傍から見ていて呆れる愛海だったが、婚約者の春翔も、結納会場に向かう自動車のカーラジオで同じドラマを聞いていて埼玉愛に目覚め、東京ではなく春日部市に新居を構えることを決意したと知り、愕然となる。そして、麗と百美は「世界埼玉化計画」に向けて動き出すのであった。
用語解説(第1作)

原作が未完になっているため、映画版では原作にない多数の設定が新規追加されている。
埼玉県
東京都の隣の県だが、誰も知らないようなど田舎。県庁所在地は
浦和市。生活水準・文化水準・ファッションセンスなど、ありとあらゆる点で東京都と比べて劣っている。東京都と埼玉県の間には関所があり、埼玉県民は通行手形がないと関所を通過できない。東京都内では埼玉県民は徹底的に差別されており、東京都で病気や怪我をしても、医師にかかることを許されず、百貨店への立ち入りを禁止されており、埼玉県民居住区での生活が義務付けられている。実写映画版では、四方を陸に囲まれた海なし県であるため、海を持つことと埼玉県産のサザエを名物とすることが埼玉県人の悲願となっているが、このことが「海のある県」である千葉県との対立要因ともなっている。また、埼玉県人は深谷市の名物である深谷ネギを時に武器として手にする。実写映画版第2作『琵琶湖より愛をこめて』では、東京との抗争に勝利するも埼玉県人やさいたま市民の意見がまとまらずに連帯性を欠いたままとなっている。埼玉県内に鉄道の路線を有するが路線も心も東京とネズミーランドしか見ていない代表者たち「路線族」も登場し、武蔵野線の建設を阻止するが、これに対処すべく麗が「埼玉に海を造る」という埼玉県人の悲願を達成すべく動き出す。そのための第一歩として海に面した関西の和歌山県を目指したことがきっかけで、関西の地域間抗争に巻き込まれることになる。
東京都
日本の最重要都市にて、日本で最も都会指数が高い大都会。そのため、東京都民がそのことを鼻にかけて埼玉県民を差別・迫害することが横行している。また、東京都内においても都会指数が低い地域やその住人については主に都会指数の高い地域の住人から見下される傾向にあり、映画第1作では東京都内ながら都会指数の低い西葛西について、A組の女子生徒からは東京ではなく千葉県内にあるものだと思い込まれていた旨の発言がある。
白鵬堂学院
百美が自治会長を務める、東京都の名門校。クラスはA組からZ組に分けられている。特に埼玉県民の学生が集められたZ組は他のクラスと比べて環境が著しく劣悪で、木の下のオンボロ小屋で戦前のような学校生活を送っている。女子生徒は学院の制服の下にスカートではなくゲートルもんぺで靴は地下足袋のちぐはぐな服装。実写映画版になると上部の制服が肘宛て付きのセーラー服に変更され、上下揃った国民服風だがくたびれた制服を着た埼玉県民の男子生徒も登場する。麗がA組に転入して埼玉県民と判明してから一変する。
埼玉狩り
東京都民に紛れ込んだ埼玉県民を見つけ出し、埼玉県民が立ち入ってはいけない場所に入り込んだ埼玉県民を追い出すこと。埼玉県民を見つけ出す特殊訓練を受けた武装ガードマンが担う。埼玉県民は肥やしの臭いが染み付いているため、臭いで判明する。映画1作目の追加要素として、通行手形を所持せずに東京都内に入り込んだ不法侵入者の「隠れ埼玉県人」を割り出す機能を有する特殊監視カメラが都内各所に設置されており、実際に「隠れ埼玉県人」が発見された時は、「埼玉警報」が発令される。
SAT
東京都内で「埼玉狩り」の実行役を務める武装警備員。原作では武装したガードマンと書かれているが、映画1作目で「SAT(Saitama Attack Team=埼玉強襲部隊)」という名称が新たに与えられており、彼らの容姿や埼玉県人に接する態度は、仮面ライダーシリーズに出てくるような、典型的な「悪の組織の戦闘員」そのものである。
踏み絵
東京都民に紛れ込んだ埼玉県民を臭いで判別できないときにおこなわれる方法。原作では埼玉県知事の写真だが、映画第1作では踏み絵の対象が、埼玉県のシンボルであるしらこばとの焼き印が入った草加せんべいに変更されている。
サイタマラリア(マラリアのもじり)
小型春日部蚊が媒介する、埼玉県特有の伝染病。最悪の場合、死に至る病気。埼玉県民は独自の抗体を有しているため発症しないが、他県民には非常に脅威となる。感染すると埼玉の「さ」の字の形をした赤斑が皮膚の表面に現れる。
関東地方
千葉県
埼玉県と同じく東京都の隣の県で、なおかつ埼玉県と同様に東京都から通行手形制度を突き付けられている。埼玉県とは異なり、東京都に迎合する方針を選んだ結果、県内にいくつもの「東京」と名のつく物を作ることを認められている。伝説パートでは
東京ドイツ村ららぽーとTOKYO-BAY伊藤ハム東京工場東京ベイシティ交通が、現代パートでは東京ディズニーランドが、全て名前のみであるが登場した。


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