義務論理
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義務論理(: Deontic logic)は、義務権利などの概念を扱う論理学の一分野である。規範論理とも。義務論理は、義務や権利といった概念の基本的論理機能を捉える形式体系である。典型的な記法としては、OA(A は義務的である、A であるべきだ)と PA(A は許されている、A でもよい)がある。deontic という言葉は古代ギリシャ語の deon(拘束されているもの、適切なもの)を語源とする。
目次

1 歴史

1.1 義務論理以前

1.2 Mally の義務論理と von Wright の一階義務論理


2 標準義務論理

3 二項義務論理

4 その他

5 Jorgensen のジレンマ

6 関連項目

7 脚注

8 参考文献

9 外部リンク

歴史
義務論理以前

インドミーマーンサー学派の哲学者や古代ギリシアの哲学者は、義務的概念の形式論理的関係に注目していた[1]。また、後期中世哲学では、義務的概念と真理的概念を比較している[2]ゴットフリート・ライプニッツは自著 Elementa juris naturalis において、licitum、illicitum、debitum、indifferens の間の論理関係がそれぞれ、possible、impossible、necessarium、contingens の間の論理関係に対応していると記している。
Mally の義務論理と von Wright の一階義務論理

アレクシウス・マイノングの弟子 Ernst Mally は著書 Grundgesetze des Sollens で初めて義務論理の形式体系を提唱し、ホワイトヘッドとラッセルの命題論理の文法を使って定式化した。Mally の記法では、論理定数 U と ∩、単項作用素 !、二項作用素 f と ∞ が使われ、以下のような意味を持つ。

!A - A であるべきだ。

A f B - A は B を必要とする。

A ∞ B - A と B は互いを必要とする。

U - 無条件に義務的である。

∩ - 無条件に禁じられている。

また、f、∞、∩ は以下のように定義された。Def. f. A f B = A → !BDef. ∞. A ∞ B = (A f B) & (B f A)Def. ∩. ∩ = ¬U

Mally は5つの形式的でない原則を提案した。
A が B を必要とし、B ならば C である場合、A は C を必要とする。

A が B を必要とし、A ならば C である場合、A は B と C を必要とする。

「A が B を必要とする」とは、「A ならば B である」が義務的である場合だけを意味する。

無条件に義務的であるなら、義務的である。

無条件に義務的であることは、自身の否定を必要としない。

彼はこれらの原則を公理として以下のように定式化した。I. ((A f B) & (B → C)) → (A f C)II. ((A f B) & (A f C)) → (A f (B & C))III. (A f B) ? !(A → B)IV. ∃U !UV. ¬(U f ∩)

これら公理から Mally は 35 の定理を導出したが、その多くは Mally が認めているように奇妙なものとなった。カール・メンガーは定理として !A ? A (「A が真である」と「Aであるべき」が同値)が導かれることを示し、! の導入に問題があるとした[3]。メンガー以降、Mally の体系は哲学者からは見向きもされなくなった。Gert Lokhorst は Mally の35の定理とメンガーの定理の証明をスタンフォード哲学百科事典に ⇒Mally's Deontic Logic として列挙した。

最初の妥当と思われる義務論理は G. H. von Wright が論文 Deontic Logic(哲学系雑誌 Mind、1951年)として発表したものである。von Wright は deontic という言葉を英語で初めて義務論理を指す言葉として使った。Mally の論文はドイツ語で Deontik という言葉を使っていた(1926年)。von Wright の論文以降、多くの哲学者や計算機科学者がその研究をしたり、義務論理体系を構築するようになった。とはいうものの、義務論理は論理学の中でも議論が多く、共通認識が形成されていない領域の1つである。

1951年の G. H. von Wright の論理体系は、命題論理に様相論理学を取り入れたものだった。1964年、von Wright は A New System of Deontic Logic を著し、そこでは命題論理への回帰が見られ、Mally の論理体系に非常に近くなっている。G. H. von Wright が規範的推論のために可能性と必然性の様相論理を採用したことは、ライプニッツへの回帰であった。
標準義務論理

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von Wright の一階体系では、義務性と権利性は行為(acts)の特質として扱われた。命題の義務論理には間もなくクリプキ的な意味論による単純で簡潔な意味論が見つかり、von Wright もそれを採用した。この義務論理を標準義務論理(standard deontic logic)と呼び、SDL、KD、Dなどと略記される。標準義務論理では、古典命題論理に以下の公理を追加する。 O ( A → B ) → ( O A → O B ) {\displaystyle O(A\rightarrow B)\rightarrow (OA\rightarrow OB)} O A → P A {\displaystyle OA\rightarrow PA}

日本語でこれらの公理を表現すると、それぞれ次のようになる。

「A ならば B」でなければならないなら、「A でなければならないなら B でなければならない」。

A でなければならないなら、A でもよい。

前者は O ( A → B ) → ( O A → O B ) {\displaystyle O(A\rightarrow B)\rightarrow (OA\rightarrow OB)} を同値な命題 ( O ( A → B ) ∧ O A ) → O B {\displaystyle (O(A\rightarrow B)\wedge OA)\rightarrow OB} に置き換えると理解しやすい。

これは例えば、「「慈悲深い人は寄付する」が成り立つべきだ」と「慈悲深くあるべきだ」から「寄付すべきだ」を導く論法である。

標準義務論理ではFAという記号も使う。これは「A であってはならない」という意味であり、 O ¬ A {\displaystyle O\lnot A} または ¬ P A {\displaystyle \lnot PA} と定義される。

命題論理体系 D には比較的素直な方法で量化を導入して拡張可能である。
二項義務論理

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