義務教育
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この項目では、教育制度について説明しています。小中一貫教育を行う学校については「義務教育学校」をご覧ください。
19世紀小学校校外学習から大人と一緒に戻る風景を描いた絵。Christian Eduard Boettcher作

義務教育(ぎむきょういく、: compulsory education)とは、が国民に対して教育を受ける、受けさせることを義務付けることである[1]アメリカ独立期やフランス革命期に形成された近代公教育思想に淵源を持っており、欧米では生存権の一環として教育を受ける権利運動が展開された[1]。日本では日本国憲法第26条国民教育を受ける権利(学習権)を定めており、これを保障するために教育を受けさせることが義務づけられる[1]
歴史

学校制度がまだ存在しない古代から現代の義務教育制度に通ずる社会制度は存在した。古くはスパルタにおける7歳から30歳の男性に対しての義務的な教育制度が存在し、自由民に対する文武両道の教育が行われていた。また、シャルルマーニュは802年に貴族の子弟に限定されない義務教育令を公布した。

中世になると、ルター派の諸国では民衆に対する教育に力を入れ始めたが、中でも、ドイツゴータ公国エルンスト敬虔公が1642年に公布したゴータ教育令は、現代の教育法規と同様に、授業時間、学級編成、教科書などの細密な規定がなされている点でかなり先進的なものであった。ゴータ教育令では義務教育の終了は「12歳を超えるか、文字が読めるようになるまで」と定められており、必ずしも一定年齢までの在学を義務付けていないという点で終了基準は課程主義(後述)と年齢主義の併用であったといえる。こういった教育制度はプロイセンフリードリヒ2世の時代まで主流であったが、基本的には下層階級の救済という目的は薄かった。

産業革命期になると、労働者階級の年少児童が工場などでの労働力として使われるようになり、劣悪な環境におかれることになった。イギリスでは19世紀前半には工場法などによって年少者の工場雇用を禁止し、19世紀後半には義務教育制度が施行されるようになった。アメリカ合衆国ではマサチューセッツ州が1852年に最初の義務教育法を制定した。ただし、これは親が貧困のために子を就学させないことを許容しているものであったため、義務教育制度の本来の対象であるはずの貧困層を救済できないものであるという批判もある。

現代的な学校の形態の起源は1807年よりプロイセンで行われた教育改革に求めることができる。1806年フランスとの戦争に敗れたプロイセンでは、ヴィルヘルム・フォン・フンボルトに意見を乞い、逃亡しない従順な徴集兵候補を育てることを目標とした厳格な義務教育プログラムを策定した[2]。あらかじめ決められたカリキュラムを時間割で管理し、個々人の習熟度を度外視して学年単位で教授する教育法はプロイセン・モデルと呼ばれ、アメリカをはじめとした諸国の教育に影響を与えた[2]

20世紀初頭のアメリカにおいては、一部の州で「義務就学年限は14歳までだが、読み書きができない場合は16歳まで」とする課程主義と年齢主義を併用した終了規定を設けていた[3]が、現在では全て年齢主義での規定になっていると思われる(ただし特別支援教育の義務教育年限は20歳から21歳までとなっている)。
義務教育の保障

世界人権宣言、及び経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(国際人権A規約)では、以下に初等教育レベルの義務教育の権利・義務を定められている。

すべて人は、教育を受ける権利を有する。教育は、少なくとも初等の及び基礎的の段階においては、無償でなければならない。初等教育は、義務的でなければならない。 ? 世界人権宣言 第26条1初等教育は、義務的なものとし、すべての者に対して無償のものとすること。 ? 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約第13条第2項(a)

第二次世界大戦後、先進国ではもはや年少者が工場での労働力に用いられるようなことは過去のものとなっており、積極的な「児童のための教育」の考え方が強くなった。もはや教育を受ける義務ではなく教育を受ける権利としての考え方に転換しているため、「義務教育制度は教育普遍化制度と改称すべきだ」との意見もある[4]
類型
年齢主義か課程主義か

義務教育の対象者を決める時の基準に何を用いるかによって分類される。特定年齢の間、義務教育の対象にするという方式を年齢主義と呼び、特定の発達段階に達してから特定の課程を修了するまでを義務教育の対象にするという方式を課程主義と呼ぶ。これは学校進級をする時の基準についての年齢主義と課程主義とは別個の概念である。

始期を年齢主義、終期を課程主義とするなどの両方の基準を用いる方式や、終期について年齢主義と課程主義を併用するなどの方式も存在しうる。歴史上は課程主義の義務教育制度もあったが、現代ではほとんどの国家で始期・終期について年齢主義の義務教育制度を採用している。

この分類について、教育制度教科書などのレベルの書物においても、学校における年齢主義・課程主義と混同している例が見られる[5]。 例えば「年齢主義の義務教育制度では、進級試験によらず年齢に伴って進級し、一定年齢に達したら就学義務は終了する」などと、義務教育の終期が一定年齢で あれば進級も当然年齢基準であるかのような解説が蔓延している。勿論、義務教育の開始・終了の時期と、学校における進級基準には合理的な関係はない。例えば、フランスにおいては義務教育の終期は16歳と年齢によって規定されているが、小学校から飛び級原級留置がポピュラーである。実際に16歳の時点では小学生も大学生もいる。このように、義務教育が年齢主義であっても、学校で厳しい修得主義に基づく課程主義進級制度を実施することには何の問題もないのである。

また、課程主義は一定の授業を受けるまでなどとする履修主義と、読み書きができるようになるまでなどとする修得主義に分けられる。
教育の義務か就学の義務か

家庭教育社会教育なども義務教育の実際の教育活動として認可されるかどうかについては国によってさまざまである。教育義務型の義務教育制度ではホームスクーリングによる教育も社会的に受容されている。就学義務型の義務教育制度では学校教育によってのみ義務教育が行なわれる。

ドイツでは子供に「学校で教育を受ける義務」があると定めている。
その他

他にも外国人に対する就学義務があるかどうか、どこまでが公費負担かなど様々な類型がある。
義務教育の期間.mw-parser-output .side-box{margin:4px 0;box-sizing:border-box;border:1px solid #aaa;font-size:88%;line-height:1.25em;background-color:#f9f9f9;display:flow-root}.mw-parser-output .side-box-abovebelow,.mw-parser-output .side-box-text{padding:0.25em 0.9em}.mw-parser-output .side-box-image{padding:2px 0 2px 0.9em;text-align:center}.mw-parser-output .side-box-imageright{padding:2px 0.9em 2px 0;text-align:center}@media(min-width:500px){.mw-parser-output .side-box-flex{display:flex;align-items:center}.mw-parser-output .side-box-text{flex:1}}@media(min-width:720px){.mw-parser-output .side-box{width:238px}.mw-parser-output .side-box-right{clear:right;float:right;margin-left:1em}.mw-parser-output .side-box-left{margin-right:1em}}この項目ではを扱っています。閲覧環境によっては、色が適切に表示されていない場合があります。

国別の義務教育期間は以下の通り[6]各国の義務教育年数(UNESCO)-2015年 .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  13+ 年間   10?12 年間   7?9 年間   0?6 年間

16年 -  マカオ( 中華人民共和国)、 香港( 中華人民共和国)、 メキシコ、 ブラジル[7]

12年 -  ニュージーランド[7]、 ブルネイ[7]、 フィンランド[7]、 ガーナ[7]、 ベルギー[7]、 オランダ[7]、 ドイツ[7]、 イギリス[7]、 ノルウェー[7]、 ロシア[7]、 モンゴル[7]、  スペイン[7]、 フランス[7]、 イタリア[7]、 デンマーク[7]、 ノルウェー[7]、 オーストラリア[7]、 インド[7]、  パキスタン[7]、 ネパール[7]、 ベトナム[7]、 カンボジア[7]、 シンガポール[7]、 スウェーデン[7]


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