美術大学
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マリ・バシュキルツェフ「アトリエにて」(1881年)は、美術学校における人体デッサン授業の様子を描いている。ドニプロペトロウシク美術館(ウクライナ)所蔵。

美術学校(びじゅつがっこう、英語: art school)とは、視覚芸術イラストレーション絵画写真彫刻グラフィックデザインなど)に特化した教育機関初等教育中等教育高等教育の各段階の美術教育機関が存在する。

混同されがちではあるが、音楽系学部などを含む場合もある芸術大学は、厳密には美術大学とは区別される。また、音楽学部だけを持つ単科大学音楽大学と呼ばれ、区別される。大学の種別としての美術大学・芸術大学は「美大(びだい)/芸大(げいだい)」と略され、後記する各大学については、学生・関係者や近隣住民により、その大学の省略形呼称を「○○美術大学/芸術大学」を「○○美術大/芸術大」「○○美大/芸大」などとする場合も多い(大学の略称については本稿の説明範疇ではないので詳細については当該項目を参照の事)。

フランスのエコール・デ・ボザールが今日の美術教育機関の最初のモデルであると考えられ、徒弟制度に基づく伝統的な美術教育に代わる組織として登場した。
概要

日本の美術学校(専修学校)・美術大学は美術における実技者の育成に主眼を置き、油絵日本画版画彫刻陶芸工芸(木工・金工など)、建築デザインなどを学ぶことができる。近年ではパソコンウェブデザイン演劇映画映像編集マンガアニメーションゲーム染織文化財・美術品保存修復、博物館学学芸員イベントマネジメント文芸、情報系など多様な分野に関する学科の設置も増えている。しかしいずれも必ず実技を修得させる教育を伴うものであり、実技の教育を通じて学生に造形・製作に関する能力や視点を身に付けさせることが美術学校・美術大学における教育の最大の目的である。なお、実技によって生み出された作品を研究対象とする美学芸術学及び美術史に関する科目も大半の美術大学に設置されているが、美学・芸術学及び美術史は人文科学の分野であり、基本的には実技を伴わないため、美術大学にはこの分野のみを専攻する学科は設置されていない。また実技を伴う書道については美術に含める場合もあり、一部の美術大学・学科に書道系の専攻が設置されている。元来書道は東洋独特の芸道であり、日本においては茶道華道香道とともに伝統芸能の範疇に入るが、書道の実技教育即ち習字自体は毛筆硬筆とも国語学国語教育の分野に属しているため、書道単独の学科としては文学部教育学部に設置されている場合が多い。一部の美術大学は通信制の課程を併設している。

英語圏の美術学校は、大抵の場合、一般的な大学システムの中に位置づけられている。一方デンマークフランスイタリアなどでは、美術学校は独自の高等教育機関として存在しており、所在国の文部省の管轄外に置かれている。それらの学校では公的な学位は発行せず、独自の修了証明書を学生に与えている。一般大学とは異なる美術学校の特殊な位置づけは、ヨーロッパ圏外のいくつかの国でも引き継がれている。

今日、多くの美術学校が美術に関連する他の科目も提供しており、また一般大学でも美術学校での科目に対応するコースを創設している。例えば、タイのバンコクにあるチュラロンコーン大学は、伝統的な学部に加えて美術学部を設けており、美術学校から一般大学に発展したシラパコーン大学と並んで美術教育を行っている。
美術大学の文化

世間でのステレオタイプとは異なり、全米美術学校協会や全米美術大学協会の認証を受けた美術大学では、リベラルアーツ・一般教養科目が卒業要件として厳格に組み込まれている。そのため、美術大学の学生も一般大学と変わらず、正統な大学の学位を受けられるようになっている。
学生の選抜と教育内容

日本の場合、美術大学受験の多くは、基礎学力を考査する「学科試験」と、基礎技術を考査する「実技試験」の両試験の選考を経て行われる。受験者の多くは、数ヶ月?数年、美術大学受験のためにデッサンや色彩、デザインなどの基礎知識を学ぶのが一般的である。美術大学受験専門の「画塾」と呼ばれる美術専門の美大予備校も全国に存在する。

学科試験は、芸術関係の設問が多い。学科試験よりも実技試験を重視する傾向が強いが、最低基準値に達しない場合、実技が満点であっても不合格になることがある。そのため、学科授業も設ける予備校も多い。学科試験に大学入試センター試験を利用する美術大学も多い。美術制作を主体としない芸術学科を受験する場合、個別学力試験を課す大学もある。

実技試験は主に、素画、写生、着彩写生、静物写生、立体造形、彫刻、デザイン、空間構成、などを数時間かけて完成させ提出する。推薦入試・AO入試等の場合は事前指定された制作課題を提出することもある。また実技試験を課さない学科・専攻等も存在しており、美術制作を主体としない芸術学科を受験する場合、実技試験に代えて小論文等を選択できる美術大学も多い。大阪芸術大学嵯峨美術大学など、全学科・専攻について実技試験・作品提出を課さない選抜方法を設定している美術大学もある。また美術大学の学部の通信制課程については現在書類選考のみとなっており、入学試験自体を行っていないため、実技試験・作品提出は課されない。

2000年代以降、少子化が進む中定員の充足が困難になっている美術大学も出ており、健全な大学運営を維持できず教育課程の大幅変更を余儀なくされたり、宝塚大学のように学部・学科廃止に至った事例もある[1]


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