置換_(数学)
[Wikipedia|▼Menu]
.mw-parser-output .hatnote{margin:0.5em 0;padding:3px 2em;background-color:transparent;border-bottom:1px solid #a2a9b1;font-size:90%}

この項目では、置換について説明しています。初等組合せ論における partial permutationについては「順列」をご覧ください。
対称群」も参照三種類の玉の置換、全六種

数学における置換(ちかん、: permutation)の概念は、いくつか僅かに異なった意味で用いられるが、いずれも対象や値を「並べ替える」ことに関するものである。有り体に言えば、対象からなる集合の置換というのは、それらの対象に適当な順番を与えて並べることを言う。例えば、集合 {1, 2, 3} の置換は、(1,2,3), (1,3,2), (2,1,3), (2,3,1), (3,1,2), (3,2,1)

の全部で六種類ある順序組である。単語のアナグラムは、単語を構成する文字列に対する置換として定められる。そういった意味での置換の研究は、一般には組合せ論に属する話題である。

相異なる n 個の対象の置換の総数は n×(n ? 1)×(n ? 2)×...×2×1 通りであり、これは "n!" と書いて n の階乗と呼ばれる。

置換の概念は、多かれ少なかれ(あるいは陰に陽に)、数学のほとんどすべての領域に現れる。たとえばある有限集合上に異なる順序付けが考えられる場合に、単にそれらの順番を無視したいとか、無視した時にどれほどの配置が同一視されるかを知る必要があるなどの理由で、置換が行われることも多い。同様の理由で、置換は計算機科学におけるソートアルゴリズムの研究において生じる。

代数学、特に群論において、集合 S 上の置換は S から自身への全単射(つまり写像 S → S で S の各元が像としてちょうど一つずつ現れるもの)として定義される。これは各元 s を対応する f(s) と入れ替えるという意味での S の並べ替え (rearrangement) と関連する。このような置換の全体は対称群と呼ばれるを成す。重要なことは、置換の合成が定義できること、つまり二つの並べ替えを続けて行うと、それは全体として別の並べ替えになっているということである。S 上の置換は、S の元(あるいはそれを特定の記号によって置き換えたもの)を対象として、それらに対象の並べ替えとして作用する

初等組合せ論において、「順列と置換」はともに n 元集合から k 個の元を取り出す方法として可能なものを数え上げる問題に関するもので、取り出す順番を勘案するのが k-順列、順番を無視するのが k-組合せである。k = n の場合には、k-順列は本項に言う意味での置換となるが、それ以外の場合には順列の項へ譲る。
歴史オーギュスタン=ルイ・コーシー (1789?1857)

n 個の要素の置換の総数を決定する規則は少なくとも1150年ごろにはヒンズー文化において知られていた。インドの数学者バースカラ2世による著書に

The product of multiplication of the arithmetical series beginning and increasing by unity and continued to the number of places, will be the variations of number with specific figures.[1]

と訳せる一節が含まれる。

一見関係なさそうな数学の問いが置換を通じて研究された最初の事例は、1770年ごろにラグランジュが代数方程式の研究において、方程式の根の置換と方程式の可解性との関係を観察したことである。 この方向性をルフィニが引き継いで進めた結果、5次以上の代数方程式には解の公式が無い事が示された。しかし、置換は文字の順列として表されており、まだ読みにくいものだった。ルフィニの成果に感動したコーシーは置換の記号の簡略化や理論の一般化を行い@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}1815年[要検証ノート]に『置換論』としてまとめ上げた。アーベルはルフィニの論文を直接には知らなかったがコーシーの『置換論』を読み、ルフィニの論文に欠けていた代数的可解性の原則も証明した上で独自に5次以上の代数方程式には解の公式が無い事を示した(アーベル?ルフィニの定理)。さらに代数的可解性を分析したガロアは、何が(一変数)多項式方程式の可解と不可解とを根本的に決めているのかを完全に記述するガロア理論に到達した。現代数学において、同様に問題の理解に際して関連するある種の置換を調べることになるという状況は多く存在している。
一般性

置換の概念を研究対象とする分野について挙げる。
群論の文脈で

群論とその周辺分野では、無限集合も含めた任意の集合上の置換を考えることができる。すなわち、集合 S の置換とは、S から S 自身への全単射のことを言う[2]。この場合、置換の積を定義して置換群の概念が得られる。集合 S が n 元からなる有限集合ならば、S 上の置換は n! 個存在する。
組合せ論の文脈で多重集合上の置換

組合せ論において置換とは、有限集合の各元を一つずつ、かつ唯一つずつ用いて得られると理解するのが普通である[3]。ここで、「列」の概念は「集合」の概念と異なり、列に現れる項は何らかの順序に従っていなければならない。つまり列は(それが空でなければ)「初項」を持ち、(長さが 2 より小さくなければ)第二項を持ち、といった具合に各項が順番に現れる。対照的に、集合の元は決まった順番を持たず、例えば {1, 2, 3} と {3, 2, 1} は見た目が異なるだけで全く同じ集合である。この意味で、n 個の元からなる有限集合 S 上の置換は、各 i を列の第 i 項へ写すものとみて {1, 2, …, n} から S への全単射である。あるいは、x < y は、列の中で x の後に y が現れるという意味でさだめて、S 上の一つの全順序を与えるものと見ることもできる。この意味での S の置換も、やはり n! 通り存在する。

置換の概念を少し弱めて「同じ元が二度は現れることがないが、与えられた集合の全ての元を使い切る必要はない」ものとした列を考えることが、初等組合せ論においてたびたびある。実際には、与えられた n 個の元からなる集合から、決められた長さ k の列を考えるという形で、この概念が用いられることが多い。これらの対象は、本項に言う置換の概念と区別するために、順列と呼ばれ、二項係数と深く関連する。

また、有限多重集合 M 上の置換は、重複置換とも呼ばれ、M の各元が、自身の M における重複度とちょうど同じ数だけ現れるような列である。M の各元の重複度が、(適当な順に)m1, m2, …, ml で、それらの和(つまり M の位数)が n であるとすると、M 上の置換の総数は多項係数 ( n m 1 , m 2 , … , m l ) = n ! m 1 ! m 2 ! ⋯ m l ! {\displaystyle {n \choose m_{1},m_{2},\ldots ,m_{l}}={\frac {n!}{m_{1}!\,m_{2}!\,\cdots \,m_{l}!}}}


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:54 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef