缶詰
[Wikipedia|▼Menu]

缶詰(かんづめ)は、一般に水分の多い食品金属に詰めて密封した上で微生物による腐敗・変敗を防ぐために加熱・殺菌した[1]保存食乾燥食品などの製品を単に金属缶に詰めて密封したものは厳密には「缶入り」と呼ばれ、一般に缶詰とは区別される[1]。なお、食品以外の缶詰も製造されている[2]後述)。
概説食料品店の棚に並ぶ缶詰や瓶詰

長期保存に適するよう調理した食品を金属製容器(缶)に入れて封をし加熱処理をしたもので、保存食の一種である。広く金属缶に封入した製品を指すこともあるが、先述のように乾燥食品などの製品を単に金属缶に詰めて密封したものは「缶入り」と呼ばれ一般の缶詰とは区別される[1]。日本の品質表示基準(JAS法)等の規格でも殺菌工程を経ているものを「缶詰」としている[3]。缶詰は中の微生物を高熱で殺菌してあるので殺菌剤や保存料は使用されていない[4][3]。業務用のものでは一斗缶と呼ばれる18リットル程度の大型のものもあり、主に食用や液状の調味料タケノコの水煮など大型の食材を封入している。また、飲み口のある飲料缶は、それぞれ「缶コーヒー」「缶ジュース」「缶ビール」と呼ばれている。

缶詰は基本的に調理済みなので、開けてすぐ(または湯煎等による簡易な加熱などのみで)、そのまま食べることができる。開けてすぐに食べれば食中毒を引き起こすことも無い。ただし通常、固形物は調味液とともに封入する必要があるなど、製造工程に由来する弱点もあり、どんな食品でも保存できるわけではない。例外として、あえて殺菌をせずに缶の中で発酵させるシュールストレミングという缶詰も存在する(日本では規格上、缶詰ではない)。また、ドライパック缶といって、水戻しした大豆ヒジキなどを、液体を加えず高真空状態で缶に詰め、加熱殺菌時に缶内の水蒸気対流により、程よく蒸し上がるようにした製品も作られている。

缶の素材は、日本では主にアルミニウムまたはで、アルミニウム製のものはアルミ缶、鉄製のものはブリキ缶またはスチール缶と呼ばれる。スチール缶は磁石につく。空き缶は回収することにより、再資源化することが可能である。

瓶詰めと異なり、通常、いったん開封すると再度を閉める事はできない。

その製法により、缶詰食品は「魚の缶詰は骨までサクサク食べられる」「果物の缶詰はシロップの味が全体にいきわたっている」など、独特の味わいが生まれる。そのため、デザートに敢えて生の果物ではなくフルーツ缶を用いる例や、酒肴おかずの缶詰を揃えた「缶詰バー」が開かれるなどの動きも出てきている。

なお、土産物品やジョーク商品として、食品以外の缶詰も製造されている。
特徴
長所

水や気体に対する遮断性が大きく、脱気・密封・殺菌の工程を経ているため長期保存に適している
[5][6][7][3]

熱伝導性が高いため、効率よく内容物の加熱・殺菌、冷却を行うことが可能である[5]

金属は一般に剛性弾性に優れ丈夫であることから、荷扱いが容易である[5]

金属は伸展性に富み高い精度で多様な加工を施すことができ、規格化も容易である[5]

製造工程において缶への表面塗装あるいは印刷が可能である[5]

缶への直接印刷は、日本では第二次世界大戦前は行われなかった。缶の外側に印刷した紙を巻きつけるように張り、これで内容物を示した。この方法は簡便であり、同じ内容の缶詰を多数の国へ輸出する場合などに便利であるので、21世紀初頭の現在も一部の缶詰で行われており、日本国内では輸入品の缶詰によく見られる。しかし、この紙を巻くタイプの表示は劣化しやすく、破れたり風化してしまう可能性も否めないため、極めて長期間の保存を意図した製品への使用には向かない。

缶への印刷に使うインキは金属インキと呼ばれ、金属光沢を生かせる透明性のものが多い。


原料を大量に買い付けて加工し保存しておくことができる、常温で流通させることが可能である、中身には廃棄部分が無い、価格変動の大きい食材も安く手に入れることができる、調理の手間も少ないといった点で経済的である[6][7][3]

主食、副食(おかず)、デザートなど種類も多く、外国産の食材やシーズン外の食材を食べることも可能である[6][7][3]

栄養価の損失が少ない[6][7][3]

短所

缶の内面に塗装を施さなければ保存中に缶の内面からの腐蝕を生じやすい
[5]

内容物によっては、缶にの合金を使い、内容物の腐敗や変色を防ぐ工夫がされている。しかし錫が溶け出して人体に影響を及ぼす例も存在する。1969年にはトマトジュース缶で、1970年にはモモ(桃)缶で中に錫が溶け出して食中毒が発生。製品が回収された出来事もあった[8][9]。錫の代替物としてエポキシ樹脂フェノール系樹脂塗料が使われることもあるが、これらの樹脂には環境ホルモンであるビスフェノールAが溶出する問題がある。

カニホタテの缶詰には酸性パーチ(硫酸紙)と呼ばれる紙が敷かれているが、貝類甲殻類に含まれる硫黄分がブリキの錫や鉄分と化合して硫化錫硫化鉄となり、肉に黒い色をつけてしまうのを防止するためだったという。この方法は、1900年頃に北海道の業者により発明された。現在では缶の内側に塗料が塗られているので、黒変の心配は減っている。なお、カニやサケの缶詰にガラス様の結晶が発生するストラバイト現象は、カニ・サケ肉の成分であるマグネシウムアンモニウムリン酸が結合して、マグネシウム・アンモニウムリン酸塩の結晶[注 1]が発生する現象であり、これは酸性パーチをもってしても防ぐことはできない。

こうした内側の膜の成分は高温で溶出する可能性があるにもかかわらず、飲食店やアウトドア調理で缶詰を直火で加熱する例が見られ、日本製缶協会は缶詰の中身を温めたい場合は湯煎するよう呼び掛けている[10]


開封のために缶切りが必要な場合がある[5]

現在では缶切りがなくても開けられるよう缶詰の缶蓋そのものに加工を施したイージーオープンエンド(EOE)となっているものが増えている。日本では、缶飲料はほとんどがこの種のものになっている。また、肉や魚などの食品缶詰でもスコアと呼ばれる深い傷のような線を表面につけて、大きく開くようにしたものも多い。このように缶蓋をイージーオープンエンドとした缶詰をイージーオープン缶と呼ぶ。イージーオープン缶の保存性は従来の物と変わらないが[11]、強度が低いため、高所から落下させた場合など、強い衝撃があると開缶してしまう可能性がある。このため、自衛隊戦闘糧食で用いられる缶詰はイージーオープン缶は採用されていない。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:63 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef