缶詰(かんづめ)は、一般に水分の多い食品を金属缶に詰めて密封した上で微生物による腐敗・変敗を防ぐために加熱・殺菌した[1]保存食。乾燥食品などの製品を単に金属缶に詰めて密封したものは厳密には「缶入り」と呼ばれ、一般に缶詰とは区別される[1]。なお、食品以外の缶詰も製造されている[2](後述)。
概説食料品店の棚に並ぶ缶詰や瓶詰
長期保存に適するよう調理した食品を金属製容器(缶)に入れて封をし加熱処理をしたもので、保存食の一種である。広く金属缶に封入した製品を指すこともあるが、先述のように乾燥食品などの製品を単に金属缶に詰めて密封したものは「缶入り」と呼ばれ一般の缶詰とは区別される[1]。日本の品質表示基準(JAS法)等の規格でも殺菌工程を経ているものを「缶詰」としている[3]。缶詰は中の微生物を高熱で殺菌してあるので殺菌剤や保存料は使用されていない[4][3]。業務用のものでは一斗缶と呼ばれる18リットル程度の大型のものもあり、主に食用油や液状の調味料、タケノコの水煮など大型の食材を封入している。また、飲み口のある飲料缶は、それぞれ「缶コーヒー」「缶ジュース」「缶ビール」と呼ばれている。
缶詰は基本的に調理済みなので、開けてすぐ(または湯煎等による簡易な加熱などのみで)、そのまま食べることができる。開けてすぐに食べれば食中毒を引き起こすことも無い。ただし通常、固形物は調味液とともに封入する必要があるなど、製造工程に由来する弱点もあり、どんな食品でも保存できるわけではない。例外として、あえて殺菌をせずに缶の中で発酵させるシュールストレミングという缶詰も存在する(日本では規格上、缶詰ではない)。また、ドライパック缶といって、水戻しした大豆やヒジキなどを、液体を加えず高真空状態で缶に詰め、加熱殺菌時に缶内の水蒸気の対流により、程よく蒸し上がるようにした製品も作られている。
缶の素材は、日本では主にアルミニウムまたは鉄で、アルミニウム製のものはアルミ缶、鉄製のものはブリキ缶またはスチール缶と呼ばれる。スチール缶は磁石につく。空き缶は回収することにより、再資源化することが可能である。
瓶詰めと異なり、通常、いったん開封すると再度蓋を閉める事はできない。
その製法により、缶詰食品は「魚の缶詰は骨までサクサク食べられる」「果物の缶詰はシロップの味が全体にいきわたっている」など、独特の味わいが生まれる。そのため、デザートに敢えて生の果物ではなくフルーツ缶を用いる例や、酒肴・おかずの缶詰を揃えた「缶詰バー」が開かれるなどの動きも出てきている。
なお、土産物品やジョーク商品として、食品以外の缶詰も製造されている。
特徴
長所
水や気体に対する遮断性が大きく、脱気・密封・殺菌の工程を経ているため長期保存に適している[5][6][7][3]。
熱伝導性が高いため、効率よく内容物の加熱・殺菌、冷却を行うことが可能である[5]。
金属は一般に剛性や弾性に優れ丈夫であることから、荷扱いが容易である[5]。
金属は伸展性に富み高い精度で多様な加工を施すことができ、規格化も容易である[5]。
製造工程において缶への表面塗装あるいは印刷が可能である[5]。
缶への直接印刷は、日本では第二次世界大戦前は行われなかった。缶の外側に印刷した紙を巻きつけるように張り、これで内容物を示した。この方法は簡便であり、同じ内容の缶詰を多数の国へ輸出する場合などに便利であるので、21世紀初頭の現在も一部の缶詰で行われており、日本国内では輸入品の缶詰によく見られる。しかし、この紙を巻くタイプの表示は劣化しやすく、破れたり風化してしまう可能性も否めないため、極めて長期間の保存を意図した製品への使用には向かない。
缶への印刷に使うインキは金属インキ