編み物(あみもの、編物とも表記)とは、糸、特に毛糸や綿糸を編んで作った布や衣類(肌着、ジャージー、セーター等)、装飾品(レース等)、およびそれらの製品を作る行為、工芸、手芸である[1]。英語を借りてニット(knit)とも言い、またポルトガル語やスペイン語で靴下を意味するメリヤスという呼び方もあり[2]、江戸時代から1950年代ころまで用いられた。
編む(あむ)とは、紐状のものを絡み合わせたり、結びあわせてひとつの形に作り上げることを意味する動詞(用言)であり[3]、糸だけでなく、竹や蔓、籐、芭蕉葉、針金等で、籠・ござなどの工芸品や建築材を作る行為、ビーズで装身具等を編む行為、髪を編む行為(三つ編み等)も含まれる。また、漁を行うための網(あみ、漁網)も編んで作られている。ただし、一般的にはこれらの行為の結果の製品を「編み物」とは呼ばない。なお、英語ではこれらは糸を編む行為とは区別し、weave(織り)、plait または braid(いずれも組紐、わら編み、髪編み等)と言う。日本語でも、糸を素材とする場合には、「編み」と「織り」は、糸と糸の関係、構造(トポロジー)は明確に区別されている。織物が、多数の経糸(たていと)および(しばしば1本の)横糸を用いて、糸が交差する構造で「一段ずつ」布地を作ってゆくのに対し、編み物は、結び目を作る要領で「一目ずつ」形を作って行くことが特徴である。
編み物は手によって編むこと(手編み)と、機械によって編むこと(機械編み)のふたつに大別できる。 編みの起源は古く、旧石器時代にまでさかのぼる。世界的に見て、発見されている最初期の編み細工は、1本の連続した糸を編んで作った網である。やがて、糸・藁・紐・竹などを素材とし、手や針を用いて様々な生活道具(籠・敷物等)や衣類が作られるようになった。日本でも、縄文時代早期に漁網が編まれていたことが判っている[4]。 伸縮性のある素材の編み方は「スプラング」や「ブレーディング」と呼ばれ、青銅器時代には知られていた。現在の編み物に近いもので、年代が確定された最古のものは、帝政ローマ時代のシリアのローマ植民都市ドゥラ・エウロポスから発見された3世紀のものとされる。古代の編み針は、現在のかぎ針に近い形状であったと考えられる。シリアおよびエジプトが起源となり、ムーア人やアラブ商人
歴史
産業としての編物はフランスで発展し、16世紀には職人によるギルドが作られた。1589年(一部の資料では1588年)にイギリス人牧師、ウイリアム・リー(William Lee、1563年 - 1610年)が、足踏式による靴下編機(緯編 よこあみ)を発明し、1775年には同じくイギリスで経編(たてあみ)機が登場する。編機の改良が進み、手編から機械編の時代へと移行していった[5]。1849年には、イギリスのマッシュー・タウンゼント(Matthew Townsend)が従来のヒゲ針の改良に成功し、現代のメリヤス編機に多く採用されているベラ針(Beard Needle)を考案したことで、編物工業の進歩は促進された[5]。機械編みは、現代ではTシャツやジャージー、肌着、靴下等の生地生産に広く使われ、また既製服のセーター等も作られている(カットソー)。