線維筋痛症
ACR1990分類基準を構成する18箇所の圧痛点
概要
分類および外部参照情報
ICD-10M79.7
線維筋痛症(せんいきんつうしょう、英: fibromyalgia, 略:FM)とは、全身に激しい痛みが生じる病気である。英語では、症候群であることを表現して、fibromyalgia syndrome:略FMSとも記される[1]。原因不明の全身の疼痛を主症状とする[2]。疼痛は腱付着部炎や筋肉、関節などにおよび、体幹や四肢から身体全体に激しい疼痛が広がる[3]。新興疾患では無く、以前は「非関節性リウマチ」「心因性リウマチ」「軟部組織性リウマチ」「結合組織炎」「結合組織炎症候群」などと呼ばれていた[1]。
似たような症状を呈するものに、慢性疲労症候群、過敏性腸症候群、化学物質過敏症、シックハウス症候群、顎関節症、間質性膀胱炎、湾岸戦争症候群、複合性局所疼痛症候群、エーラス・ダンロス症候群などがあげられるが、異なる疾病概念である[4]。 1990年、米国リウマチ学会により疾病概念が定義され、有用性の高い分類基準が提案され「線維筋痛症症候群」の疾病名が広まった[1]。2010年には痛み症状の評価と合わせ、随伴症状も合わせた新たな診断基準が作成された[5]。 患者は男性より女性の方が非常に多く、働き盛りの中高年に発生率が高い。米国での有病率は20歳以上成人のおよそ2%ほど[2]。軽症例も合わせれば推定200万人と言われる、比較的患者人口の大きなリウマチ性疾患であるにもかかわらず、日本の医療機関での認識が遅れている。その結果適正に医療を受けられている患者が極めて少なく、多くの患者は未診断、または、誤診を引き起こしてドクターショッピングを繰り返し、結果的に長く病む状況となってしまっている。医療に失望して民間療法などに流れている場合もある。このように日本の線維筋痛症の医療環境は問題がある[6]。 原因は不明であり、医師が通常行なう血液検査では異常が現れない[2]。CTスキャン、MRIを検査しても異常を発見できない。また、この病気が診断できる特別な検査は2015年時点で存在しない。診断が非常に困難な症例が多いが、圧痛点による簡易的な見分け方が知られる[7]。 2018年10月の論文では、線維筋痛症31人と健康な人27人をポジトロン断層法 (PET) で比較して、脳のグリア細胞の活性化が原因である可能性を示し、疲労感の症状では帯状回の炎症の度合いと一致した[8]。 骨格筋の激しい痛みが、線維筋痛症の主な症状であるが、その激しさを表現するのに、「体の中で火薬が爆発するような痛み」「万力で締め付けられるような痛み」「キリで刺されたような痛み」「ガラスの破片が(体の中を)流れるような痛み」などと形容される[9]。また疼痛症状以外に、様々な身体性の症状を伴う。特に共通の症状として睡眠障害が挙げられている。9割の患者で睡眠障害がみられると言われる[10]。
解説
原因
症状線維筋痛症の症状
主要症状
全身の慢性疼痛と解剖学的に明確な部位の圧痛[1]。
随伴症状
身体症状[1][4]
38℃以下の微熱、疲労感、倦怠感、手指のこわばり、手指の腫脹、関節痛、レイノー現象、寝汗、過敏性腸症候群、動悸、乾燥症状、呼吸困難、嚥下障害、間質性膀胱炎様症状、生理不順、月経困難症、体重変動、光線過敏症、寒暖不耐症、顎関節症、低血圧、各種アレルギー症状、僧帽弁逸脱症、かゆみなど、
神経症状[1][4]
四肢のしびれ、手指のふるえ、めまい、耳鳴り、難聴、視力障害
精神症状[1][4]
抑うつ症状、不安感、焦燥感、睡眠障害(過眠、不眠)、集中力低下、注意力低下、健忘、起床時の不快感