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線形(せんけい、alignment)は、道路や鉄道などの路線の形状のこと。すなわち、平面的な路線の形状がどのような直線と曲線の組み合わせであるか、上り坂や下り坂などの勾配がどのように構成されているかなどを示すものである。 道路や鉄道が出発点(起点)から目的地(終点)を結ぶとき、その形状が直線のみで構成されることや、すべて平坦であることは一般的ではない。途中に障害物があれば、それを避けるために路線に曲線を挿入する必要があり、起点と終点に高低差があれば路線に勾配を設ける必要がある。このような路線の形状を線形と称する。 線形には、平面的な直線および曲線の組み合わせを示す平面線形、路線に沿った勾配を示す縦断線形のほか、曲線区間において車両が円滑に走行できるように設けられる片勾配・カントなどがあり、これらを個々に線形要素と称する。一般に、平面線形が主として直線や緩い曲線で構成され、縦断勾配が平坦に近い路線は線形がよいと呼ばれ、逆に急曲線や急勾配が多い路線は線形が悪いと呼ばれる。線形の良し悪しは、車両の走行性に影響を与え、線形のよい路線は快適に高速走行が可能である。 また、鉄道や道路のほか、線形は河川の形状を示す場合にも用いられる。 平面線形は、路線の平面的な形状を示す線形要素である。平面線形の基本は直線と円弧曲線であり、ともに円弧半径Rをもって示す。半径Rが小さいほど急な曲線であり、直線ではR=∞(無限大)となる。また、平面線形は曲率kで示すこともでき、半径の逆数で示されk=1/Rの関係にある。したがって、曲率が大きいほど急曲線であり、直線を曲率で示すとk=0となる。 走行する車両が路線の曲線区間にさしかかると、車両には遠心力が作用する。このときの遠心力は以下の式で表すことができる。 F = m v 2 R = m v 2 k {\displaystyle F={\frac {mv^{2}}{R}}=mv^{2}k} ここに、 である。 このことから、遠心力は車両の走行速度が速いほど大きくなり、曲率半径が小さいほど大きくなることがわかる。遠心力が過大となると乗り心地を損ねるほか、車両が転覆・脱線・路外逸脱するなど事故の原因となる。したがって、車両が快適に高速走行を行うためには、曲率半径を大きく(曲率を小さく)する必要がある。また、やむを得ず小さな曲率半径とする場合は、走行車両に対し速度制限を設定する。 前述のとおり、平面線形の基本とは直線と円弧曲線であり、円弧曲線はその曲線区間で曲率半径(曲率)が一定となっている。しかし、直線区間から曲線区間へ直接移行すると、走行する車両が急激なハンドル操作を要求されたり、突然大きな遠心力が作用するなど、乗り心地や安全性に悪影響を与える。とりわけ曲率半径の小さな急曲線への突然の移行は影響が大きい。 そこで、直線(曲率半径R=∞ / 曲率k=0)から所定の円弧曲線の曲率へ徐々に変化する曲線を挿入することがあり、これを緩和曲線と呼ぶ。緩和曲線は、運転操作や乗り心地を改善するほか、後述の片勾配・カントをなめらかに変化させること(カントの逓減[1])ができる。また、直線と曲線のみならず、曲率半径の異なる円弧曲線同士を接続するときにも緩和曲線が挿入される。また鉄道では、円弧曲線部分がなく緩和曲線部分だけで構成される全緩和曲線が使われることもある。 道路の場合は曲率の逓減を一定にするが、鉄道の場合は直線的に逓減する直線逓減と曲線的に逓減する曲線逓減がある。直線逓減の場合は緩和曲線の始点や終点で曲率が微分不可能になるが、曲線逓減の場合は緩和曲線の始点や終点が微分可能になるため高速鉄道(新幹線など)で使われる。 一般に緩和曲線としては以下の曲線が用いられる。
概要
平面線形曲線区間の配置
BC - 曲線始点 / EC - 曲線終点
R=半径 / CL=曲線長 / IA=交角
直線と曲率半径・曲率
F - 遠心力
m - 車両の質量
v - 車両の走行速度
R - 曲率半径
k - 曲率
緩和曲線緩和曲線の事例
直線から徐々に曲率が変化し、所定の半径 (R=250) にすり付いている。
クロソイド曲線 直線逓減(完全な直線)
曲率が一定の比率で変化する曲線である。
一定の速度での走行中に、一定の速度でハンドルを操作したときの軌跡に相当する。
道路の緩和曲線として用いられる。
鉄道の場合は保守のための計算が比較的大変なので省力化軌道の場合に採用されることが多い。
3次曲線(3次放物線) 直線逓減(完全な直線ではない)
鉄道で用いられる緩和曲線[2]。保守のための計算がクロソイド曲線より容易なため、バラスト軌道ではこちらが採用されることが多い。
サイン半波長逓減曲線 曲線逓減
鉄道で用いられるもので[2]、日本では新幹線の内120 km/h以上で走行する区間などに用いられている。