緑内障
[Wikipedia|▼Menu]

緑内障

右眼の急性閉塞隅角緑内障
概要
診療科眼科学
分類および外部参照情報
ICD-10H40-H42
ICD-9-CM365
DiseasesDB5226
MedlinePlus001620
eMedicineoph/578
MeSHD005901
[ウィキデータで編集]

緑内障(りょくないしょう、: glaucoma )は、の病気の一種。青底翳(あおそこひ)とも呼ばれる。
概説

緑内障は網膜神経節細胞が死滅する進行性の病気であり、特徴的な視神経の変形と視野異常(視野欠損)を呈する。一度喪失した視野は回復させることが出来ないため、失明の原因になりうる。日本では、最近になって糖尿病網膜症を抜いて1番目の失明の原因となっている[1]。視野狭窄は自覚されないうちに末期症状に至ることも多く、発見には定期的な(眼を検査対象に含めた)健康診断が必須である。

かつては、眼球の中の圧力である眼圧が高いことが原因と考えられていたことから、眼圧を下げることで視野障害の進行を停めるという方法をとる。眼圧を30 %低下させることにより、正常眼圧緑内障において80 %の患者において視野障害の進行が停止したという報告もある[2]。しかし、眼圧が正常範囲であっても緑内障に罹患している患者が多いことが確認され、視神経乳頭の脆弱性が緑内障の原因として考えられている。

喪失した視神経の回復は出来ないが、視神経を再生する研究も行われている[3](後述の#根本医療を参照)。
原因正常な眼底病変をきたした視神経乳頭の例

緑内障の定義は「視神経変化・特徴的視野変化を有し、眼圧下降により進行を防止できる病気」である。何らかの原因により視神経乳頭内の篩状板が変形し、その中を通過する視神経線維が物理的に圧迫されると逆行性軸索輸送による神経栄養因子の輸送が阻害されて神経節細胞が死滅する。視神経線維の脱落に伴い、その部分に該当する網膜の感度低下から視野欠損が起こり、病気の進行に伴い視神経乳頭の変形と視野異常が進行する。

視神経乳頭が変形・陥没していく原因はいまだ明らかではないが、眼圧の物理的圧迫によるという眼圧説 (機械説) や、正常眼圧緑内障患者に片頭痛レイノー現象が多いことから視神経乳頭部の血流異常が関与しているという血流説、緑内障を引き起こす遺伝子異常がいくつか報告されていることから視神経の脆弱性が緑内障の発症に関わっているという説などが提唱されている。その他にも、自己免疫疾患の関与、アルツハイマー病パーキンソン病などの神経変性疾患との関与、ヘリコバクター・ピロリ感染と緑内障の関与なども報告されている。また緑内障患者は脳脊髄圧が低いという報告がある。現在のところ緑内障治療に有効なエビデンスは眼圧下降のみである。

2011年、大阪大学大学院医学系研究科の山下俊英らは、マウス実験において神経細胞の軸索中に存在する軸索の再生を阻害する因子と結合するPIR-Bたんぱく質の働きを分析し、神経細胞の軸索の再生を妨げるメカニズムを明らかにしたと発表した[4]。神経節細胞の破壊メカニズムの解明により視神経の損傷に対する新たな分子標的治療薬の開発につながる可能性がある。

2015年8月、福井大学の稲谷大らの研究チームは、眼圧の高いマウスの視神経においてミトコンドリアの輸送が止まる状態をレーザー顕微鏡で確認し、これまで解剖から栄養の輸送が止まると推測されていた現象を生体で実際に確認することに成功した[5]
グルタミン酸ナトリウム原因説

2002年、弘前大学の研究グループは化学調味料として広く使われているグルタミン酸ナトリウムを過剰摂取させたマウスにおいて網膜ニューロン層の厚さが著しく薄くなっていることを認め、これと正常のマウス群と比較し統計的な有意差を確認している。同チームによれば日本において正常圧緑内障が多い原因が、日本の食生活においてグルタミン酸ナトリウムを多く摂取していることが原因であることを推測している[6][7]。詳細は「グルタミン酸ナトリウム」および「味の素#害性・安全性」を参照

なお現在国内では食品添加物表示では「グルタミン酸ナトリウム」との直接表示を避け「調味料アミノ酸等)」という表記で代替されている場合が多いので、成分確認の際は注意が必要である[8]
禁忌薬

抗コリン作用を示す薬剤については服用に際して慎重になる必要がある[9]。例えば下痢止めに用いられる鎮けい薬「正露丸」においては製薬会社の異なる類似の商標で、緑内障に対し副作用を示すロートエキス[10] を成分とする製品とそうでない製品が販売されている[11]。詳細は「正露丸#成分」を参照
禁忌

ニコチンは、血管を収縮させ視神経の栄養障害を起こして病状を悪化させるため、喫煙は禁忌とされる。
疫学2004年の100,000人あたりの緑内障の障害調整生命年 (DALY)[12] .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  情報なし   20未満   20-43   43-66   66-89   89-112   112-135   135-158   158-181   181-204   204-227   227-250   250以上

日本では、以前は40歳以上の人の30人に1人が罹患しているといわれていたが (1988年、1989年)、2000年の疫学調査からは40歳以上の17人に1人、2003年の疫学調査からは40歳以上の20人に1人が罹患しているという結果が報告されている[13] (日本緑内障学会 2000年、2004年)。有病率は年齢とともに上昇し、40歳代では2 %であるが70歳代になると10 %を超える (2004年)。日本国内で治療中の患者は約30万人 (2002年の厚生労働省患者調査)。潜在患者数は400万人ともいわれる (2000年)。
緑内障発症の危険因子として明らかなもの[14]


加齢

眼圧

緑内障の家族歴

発症者の傾向


近視遠視

薄い角膜

乳頭出血を有する

低血圧

糖尿病

緑内障を合併しやすい病態・疾患


高血圧

甲状腺機能亢進症

偏頭痛

落屑症候群

小眼球症

ただし糖尿病に関しては緑内障に保護的に働くとの報告もあり、緑内障専門医間でも議論が分かれる[15]
喫煙、アルコール摂取、カフェイン摂取と緑内障が関係しているという明らかな報告はない。


喫煙習慣[16]

アルコール摂取[17]

カフェインの摂取[18](ただしカフェインの摂取後約2時間程度、約2 mmHgの眼圧上昇が生じるとされる)

疫学的傾向


短命(心血管イベントによる死亡率は対照群と比較し有意に高値)[19]。その後、緑内障は、死亡率に影響を与えないというメタ解析の結果が報告されている[20]


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:70 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef