総合火力演習
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観客の前で120mm戦車砲の射撃を行う10式戦車(2013年)

富士総合火力演習(ふじそうごうかりょくえんしゅう)は、陸上自衛隊演習の一つ。静岡県御殿場市東富士演習場畑岡地区で実施される。略して総火演(そうかえん)とも呼ばれる。防衛省による英語訳は「Fuji Firepower Review[1]」、陸上自衛隊では「Fuji Firepower Exercise[2]」と表記している。また、「Fuji Firepower Demonstration[3][4]」と呼ばれることもある。

陸上自衛隊富士学校の学生に火力戦闘の様相を認識させる目的で1961年昭和36年)から開始された。1966年(昭和41年)以降は自衛隊に対する国民の理解を深める目的で一般公開を行い、その規模は国内最大の実弾射撃演習と言われている[5]。当初は「総合展示演習」という名称だったが、1972年(昭和47年)に「総合火力演習」と改称され現在に至っている。
実施目的

隊員の育成や部隊戦技の向上、日本国民への広報を目的に行われるが、諸外国に対して軍事プレゼンスを誇示する示威活動としての側面もあり、在日米軍[3]や周辺各国の駐在武官等も招待され、国外向けに英語の解説記事も公開されている[1]
実施状況会場の準備作業を行う陸自隊員

訓練そのものは7月から準備を始めて、8月にほぼ1ヶ月かけて行われている。その後、展示演習が8月下旬ないし9月上旬ころに数度行われる。富士学校主催の一般非公開の演習(団予行、学校予行、教育演習)と、陸上幕僚監部主催の一般公開の演習(公開演習)があるが、本来の目的は前者であるので、公開演習は陸上自衛隊の広報活動の一環といえる(公開演習の主催が陸幕となっているのはこのため)。なお学校予行・教育演習日などの夜には夜間演習も行われる。

公開演習には防衛大臣が臨席することもある。また、在日米軍関係者や外国の駐在武官といった軍関係者の他、自衛隊員の家族も招待されている[6]。平成15年度においては、つんく長嶋茂雄など軍や国賓以外で名声のある人が招待されている。滅多に目にすることができない実弾射撃などを目の前で見られることで人気があり、平成26年度の来場者数は約2万9,000人である。YouTubeを始めとする動画投稿サイト衛星放送を介した生中継も行われている。

2020年令和2年)度は、東京オリンピック・パラリンピックや夏における災害対応から同年5月24日に繰り上げ実施された[7][8]。ただし、新型コロナウイルス感染症の流行を鑑み、一般公開は中止してインターネット配信のみ実施、観覧は静岡県の部隊・学校等に限定、参加部隊も富士教導団以外では第1施設団の10名のみ、という異例の措置が取られた[9]。さらに21・22年度も同様。

2023年(令和5年)度以降もインターネットによるライブ配信を継続し、観客を入れての一般公開を行わないことを同年3月31日に発表した[8]
展示演習演習開催会場である東富士演習場畑岡地区から見た富士山。この様に快晴なのは希である。観客の眼前で射撃が行われる各種ヘリの射撃も展示される99式自走155mmりゅう弾砲中距離多目的誘導弾UH-60JAによる先遣小隊の降下(手前)とそれを援護するAH-64D(奥)フィナーレにおける煙幕の一斉展開

戦闘車両や火砲などによる実弾射撃(実弾の他に演習弾も使用)や、航空自衛隊戦闘機による対地爆撃(安全上、地上設置の爆薬による模擬爆撃で実弾投下は行わない)、輸送機からの空挺降下やヘリコプターからのヘリボーンなどが実演される。前述のように広報と示威の目的もあるため多少ショーアップされた演目もある。

射撃は観覧席前の演習展示地域から北西方向(富士山方向)に設定された複数の目標地域に向けて行われ、一部装備については安全上の理由等により遠隔地から発射を行う。車載機銃小銃等の排莢口(薬莢蹴出窓)には通常の射撃訓練と同じく薬莢受けが取り付けられる。


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