緋色の研究
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緋色の研究
著者コナン・ドイル
発表年1887年
出典緋色の研究
依頼者グレグスン警部
発生年1881年以後[1](1881年?)
事件イーノック・J・ドレッバー殺人事件
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『緋色の研究』が掲載された「ビートンのクリスマス年鑑

『緋色の研究』(ひいろのけんきゅう、: A Study in Scarlet)は、アーサー・コナン・ドイルによる長編小説シャーロック・ホームズシリーズの最初の作品で[2](時系列ではのちに発表される「グロリア・スコット号」が最も古い事件)、1886年に執筆され、翌1887年に発表された。

ホームズワトスンの出会いと、その後起こる殺人事件を描く。事件の捜査が行われる第1部「医学博士、元陸軍軍医ジョン・H・ワトスンの回想録の翻刻」と、犯行に至った歴史が導かれる第2部(無題)の2部構成を採る。
主な登場人物
第一部
イーノック・J・ドレッバー
[3]
洒落た身なりのアメリカ人旅行客。空き家で外傷の無い遺体が発見される。色がなまっちろい。
ジョゼフ・スタンガスン
ドレッバーの秘書。彼よりは幾分か年上。首がずんぐりと太く短い。
ランス巡査
地域担当の警察官。遺体の最初の発見者。
レストレード警部
いたちに似た風貌のスコットランドヤード所属の刑事。
グレグソン
レストレードのライバル刑事。
ジェファスン・ホープ
辻馬車の御者。
ジョン・H・ワトソン
物語の語り手。ホームズ物語の記述者で彼の相棒。
スタンフォード医師
かつてワトソンの手術助手を務めていた青年。ホームズとのシェアハウスを持ち掛ける。
シャーロック・ホームズ
主人公の名探偵。
第二部
ジョン・フェリア
モルモン教徒に援けられた遭難者。
ルーシー・フェリア
ジョンの養女。ジョンとともに援けられる。成長して魅力的な娘になる。
ジェファスン・ホープ
ルーシーの婚約者。第一部のホープ御者が若かったころの姿。
ブリガム・ヤング
モルモン教徒の指導者。
あらすじ
第1部

第1部はワトソンの回想の形で始まる。

医学博士ジョン・H・ワトスンはイギリス軍軍医としてアフガニスタンの戦場に赴くが、左肩に重傷を負い(後の作品では部位が脚に変わっていて、ホームズシリーズの謎の一つ)、イギリスに送還された。為す事もなく過ごしていると、かつて助手をしていた男からシャーロック・ホームズという特異な人物を紹介され、ベーカー街221Bで共同生活を開始する。初対面にもかかわらず、ワトスンが負傷してアフガニスタンから帰ってきたことや、見知らぬ男の前歴を言い当てたホームズの観察力と推理力は、ワトスンを驚かせる(岩波少年文庫版「冒険」に記されている「ホームズからの挨拶―初めてホームズの物語を読む人のために―」にも述べられている)。

共同生活を始めて間もなく、ホームズの元にスコットランド・ヤードのグレグスン刑事から殺人事件が発生したとの手紙が届き、ホームズはワトスンを連れて現場に向かう。そこは空き家であったが、巡回中の巡査が部屋に明かりがついていることを不思議に思い、中に入ってみたところ死体を発見したのである。グレグスンとレストレード刑事は難事件にお手上げの様子である。殺されていたのは立派な服装の中年男で、イーノック・ドレッバーの名刺を持っており、壁には RACHE (ラッヘ:ドイツ語で復讐の意)と血で書かれた文字があって、女の結婚指輪が落ちていた。

ホームズは綿密な現場検証をして、被害者が毒殺されたことや犯人の人相・特徴を推理し、第一発見者の巡査に事情聴取をしたりと、次々に捜査を進めた上、新聞に結婚指輪の拾得記事を出す。指輪を使って犯人をおびき出そうというのだ。予想通り指輪の受取人が来るが、ホームズが推理した赤ら顔の大男ではなく、老婆であった。しかもその老婆を尾行したホームズは見事に巻かれてしまう。

一方グレグスンは、ついに犯人を逮捕したと得意満面であった。彼が捕らえたのは、ドレッバーが秘書のスタンガスンと共に下宿していた家の女主人の息子である海軍将校だった。事件前日、ドレッバーがそこを引き払う際にその家の娘を無理やり連れ出そうとし、兄であった海軍将校に叩き出された事実があったのだ。それが犯行の動機だとグレグスンはホームズに言うが、続いてやって来たレストレイドが、秘書のスタンガスンが宿泊先のホテルで刺殺死体で発見されたと伝える。

ホームズは、準備万端整えた上で辻馬車を呼ぶ。何事かといぶかしむワトスン、グレグスン、レストレイドの前で、ホームズは入ってきた馭者にあっという間に手錠をかけ、目を輝かせてこう叫んだ。「諸君! イーノック・ドレッバーおよびジョゼフ・スタンガスン殺害の犯人、ジェファースン・ホープ氏を紹介しましょう!」と。
第2部

第2部は、一転してこの事件の裏に潜む過去の深い因縁が語られる。

北アメリカ内陸部の砂漠。ジョン・フェリアと孤児のルーシーは、道に迷ったうえに食料と水も無く、死に掛けていたところを、ブリガム・ヤングに率いられた移動中のモルモン教徒末日聖徒イエス・キリスト教会の信者)の集団・モルモン開拓者に救われる。彼らはソルトレイクシティ末日聖徒イエス・キリスト教会本部)を建設し、ジョン・フェリアは郊外で一生懸命働き、やがては地域でも屈指の富豪になった。また彼は、ルーシーを養女にして実の娘のようにかわいがった。成長したルーシーは、並ぶ者の無い美しい少女となったのである。

ある日、乗馬していたルーシーは、馬が暴れだしたところを旅の青年ジェファースン・ホープに助けられ、彼の実直さと強さに引かれた。ホープも彼女に好意を持った。父親のジョンは2人の結婚を認めた。ところが、一時的にホープが町を去っているあいだに、モルモン教の指導者ブリガム・ヤングは、ルーシーに青年ドレッバーかスタンガスンとの結婚を命令した(一夫多妻制であった)。指導者に背けば命は無い。ジョンは町からの脱出を決意し、ホープを呼び戻す。見張りに囲まれている家へ、夜のとばりにまぎれて匍匐前進で到着したホープ。彼に導かれて、何とか家から脱け出したジョンとルーシー。土地勘のあるホープの指示によって、人跡未踏の荒野を踏破する。ここまで来れば一安心と、つい気を抜いたホープは、食糧とする獣を捕らえるためにキャンプを離れた。その裏をかくようにドレッバーとスタンガスンの追跡隊が襲い、ジョンを殺害し、ルーシーを奪って去った。無人となったキャンプに戻ったホープは、追跡隊によって作られたジョンの粗末な墓を見つけて事の推移を察する。ジョンを殺害したのはスタンガスンであったが、最終的にルーシーはドレッバーと結婚させられた。しかし意に沿わぬ結婚に体調をくずして程なく病死した。男たちは妻の一人が死んだだけ、と意に介さないなかで、女たちが催した葬儀の場に飛び込んだホープは、ルーシーの指から結婚指輪を抜き取って去った。

それ以後、ドレッバーとスタンガスンは、ホープから執拗に命を狙われる。彼らはソルトレイクシティを離れ、アメリカ国内からヨーロッパを転々としてホープの追跡から逃れる。しかしホープも超人的な執念で彼らを追った。年月がたち、彼らはロンドンに来る。そこでついに件の殺人事件に至ったのであった。下宿を追い出されたドレッバーは辻馬車を拾う。この馬車こそ、ホープが2人を追うために馭者に扮していたものだった。空き家の鍵は、その所有者が家を点検するためにたまたま乗ったとき、鍵型をとっていた。酒好きのドレッバーは、飲み屋をはしごして酔っぱらった。時は至れりと思ったホープは、ドレッバーを空き家の鍵を開けて連れ込み、毒薬の決闘を挑む。彼は自分の復讐を神の手にゆだねたのだ。毒入り丸薬とそうでない丸薬を用意し、両者で同時に飲み込み、毒入りに当った方が死ぬという方法である。そしてホープが勝った。興奮のあまりにホープは、鼻血を出した。例の文字は、その血で書かれたものであり、結婚指輪はその時に落としたのである。スタンガスンが滞在していた宿屋には、ホープは梯子を使って忍び込んだ。スタンガスンにも同じく毒薬を使う方法で挑んだが、彼がいきなり襲いかかって来たため、やむなくナイフで刺殺したのだった。

取り押さえられたホープはおとなしく縛につき、スコットランド・ヤードに連行され、以上のようないきさつをホームズ、ワトスン、刑事たちに語った。そして、長い追跡のため無理を続けて動脈瘤になっていたホープは、起訴を待たずして獄中で病死した。ホープを犯人と見破ったホームズの慧眼にワトスンは敬服し、しかし手柄をグレグスンとレストレイドに横取りされても何も言わない彼を見て、自分がホームズの活躍を記録して世に出そうと決心する(ワトスンの台詞で物語が締めくくられる正典は本作のみである)。
翻案・翻訳の歴史

『A Study in Scarlet』が初めて日本で紹介されたのは、発表から12年後の1899年(明治32年)に『毎日新聞』で連載された『血染の壁』である[4]。訳者は「無名氏」となっていて不明であり、内容を日本に移した翻案だった。


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