続巷説百物語
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続巷説百物語
著者
京極夏彦
発行日2001年5月31日
発行元角川書店
ジャンル妖怪時代小説
日本
言語日本語
形態四六判
ページ数761
前作巷説百物語
次作後巷説百物語
コードISBN 4-04-873300-1

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巷説百物語シリーズ > 続巷説百物語

『続巷説百物語』(ぞくこうせつひゃくものがたり)は、角川書店から刊行されている京極夏彦の妖怪時代小説。「巷説百物語シリーズ」の第2作で、妖怪マガジン『』の第六号から第拾号に連載された作品を収録している。
概要

時系列的には前作『巷説百物語』の事件の間に起こった物語が収められている。また、各章が独立していた前作とは違って中盤以降の章には連続性があり、それらに含まれる謎が全編にわたって『死神 或は七人みさき』へと繋がっていく。同時に、主要登場人物の過去にまつわる話も存在する。

「語り」を重ねるスタイルだった前作から一人の登場人物(=百介)の固定視点へ変わったため、視点人物の知り得ることしか書けないという形式になっている[1]
主な登場人物

主要登場人物は巷説百物語シリーズを参照。
田所 真兵衛(たどころ しんべえ)
北町奉行所定町廻り同心。矢鱈に顔と顎が長く、眼だけはぎょろぎょろと大きくて、八の字眉毛を奇妙な形にヒン曲げた、一度見たら忘れぬ実に変わったご面相。その上に外見にまるで構わない質の不精者らしく、羽織も皺だらけで着熟しもだらしがなく、髭の当たり方もぞんざいで、鬢も髷もほつれ、粋なはずの着流し姿もどうにもみすぼらしく見えてしまう。役人には珍しいほどの思い切り不器用な正義漢で、不正や腹芸が大嫌いな馬鹿がつく程の正直者。毎日のように義憤に駆られて発奮しており、熱血漢故に冷遇され、定廻りの鼻抓みと言われて奉行所内でも浮いている。普通の町方同心は俸禄こそ低いが大名屋敷に出入りし町衆から袖の下も集まるので、他の下級武士と違って実入りも羽振りも良い洒落者の伊達男と相場が決まっているが、賄賂まかないを激しく嫌い、公務に励むあまり内職をする暇もない、という限度を超えた筋金入りの石部金吉のため、40歳を過ぎて未だ独身で、小物も通いの下働きも飯炊き女も雇えず、住居も八丁堀組屋敷で一番の襤褸屋。唯一の趣味は囲碁を打つこと。百介の兄・軍八郎と熊沢道場のかつての同門で、お互い融通の利かない朴念仁なので馬が合い、今でも昵懇にしていて月に一度は行き来する仲。そのため、彼の弟である百介の話も聞いており、中々の博学だと知っていた。『狐者異』では、3度目に祇右衛門を捕らえた笹森が汚い身態の不逞の族達に拐かされたことを受け、その翌日に生駒屋を訪れて首を繋げて生き返る化け物が存在するのかと百介に訪ね、彼に過去3度行われた祇右衛門の獄門が事実であり、年齢が丁度合い、身体の消せぬ特徴が一致する3人が、全く同じ供述をしていることを伝える。他の役人達が祇右衛門の生存に疑問を抱かないことに頭を悩ませ、不死身の悪党を罰する方法を百介に問い、彼から陀羅尼の呪法を籠めた護符を託される。『死神 或は七人みさき』では、役宅を訪れた百介に、9年前に小右衛門が作った両国の生き人形見世物興行に感化され殺人を犯した下手人を捕らえるも、大名の子息であったため目付大目付からの圧力で釈放せざるを得ず、10日間の蟄居を命じられている間に7人の殺害が達成されてしまったことや、その翌年に下手人は四神党を名乗って徒党を組んで悪行の限りを尽くし、5、6年前に姿を消したことなどを話す。江戸で2年前と4年前に、それぞれ7人が殺害された事件の下手人も同一犯であると疑っていると語る。
平八(へいはち)
二ツ名:誉転ばしの平八(ほめころばし の へいはち)神田鍛冶町に住む貸本屋。丸顔で人の良さそうな童顔。江戸府内ばかりでなく、本が手に入りにくい朱引きの外や近在の諸国まで回って商売をしている。所謂担ぎ屋なので店はないが、得意先を回って所望の本を3日期限で貸し付けるという仕組みのため、品物がすぐに手許に帰って来るので、部屋は在庫の本だらけ。また、錦絵枕絵眼鏡の鞘などを売り物として扱う。書画文物に通暁しているのみならず、顔も広く耳も早い。無類の野次馬でもあり、誉め転ばしの異名を取る程の聞き上手座持ち上手で、人を和ませる技法に長けている。大名屋敷の奥向きや吉原のような町人出入りの叶わぬような場所まで入り込んで商売し、身分性別地方を問わず交流して、様々な珍奇な噂話を善く聞いてくる。『飛縁魔』の前年に世話になっている版元で百介と知り合い、旅先で聞いた多くの珍妙な噂話を聞かせている。『飛縁魔』では、自宅を訪れた百介に、本来は土佐の行き遭い神である筈の七人みさきが北林で起こした祟りの話や、北林領内で起きた白無垢の狐の嫁入りの話などをする。百介が又市達と繋がりを持っていることを旅先の丹後若狭の端境にある北林藩で嗅ぎつけており、話の流れで尾張の廻船問屋の主人・享右衛門が捜している白菊という名の女性を見つけるために又市に渡りをつけてほしいと頼み、彼女の足跡を辿って百介と共に泉州を経て尾張へ向かう。『死神 或は七人みさき』では、百介から北林の祟りに関する情報収集を依頼され、その中で尾張豪商を虜にした白菊と藩主の側女との関連に気づく。その後、北林藩の下屋敷で国許にみさき御前を名乗る亡霊が出たという噂を仕入れて来た。5年前から毎年5月頃に7枚ずつ売り出される笹川芳斎作の世相無残二十八撰相を近習の楠に売っており、百介に江戸と北林で交互に毎年7人ずつ殺される事件が無残絵の見立て遊びであること、下手人一味が藩主を筆頭とする四神党であることの確証を与えた。
東雲 右近(しののめ うこん)
房州浪人。齢は40歳前くらいで精悍な顔つき。勘の鋭い切れ者であり、正直で不正を嫌うが、一途なだけの正義漢ではない。剣の腕も相当立つが、他人に凄みを感じさせず、快活で親しみ易い印象。大変な愛妻家でもある。5年前に藩が取り潰され、金子の蓄えもなく、仕官を推挙してくれる知人縁者もおらず、喰うに困って難渋し、江戸は性に合わず諸国を流れ歩いた。その末に結婚して10年の妻・涼が懐妊し、旅を続けられなくなって若狭の外れにある北林藩に棲み着く。そこで仕官するため、家老の樫村の密命を受けて先代藩主の正室であった楓姫の弟君である志郎丸を探している。『船幽霊』では、北林で横行する辻斬りが、姉の死に憤った志郎丸による犯行ではないかと疑われたことから、大坂を騒がせた辻斬りを追って淡路に入り、事件を調べる中で狸騒動に遭遇する。その後は姉弟の故郷である旧小松代藩を目指して四国へ渡り、自らを追っていた集団が、阿波から讃岐へ抜ける途中の大坂峠で百介とおぎんを襲ったのを見て助けに入った。以降は自らの事情を説明して2人の旅に同道し、遍路姿に身を変えて八十八箇所巡りをしながら土佐を目指しつつ情報を集め、川久保党が住むという物部川の上流へ向かう。その後は船幽霊事件の証言者として1箇月程詮議で高知藩に軟禁され、臨月の妻を心配して急いで北林に帰還する。だが、妻が世話になっていた隣家の娘・るいを殺した下手人を探している間に妻を惨殺され、それらの罪を着せられてしまう。『死神 或は七人みさき』では、再会したおぎんの手引きで領外へ脱出し江戸に逃げて来て、無念と失意を抱えつつ念仏長屋の治平の部屋に潜伏していた。おぎんから時が満ちたと早飛脚で連絡を受け、北林へ出立する前に生駒屋に挨拶に来たところ、一連の殺戮の下手人についての百介の当て推量を偶然耳にしてしまい、彼と共に北林へ急行する。祟りの一夜の後も北林に留まり、樫村を助けて藩の再生に尽力。その時の貢献度を高く評価されて破格の条件で誘われたものの、妻子を亡くした土地で暮らすことに抵抗があったのか、仕官の口を固辞して西へ去り、丹後辺りに向かった後は消息を絶っている。
樫村 兵衛(かしむら ひょうえ)
北林藩家老。温和そうな小作りの顔の小柄な老侍。温厚で思慮深く、忠義に篤い。だが、主君の下命を果たすという武士としての当然の振る舞いのために人としての倫を外れたことがあり、自らの妻を3代藩主・義虎に強引に奪われ、家中の不和に耐えかねて幼い景亘を連れて城から逃げた元妻を、義虎の命令により景亘の目の前で斬り殺した過去を持つ。以来景亘を護ることを固く心に決めたが、自身の浅ましい所業が景亘の人生を狂わせ殺人鬼に変えてしまったと後悔し、その悪行も凡て自分に対する復讐のためだと思っている。領内で横行する辻斬りの下手人が、先代藩主の正室であった楓姫が5年前に天守から身を投じたことを逆恨みした弟の小松代志郎丸ではないかと考えて、仕官を条件に行方知れずの彼を捜し出すよう右近に密命を与えた。『死神 或は七人みさき』では、役宅で夢枕に現れた楓姫の亡霊「みさき御前」から、祟りを鎮めたければ己を祀り、江戸藩邸に詰める藩士から次期藩主を選ぶよう要求される。その時は相手にしなかったが、7日7晩に渡って亡霊が城中に現れたことで祟りが本物だと慌て、目当ての侍を見つけ出して、独断で新たな藩主へ据えようと画策した。母を殺した自分さえ死ねば景亘は満足するだろうと考え、藩主を裏切った責任を取って切腹しようとしていたところで役宅を右近と関わりのある百介に訪問され、一連の事情を知る彼に景亘の過去について語る。『老人火』では、自分を必要としている者達のためにすることが沢山あると又市に諭されたことで、6年間に渡り城代家老として年若い新藩主に代わって幕府や他藩との駆け引きの矢面に立ち、藩の再生に尽力するが、ある時、景亘の幻覚を目にして悶絶して昏倒、譫言のようにその名を呼んでは暴れ、過去の後悔から腹を切らせてくれと願うようになる。乱心したとは言え、常に錯乱している訳ではなく、ものの道理が判らないことも、筋の通らないことを言うようなことも一切なく、会話も出来、考えも確乎りしているのだが、同時に景亘の亡霊も見えており、それが人生で自分のために何も出来なかったことへの無念と未練に因る気の迷いだとの自覚もある。祟りを認めることになるので神仏に頼ることは出来ず、気の迷いであることを自分が承知しているので説得も通用しないので、半年ばかり前に話し合って自宅療養の名目で職務から身を引き、世間的には病に臥せっているとされている。
野鉄砲

8月半ば。兄の軍八郎に呼び出され、武蔵国多摩郡八王子千人町を訪れた百介は、異様な死体を目撃する。死因について意見を求められた百介は、先日知り合った又市のもとへ相談に向かう。(『怪』第六号 掲載)
登場人物
山岡 軍八郎(やまおか ぐんはちろう)
百介の実の兄。
八王子千人同心。貧窮故に父が同心株を手放し浪人となって失意のうちに亡くなった後も地道に精進し、同心株を買い、八王子同心となった。生真面目が取り柄で、質実剛健、正義感が強く如何なる場合も不正を憎み筋を通す。ただ百介の持つ好事家の素質は軍八郎の中にも確実に巣喰っており、田舎同心とは思えぬ通人で、最新の医学事情にも博識。


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