絶縁性
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絶縁体(ぜつえんたい、: insulator)は、電気あるいはを通しにくい性質を持つ物質の総称である。
電気の絶縁体鉄道用のセラミック碍子ポリエチレン絶縁電線3芯の送電ケーブル。それぞれの芯線が異なる色の絶縁体で被覆され、全体を保護用の被覆で覆っている。ビニル被覆無機絶縁ケーブル。芯線は銅で2本ある。同軸ケーブルは誘電性の絶縁体で内部導体と外部導体とを絶縁している。

電気を通しやすい導体電気伝導体)に対して、不導体(ふどうたい)ともいう。自由電子を持たない物。絶縁体が電場中で電気的に分極する性質、誘電性に着目した場合、絶縁体を誘電体ともいう[1]。絶縁体の価電子は原子と強く結合している。そのような物質が電気機器で絶縁物として使われ、電気伝導体を支持しつつそれ自体には電気が流れないようになっている。電柱鉄塔電線をとりつける碍子も絶縁物の一種である。

ガラステフロンといった材料はよい絶縁物である。電気抵抗率で比較するとさらに抵抗が大きい絶縁物があり、電線や電気配線の絶縁に使われている。例えば、ゴム状の重合体や多くのプラスチックである。そのような材料は低電圧や中程度の電圧(数百から数千ボルトまで)の実用的かつ安全な絶縁物として使用できる。
固体における電気伝導の物理学

絶縁体には電流が流れない。バンド理論において絶縁体は、半導体と同じく価電子帯伝導帯の間にバンドギャップが存在する状態、またはその状態を示す物質である。金属などの電気伝導体では電子が励起して伝導帯に遷移することで電流が流れる。バンドギャップのためにそのような状態とならない物質が絶縁体である。半導体よりバンドギャップの値が大きいものが絶縁体でありその間に歴とした境界はない(モット絶縁体のような例外もある)。

絶縁は、電子に占有された最もエネルギー準位の高い価電子帯からその上にある次のバンド(伝導帯)までが大きなエネルギーギャップで隔てられているために起きる。ある十分に高い電圧(絶縁破壊電圧)がかかると、電子が伝導帯まで励起するのに十分なエネルギーが与えられる。一度この電圧を越えると、その材質は絶縁体であることをやめ、電荷が流れるようになる。しかし、そうなったときは一般に物理的または化学的に変化し、その材料の絶縁性は恒久的に損なわれる。

絶縁体には共有結合性やイオン結合性の強い物質に多い。ただし例外としてグラファイトは、層内の結合は強い共有結合であっても半金属である。電解液プラズマのようにイオンを含む液体や気体では電子ではなくイオンが電荷を担うため、伝導体となる。
絶縁破壊

絶縁体は絶縁破壊という現象で損傷を受ける。絶縁物に電界を印加したとき、その物体の(バンドギャップエネルギーに比例する)しきい値を超えると、その絶縁体は電気抵抗を伴う抵抗器となり、破壊的な結果を伴うこともある。絶縁破壊の際、自由な電荷担体が強い電場によって加速され、それが衝突した原子をイオン化して電子を飛び出させるのに十分な速度となる。そのようにして自由になった電子とイオンも加速し別の原子に衝突するので、さらに電荷担体が生み出されるという連鎖反応電子雪崩)が起きる。こうして絶縁体は瞬時に電荷担体で満たされ、電気抵抗値が低下する。空気における絶縁破壊はコロナ放電やアーク放電といった放電現象を伴う。 同様の絶縁破壊は任意の絶縁体に起こりうる。真空でも放電現象は起きるが、それは金属電極から電荷が放出されることによるもので、真空自体が電荷を生み出しているわけではない。
用途

絶縁体は、電気配線やケーブルの柔軟な被覆によく使われている。また、空気も絶縁体なので、それを絶縁に利用することもある。高圧送電線はプラスチックなどのコーティングが現実的でないため、主に空気だけを絶縁に利用している。電線が互いに触れると短絡や火災の危険を生じる。同軸ケーブルの中心にある内部導体は中空の外部導体のちょうど真ん中になるよう絶縁体で支持されており、電磁波の反射を防いでいる。@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}60[要出典]ボルト[2]以上の電圧がかかっている電線は感電によって人が死亡する危険性をはらんでいる。絶縁体をコーティングすることでそういった問題を防ぐことに役立っている。

被覆電線/ケーブルには電圧と温度の定格が存在する。アンペア容量は、その電線やケーブルが使用される環境に依存するので、定格化されていない。

プリント基板エポキシ樹脂やファイバーグラスで出来ており、そういった絶縁体の板が銅の導体の層を支持している。電子部品にも絶縁体のエポキシ樹脂フェノール樹脂で封入したものやガラスやセラミックでコーティングしたものもある。

トランジスタ集積回路などの半導体素子では、シリコンはドーピングによって導電性があるが、熱と酸素を加えることで部分的によい絶縁体とすることもできる。酸化したシリコンは石英すなわち二酸化ケイ素である。


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