統計会計機
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パンチカードシステム(英語: Unit record equipmentまたはPunched card system、略称:PCS)は電子計算機が登場する以前に、パンチカードを利用してデータ処理を行った際に使われた機器の総称で、カード穿孔機(キーパンチ)、分類機(ソーター)、会計機(タビュレーター)などがあった。
概要IBM 407会計機(レッドストーン兵器廠で、1961年)

電子計算機の発明以前、データ処理はタビュレーティングマシンの進化したパンチカードシステム(Punch Card System、PCS)と呼ばれる電気機械式機器で行われるようになった。和製英語だという主張もあるようだが、英語圏での使用例もある[1]英語圏ではユニットレコード装置(Unit Record Equipment)、電気会計機(Electric Accounting Machine、EAM)などとも呼ぶ。

ユニットレコードとは、19世紀末から20世紀初頭にかけて使われた、1つの文書上のオブジェクトや処理に関する全情報の記録を指した言葉である。例えば、図書館の索引カードはユニットレコードの一例である。ユニットレコード用の机も製造されており、パンチカードなどで記録されたユニットレコードを格納しておく机を tub file と呼んだ。当時(1888年)の書籍には「我々は鉄道用のあらゆる車両や機関車についての記録をパンチカードまたは他のユニットレコードの形で保持しており、それらは Car Accountant's Office または他の手段で作成された」という記述も見られる[2]。ここから、パンチカードはユニットレコードの一種だが、ユニットレコードの方が幅広い意味を持つことがわかる。Markus Krajewski はこのユニットレコードの概念を発展させた人物を書誌学者のコンラート・ゲスナーだとしている[3]

20世紀後半にコンピュータが担った役割を20世紀前半ではPCSが産業界や政府関連で果たしたのである。データ処理はパンチカードのデッキ(束)を入力として様々な機器を連結してなされた。機器間のカードデッキのフロー(流れ)は大きな紙に標準化されたシンボルを使って記述され[4]、そのような図を今ではフローチャートと呼ぶ[5]。各機器はパンチカードを高速に処理するための機械式フィーダーを備えており、毎分百枚から2千枚のカードを送り込み、電気的センサーか光センサーで穴の位置を調べる。多くの機器の動作は着脱可能なプラグボードを使って指定できる。初期の機器は電気機械式のカウンターと継電器を使って構築されていた。電子部品は1940年代後半から導入され始めた。

PCSの最大の供給業者はIBMである。以下では主にIBMのPCS各機器について解説する。
各機器
パンチカードとキーパンチIBM 029 キーパンチ詳細は「パンチカード」および「キーパンチ」を参照

基本データ単位は80桁のパンチカードである。各桁は一つの数字、文字、特殊記号などを表している。データ値は隣接する複数の桁による「フィールド」から構成される。例えば、社員番号5桁、時給レート3桁、ある週の実働時間2桁、部門番号3桁、プロジェクト課金コード6桁というふうに並んでいる。

元のデータはキーパンチと呼ばれる機械を使って人手で入力された。キーパンチにはタイプライター状のキーボードと未入力のカードと入力済みカードが置かれるホッパーで構成される。後にはカードにパンチした内容がカード上端に印字されるようになった(IBM 026 など)。場合によってはパンチされたカードは次の「検孔機 verifier」と呼ばれるキーパンチによく似た機械に送られる。検孔機の操作者はキーパンチと同じ内容を入力し、検孔機内部でそれがパンチ済みの内容と合っているかチェックする。問題なければ、カードの右端に小さなポッチがパンチされる。
分類機IBM 082 ソータ「en:IBM card sorter」を参照

PCSの主要な機能のひとつはパンチされたデータに従ってパンチカードのデッキを適切な順に分類ソート)することである。同じデッキでも処理手順によって異なったソートをすることがある。IBM 80シリーズのようなソータは、ひとつの入力デッキを指定された桁の内容に従って13個の出力デッキに振り分ける。なお、13番目のデッキ格納場所は指定された桁に情報がパンチされていないカードやリジェクトされたカードのためのものである。ソートアルゴリズムとしては基数ソートバケットソート、あるいはそれらの組み合わせが使われた。

データ処理業務は毎日バッチ形式で一括処理するのが一般的であった。一日の業務でパンチされたカードをソートしてからマスターデッキにマージし、その後作表処理が行われる。
作表機・会計機詳細は「作表機」を参照

リポートや集計は作表機(別名:会計機、例えば IBM 407会計機)で行われる。ソートされたデッキを供給すると、作表機が各カードの内容をそれぞれ一行で印字したり、指定されたフィールドの値が内蔵のカウンターに加算され、特殊なパンチ穴のあるマスターカードを検出するとカウンターの値を合計値として小計・総計を印字する。

後にプラグボードによるプログラムが可能となり、ひとつのカードのふたつのフィールドの値を入力として乗算なども行えるようになった。また、その計算結果を同じカードの所定のフィールドにパンチして記録することもできるようになった。
自動カードパンチ機IBM 519 集団穿孔機

集団穿孔機 (Gang Punch) - 多数のカードに同じ内容を一度にパンチする機械

複製穿孔機 (Reproducing Punch) - 入力されたカードデッキと同じ内容のカードデッキを作成する(あるいは指定されたフィールドだけをコピーする)機械。例えば給与計算用のカードデッキから実働時間と給料のフィールドを除いた複製を作ることで次の月の給与計算に使うことができる。プログラマはバックアップを作るためにこの機械を使った。

合計穿孔機 (Summary Punch) - タビュレーティングマシンに連結し、集計結果をカードにパンチして別の用途に使えるようにしたもの。

マークセンスリーダ - いわゆるマークシートを読み取って、その内容をパンチカードにパンチする機械[6]

後の集団穿孔機(IBM 519 など)はこれら全ての操作を実行することができた。
さん孔テープとの連携

IBM 046 Tape-to-Card Punch と IBM 047 Tape-to-Card Printing Punch(印字機能の有無以外には違いはない)は、さん孔テープから読み取ってパンチカードに穴を開けることでデータを複写する。IBM 063 Card-Controlled Tape Punch は逆にパンチカードを読み取ってそのデータをさん孔テープに穴を開けることで複写する[7]
特殊用途の機器


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