日本
統合幕僚長
Chief of Staff, Joint Staff
統合幕僚長旗
現職者
陸将・吉田圭秀(第7代)
就任日 2023年(令和5年)3月30日
組織行政府
防衛省
種類自衛官
所属機関統合幕僚監部
任命防衛大臣
初代就任先崎一
(第26代統合幕僚会議議長)
創設2006年(平成18年)3月27日
ウェブサイト防衛省・自衛隊
統合幕僚長(とうごうばくりょうちょう、英: Chief of Staff, Joint Staff)は、統合幕僚監部の長であり、自衛官の最高位者[1]。階級は陸将、海将または空将のいずれか[2]で、陸上幕僚長、海上幕僚長または航空幕僚長の中から持ち回りで選出されるが、元の陸上幕僚長・海上幕僚長・航空幕僚長とは兼任せず、それらの職の後職として任命される。警察庁長官及び各省事務次官と同等の政令指定職8号。 外国軍における統合参謀総長かつ統合軍司令官の役割も併せ持つ。また、アメリカ統合参謀本部議長のカウンターパートの役割も果たす。陸海空自衛隊の運用に関し一元的に防衛大臣を補佐し、統合幕僚監部の所掌事務[3]に係る大臣の指揮命令は、全て統合幕僚長を通じて行う(統合幕僚監部の所掌事務に係らないものは、従来通り、陸海空各幕僚長を通じて行う)[4][5]。有事の際には、フォースプロバイダー(練度管理責任者)の陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長から提供された各部隊を、自衛官最高位のフォースユーザー(事態対処責任者)として運用し、陸自の陸上総隊司令官や方面総監、海自の自衛艦隊司令官や地方総監、空自の航空総隊司令官に大臣の命令を執行することになる[6][7][8]。法形式上は、防衛大臣が指揮命令をし、統合幕僚長は大臣の補佐及び命令の執行をするが、実質上は統合幕僚長の指揮と言える[9]。また、統合幕僚長は職務を行うにあたり、陸海空各幕僚長に対し、必要な措置をとらせることができる[6]。 階級章は、陸海空各幕僚長たる将と同じ4つ星[注 1]で、旧軍や諸外国軍における大将相当官とされ、左胸(ポケット)には統合幕僚長の身分を示す統合幕僚長章を着用する[10]。この統合幕僚長章はかつては統合幕僚会議議長章であり、1962年(昭和37年)12月1日に4つ星が制定された際、陸海空各幕僚長が左胸に着けていた幕僚長の身分を示す幕僚長章が廃止されたのに対し、本章は初代統幕議長以来、連綿と受け継がれている。 統合幕僚監部の設立までは、統合幕僚会議の長として統合幕僚会議議長(とうごう-ばくりょう-かいぎ-ぎちょう)、略して統幕議長(とうばくぎちょう)が置かれていた。 三自衛隊の統合運用の重要性が増してきたことを受けて、2006年(平成18年)3月27日に「統合幕僚会議」および「同事務局」が「統合幕僚監部」に改編され、統合幕僚会議議長も統合幕僚長となった。それまでは陸・海・空の各自衛隊ごとの運用が基本とされ、統合幕僚会議議長は主に三自衛隊の調整役としての役割をもち、部隊指揮においては陸・海・空の2つ以上の自衛隊が統合部隊を編制したときにのみそれを担っていたが、統合幕僚長への変更に伴って三自衛隊の統合運用が基本となり、常時三自衛隊を統合運用する最高のフォースユーザーとしての立場が明確化された[8][11]。最後の統合幕僚会議議長は、2004年(平成16年)8月30日に就任した先崎一陸将である。なお、統合幕僚長・統合幕僚会議議長ともに自衛官の最上位であるため、退任すなわち退官となる。退官に際しては、皇居への参内と園遊会への招待を受けることが慣例となっている。 部隊運用 防衛大臣 統合幕僚長の権限[6][12][7][5]統合幕僚長陸海空各幕僚長 近年、統合幕僚長は文民の最高司令官であるアメリカ合衆国大統領と国防長官の最高軍事補佐機関であるスタッフとしての統合参謀本部議長の職務と、最高司令官の命令を武官として最高の立場で指揮するラインとしての統合軍司令官の機能を併存させているため、大規模災害や有事の際に、内閣総理大臣や防衛大臣への補佐と各部隊への指揮という2つの任務に忙殺され対応できない可能性も指摘されている。そこで統合幕僚監部から隷下の運用部を切り離すなどして、新たに統合幕僚監部とは別の常設の「統合司令部」を創設して「統合司令官」のポストを新設して部隊運用に専念させ、統合幕僚長を大臣補佐に専念させる構想が浮上している[13][14][15]。 2022年6月6日、中国の海洋進出により台湾有事の可能性が高まっていること、宇宙・サイバー・電磁波などの安全保障の新領域へ対応するために、新たに統合司令部を創設して新設する統合司令官を部隊運用に専念させることへの本格的な検討に入ったと報じられた[16]。 そして2022年12月16日に閣議決定された防衛力整備計画(旧・中期防衛力整備計画)において、常設の統合司令部が設立される方針が示された[17]。報道によれば規模は400人程度(ただし、設立当初は240人程度)とされ、令和6年度(2024年)中の設立を目指して調整しているとされている。設置場所としては、陸海空の各自衛隊がそれぞれの拠点の近くに統合司令部を置きたいという狙いもあって、陸上総隊司令部が置かれる朝霞駐屯地や、航空総隊司令部や在日米軍司令部がある横田基地、自衛艦隊司令部や米海軍第7艦隊の事実上の母港である横須賀海軍施設がある横須賀基地を候補地とする見方もあったが[18]、市ヶ谷に置かれる方針が決定している。 2024年5月10日、統合作戦司令部や統合作戦司令官の設置を盛り込んだ防衛省設置法等の一部を改正する法律が成立した[19]。2025年3月末までに統合作戦司令官が設置されることに伴い、統合幕僚長の職務から部隊の指揮権限が分離し、防衛大臣や内閣総理大臣の補佐に専念することになる。 陸将・海将・空将たる自衛官は60歳を以て定年退官となるが、統合幕僚長たる陸将、海将、または空将の定年は62歳となっている[20]。陸将・海将・空将の定年を超えて統合幕僚長の職位にある自衛官が統合幕僚長の職務を辞任したり、解任された場合はその時点で定年に達したものと見做され自動的に定年退官となる。 日本の叙勲制度では70歳以上が授与対象者となっており、従来は原則として統合幕僚会議議長経験者には瑞宝重光章(旧勲二等瑞宝章)が授与されていたが、内閣総理大臣安倍晋三の「高い士気と誇りを持って任務を遂行できるようにしなければならない。今後も自衛隊員に対し、任務にふさわしい名誉や処遇が与えられるよう不断に検討する」との方針で、2014年から統合幕僚長(旧統合幕僚会議議長)経験者には70歳に達した後に瑞宝大綬章(旧勲一等瑞宝章)が授与されるようになった[21]。 歴代の統合幕僚会議議長及び統合幕僚長(将たる自衛官)代写真階級氏名在任期間出身校・期前職備考
概要
防衛大臣からの指揮監督系統[7]
統合幕僚長 部隊運用以外
陸海空各幕僚長
統合任務部隊指揮官
陸上総隊司令官等
自衛艦隊司令官等
航空総隊司令官等
防衛大臣の補佐自衛隊の運用に関して軍事専門的観点
からの補佐を一元的に行う各自衛隊の隊務(運用を除く)に関する
専門的助言を行う
部隊への権限フォースユーザーフォースプロバイダー
対象となる部隊3自衛隊・共同の部隊・統合任務部隊各自衛隊
統合作戦司令官新設による統合幕僚長の職務変更詳細は「統合作戦司令部」を参照
定年
叙勲
歴代の統合幕僚会議議長及び統合幕僚長
統合幕僚会議議長
01陸将林敬三1954.07.01 - 1964.08.13東京帝国大学
昭和4年卒第一幕僚長内務官僚出身
02海将杉江一三1964.08.14 - 1966.04.29海兵56期・
海大37期海上幕僚長
03陸将天野良英1966.04.30 - 1967.11.14陸士43期・
陸大52期陸上幕僚長
04空将牟田弘國1967.11.15 - 1969.06.30陸士43期航空幕僚長
05海将板谷隆一1969.07.01 - 1971.06.30海兵60期海上幕僚長
06陸将衣笠駿雄1971.07.01 - 1973.01.31陸士48期・
陸大55期陸上幕僚長
07陸将中村龍平1973.02.01 - 1974.06.30陸士49期・
陸大56期
08空将白川元春1974.07.01 - 1976.03.15陸航士51期・
陸大58期航空幕僚長
09海将鮫島博一1976.03.16 - 1977.10.19海兵66期海上幕僚長
10陸将栗栖弘臣1977.10.20 - 1978.07.27東京帝国大学・
海軍短現10期[注 2]陸上幕僚長超法規発言[注 3]で辞任
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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