結腸がん
[Wikipedia|▼Menu]

大腸癌
胃と直腸と結腸の図
分類および外部参照情報
診療科・
学術分野
腫瘍学
ICD-10C18-C20
ICD-9-CM153.0- ⇒154.1
ICD-OM ⇒8140/3 (95%の事例)
OMIM114500
DiseasesDB2975
MedlinePlus000262
eMedicinemed/413 med/1994 ped/3037
Patient UK大腸癌
KEGG 疾患H00020
テンプレートを表示
S状結腸に発生した腺癌内視鏡検査画像

大腸癌(だいちょうがん、英語: Colorectal cancer[注釈 1]ドイツ語: Kolorektales Karzinom)は、大腸盲腸結腸直腸)に発生する癌腫である[1]肛門管に発生するものを含めることもある。

正式には部位別に盲腸癌(もうちょうがん、Cecum cancer)、結腸癌(けっちょうがん、Colon cancer)、直腸癌(ちょくちょうがん、Rectum cancer)と称される。

徴候や症状には、血便、腸の動きの変化、体重の減少、常時の疲労感などがある[2]目次

1 概要

2 疫学

3 症状

4 危険因子

5 予防の可能性

6 病態

7 病理

8 検査

9 病期

9.1 ステージ分類

9.2 TNM分類

9.3 AJCC病期分類

9.4 大腸癌取り扱い規約による分類

9.5 その他の有名な分類


10 治療

10.1 内視鏡治療

10.2 手術療法

10.3 化学療法

10.4 放射線療法


11 脚注

11.1 注釈

11.2 出典


12 参考文献

13 関連項目

14 外部リンク

概要

ほとんどの結腸直腸癌は老年および生活習慣の要因によるもので、遺伝的疾患による症例はごくわずかである[3][4][5]。他のリスク因子には、食事、肥満喫煙、運動不足などがある[3]。リスクを増大させる食事は赤身肉、加工肉、アルコールなどである[3][6]。他のリスク因子には炎症性腸疾患があり、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む[3]。遺伝性疾患として原因となりえるものは家族性大腸腺腫症遺伝性非ポリポーシス大腸癌であるが、これらは5%未満である[3][4]。典型的には当初はしばしば良性腫瘍であり、ポリープの形をとりえ、時を経てがんとなる[3]

診断は大腸内視鏡検査によって行われ、サンプルを採取することで判別される[2]転移進行を確認するために医用イメージングが行われる[1]。検査の一つであるスクリーニングは結腸直腸癌による死を予防および軽減するのに有効である[7]。スクリーニングは50歳から75歳から始めることが勧められる[7]

世界的には、大腸癌はがんの中で3番目に多く、全症例の10%を占めている[8]。2012年には140万人の新たな症例が発生し、694,000人が死亡した[8]。先進国では一般的であり、全症例の65%以上を占める[3]。女性より男性のほうが多く発症する[3]
疫学 2004年における10万人毎の大腸癌による死亡者数(年齢標準化済み)[9] .mw-parser-output .legend{page-break-inside:avoid;break-inside:avoid-column}.mw-parser-output .legend-color{display:inline-block;min-width:1.5em;height:1.5em;margin:1px 0;text-align:center;border:1px solid black;background-color:transparent;color:black}.mw-parser-output .legend-text{}  データなし   2.5人以下   2.5人から5人   5人から7.5人   7.5人から10人   10人から12.5人   12.5人から15人   15人から17.5人   17.5人から20人   20人から22.5人   22.5人から25人   25人から27.5人   27.5人以上

世界では毎年100万人以上の人々が大腸癌を発症する[10]。死者数は1990年には49万人、2010年には約715,000人であった[11]

日本では女性のがんの死亡率の1位、男性では3位を占め、2015年には男性でも2位に上昇すると予想されている[12][13]アメリカ合衆国においては、3番目に多い癌で、癌死の原因として2番目に多く、生涯に大腸癌に罹患する確率は約7%である。日本でも胃癌を追い越し肺癌についで2番目に多くなっている。

日本のがん統計[14]死亡数 (2017年)罹患数 (2014年)
男女男女男女男女
1位大腸乳房大腸
2位大腸大腸
3位大腸膵臓大腸
4位肝臓膵臓前立腺乳房
5位膵臓乳房肝臓肝臓子宮前立腺

症状

一般に早期大腸癌であれば自覚症状はなく、健康診断人間ドックで発見される。症状が全く現れない場合も少なくない。進行大腸癌でも環周度が1/4以下ならば症状はほとんどない。1/2周を超えると腸内容の通過障害を起こす場合がある。

左側結腸に存在すると便通異常、腹痛、腹部膨満感などがあり、血便を伴うこともある。しかし、右側結腸ではこれらの症状は乏しく貧血、体重減少、腫瘤触知などの症状となる。これは上行結腸では内容物がまだ液体であるからであると説明されている。左側結腸の全周性病変になると排便困難、便秘イレウスを起こすこともある。
危険因子 各国民の肉の消費量と大腸癌の発生率のグラフ。横軸は1人1日あたりの肉の消費量、縦軸は10万人あたりの患者数。両者には高い相関がある。

以下のものが報告されている。
大腸癌に罹る家系
特に55歳以前の罹患や癌の多発の場合、顕著である。
年齢
大腸癌に進行するリスクは年齢とともに増加する。その多くは60歳代から70歳代で後期がんが発見されるが、早期発見のためには40歳以降は定期的な検診が必要であるとされる[15]
癌の既往歴
卵巣癌子宮癌乳がんに罹患した婦人は、大腸癌に進行するリスクが増大する。
家族性大腸腺腫症(家族性大腸ポリポーシス、Familial adenomatous polyposis;FAP)
全大腸切除を施されない場合はほぼ100%が癌に進行する。
潰瘍性大腸炎(Ulcerative colitis)
長期罹患で寛解がコントロールされていない症例に多く、全大腸切除を施されない場合には25年後でおよそ30%が大腸癌となる。腸内細菌である硫化水素産生菌が産生する硫化水素が潰瘍性大腸炎の原因ではないかとの指摘がある。大腸の粘膜に硫化水素を代謝する酵素が存在するが、その処理量以上の硫化水素に大腸がさらされることが潰瘍性大腸炎の原因となるのではないかとの指摘がされている[16]。硫化水素はミトコンドリアに所在するシトクロムcオキシダーゼを阻害することにより毒性を発現する。高濃度の硫化水素に曝露されることでアポトーシス関連蛋白質であるcaspase3の活性化、ミトコンドリアからのシトクロムcの遊離が見られ、ミトコンドリアを介したアポトーシスが誘導される可能性があると報告されている[17]
遺伝性非ポリポーシス大腸癌(Hereditary nonpolyposis colorectal cancer;HNPCC)
大腸癌や他臓器癌の高リスク群であるため定期的なスクリーニングが推奨される。
過体重・肥満
リスクが高まることが確実視されている。男性で肥満だと大腸癌になりやすい[18]
赤肉、加工肉(ベーコンハムソーセージ
赤肉の摂取と大腸がんのリスクの増加が指摘されている[19]。がん予防10か条(世界がん研究基金)では「肉()を制限し、加工肉(ハム、ベーコン、サラミ燻製肉熟成肉、塩蔵肉)は避ける。獣肉より、鶏肉が推奨される。ゴール:肉は週300g以下に。推奨:赤肉は週500g以下に。」と指摘されている[20]IARC発がん性リスク一覧の発がん性があるとされるグループ1に加工肉が、おそらく発がん性がある2Aに赤身肉が追加されている。
飲酒
確実なリスク。1日平均1合以上の飲酒者は、お酒を飲まない人に比べて、大腸癌になりやすい[21]
喫煙
喫煙は特に直腸癌のリスク上昇となる。たばこを吸う人は、吸わない人に比べて、大腸癌になりやすい[21]
食事バランス
食物繊維をとり、動物性の食肉を減らすと大腸癌のリスクが低減すると言われており、食物繊維の摂取量が少ない(平均約6g)人のリスクが高くなる事は再確認されたが、食物繊維を多く摂取している人の肉食でリスクが高まるかは不明である。臨床的にはバランスの取れた食事は大切であるとされている[22][23]。食物繊維摂取量の非常に少ない人で大腸癌リスクが高くなる可能性があるという報告がある[24]米国国立がん研究所の公開資料によると、「(脂肪に富んだ)大量の肉と大量のカロリーを摂取する人々は、特に大腸がんにおいて、がんの危険が増大することが図より見て取れる。」と指摘している[25]。女性では、欧米型の食生活と大腸癌との関連が示唆されるという報告がある[26]
過剰な胆汁酸
大腸癌患者群では正常な対照群に比して糞便中の一次胆汁酸および二次胆汁酸が高値を示した。また、大腸癌群がリトコール酸デオキシコール酸ケノデオキシコール酸コール酸ウルソデオキシコール酸の糞便中の総胆汁酸量でも高値を示した[27]
マグネシウム
マグネシウム摂取量が多いグループの男性の大腸がんリスクが低いとの報告がある[28]
C-ペプチド
C-ペプチドは、インスリン生成の際、インスリンの前駆体であるプロインスリンから切り放された部分を指す。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:93 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef