組み込みシステム(くみこみシステム、英: embedded system)は、家電製品や産業機器などに搭載された、特定の機能を実現するためのコンピュータシステムの総称である[1]。
概説組み込みシステムの一例一例。en:EFM32
組み込みシステムとは、機械や装置等の特定の機能を実現するために「組み込まれる」コンピュータシステムのたぐいを指すための総称である。産業用機器、医療用機器、家庭用機器等、制御を必要とする多くの製品に用いられている。特定の機能を実現する目的で組み込まれるという点で、PC等の汎用的なシステムと対比される。
小型・軽量、省電力、安定動作・誤動作防止などの要求から専用に設計されるものが多いが、組み込み用途以外の既存の製品のダウンサイジング、もしくは既存の回路ないしコンポーネントを流用・組み立てを行い製品化しているものも近年増えてきている、これはコンピューターや各種電子回路の小型化と信頼性の向上により特定の組み込み用途の要求を満たしたためである。(たとえば動作可能状態の小型PCの基盤、PCとほぼ同じ働きをするPCI拡張ボード型コンピューター、シングルボードコンピュータ、又はワンボードの汎用マイコン回路などに専用に設計されたソフトウエアを導入して制御を必要とする機械に組み込み、制御回路として使う場合など)
組み込みシステムが登場する以前の装置の制御は、制御理論に基づく伝達関数を用いたPID制御などにより主に電気・電子回路がもたらす現象的な電気量や、機械的な機構の組み合わせ等によって直接的に実現していた。これらの制御的機能を、主に専用に設計されたコンピューターシステムとソフトウェアによって行うことで、装置の正確な状態監視、判断、複雑な命令の組み合わせ等が実現できるとともに、機能の追加や変更も容易に行うことができる。組み込みシステムの中でも、例えば、携帯電話やデジタル家電、自動車など多機能なシステムでは、複数のハードウェア、複数のソフトウェアを組み合わせたものとなり、多くの開発人員と開発期間を要し、大規模組み込みシステムなどと呼ばれることがある。
近年におけるマイクロプロセッサの価格の低下、能力の向上などにより組込みシステム導入は広がっている。機能の追加や変更がソフトウェアを書き換えることで可能となるため、電気・電子回路の変更が最小限に押さえられ、コストもおさえられることなどから、広範囲の製品に搭載されるようになっている。 コンピュータ用語辞典などでは、組み込みシステムは「特定の機能を実現するために機械や機器に組み込まれるコンピュータシステム」などといった説明がされている[2]。 「特定の機能を実現するための必要十分条件を満たす、選択や交換の不可能なハードウェアとプログラム(ソフトウェア)で構成されるコンピュータシステム」[3]と定義されることもある。 ハードウェアの構成は汎用のもの、独自のもの、両方を組み合わせたものがある。 ソフトウェアも同様に、汎用のもの、独自のもの、両方を組み合わせたものがある。開発言語としてはC言語が用いられることが多いが、メモリ容量や実行速度等の制約が厳しい用途ではアセンブリ言語が用いられる。メモリ容量等の資源が十分に確保できるシステムではOSも搭載されているものも多い。 ハードウェアとソフトウェアは別々に設計することもあるが、ハードウェアとソフトウェアの機能をお互いに考慮しながら設計する協調設計(コデザイン、co-design)と言う設計手法もある。 組み込みシステムが発達する以前の装置の制御は、アナログ回路、プログラム制御によらないデジタル回路、からくり的な機械的機構といったハードウェアにより構成していたが、新たな機能を追加したり変更したりする場合に、電子回路や機構そのものを変更する必要があり、コストと時間がかかるという問題があった。 1980年代以降のマイクロプロセッサの発達により、コンピュータを用いた制御方式を導入することで、電子機器の回路は変更せず、ソフトウェアの部分のみを変更することで機能の追加が可能になり、機能追加に必要なコストが削減された。 このため、ほとんどの電化製品に組み込みシステムを搭載するようになり、それにより、製品の付加価値となる新機能が比較的容易に追加できるようになり、高機能化・多機能化が進んだ。 家庭用、産業用問わず電子制御を必要とする製品において広く用いられている。以下に例を挙げる。
定義
組み込みシステムの形態
沿革
具体例
家庭用電気機械器具(一般家電製品、デジタル家電)
白物家電等(炊飯器、洗濯機、エア・コンディショナー、ロボット掃除機など)
通信用機器(携帯電話、機能電話、モデム、ルーターなど)
デジタル機器(デジタルカメラ、ビデオカメラ、パソコン用の周辺機器(プリンター、スキャナなど))
AV機器(テレビ、ハードディスク・レコーダー、DVDレコーダーなど)
ホームセキュリティ機器
家庭用ゲーム機
高機能な玩具(愛玩用の動物型ロボットなど)
高機能な教育用機器
一般産業用機器や機械設備類
事務機器(複写機、プリンターなど)
通信機器(法人用携帯電話、機能電話機、ファクス、モデム、TA、ルーター、LAN用機器など)
業務用空調設備、業務用エアコン
生産用機器・設備(産業用ロボット、工作機械、計測機器など)
販売用機器(自動販売機、自動券売機、POSレジ)
現金自動預け払い機(ATM)
広告・展示用装置(展示用装置)
警備・監視用装置(機械警備、中央監視装置など)
遊戯産業用機器(パチンコ機、パチスロ機、スロットマシンなど)
信号機
エレベーターの部分制御(なお基本的な運転制御については制御盤内のPLC等により、より安全性の高い構成としている)
乗り物やそこに搭載する機器
自動車、オートバイのエンジンコントロールユニット(燃料噴射装置を含むエンジンマネジメント)、自動変速機、エアコンなどの制御
カーナビゲーションシステム
鉄道車両(電気機関車、電車、ディーゼル機関車、気動車など)のブロック制御
船舶、航空機、宇宙船、人工衛星
医療機器
バイタルサイン用(自動血圧計、 心電計、 電子体温計など)
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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