紫外線
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UVインデックス(紫外線指数)

紫外線(しがいせん、: ultraviolet)は、波長が10 - 400 nm[注釈 1]、即ち可視光線より短く軟X線より長い不可視光線電磁波である。可視光線の紫色の外側という意味で紫外線という。1960年代(昭和35年)以前の呼び名は菫外線(きんがいせん)とも[1]。また、英語の ultra-violet からUVと省略される。
概要

赤外線が熱的な作用を及ぼすことが多いのに対し、紫外線は化学的な作用が著しい。このことから化学線とも呼ばれる。紫外線の有用な作用として、殺菌消毒・ビタミンDの合成・生体に対しての血行や新陳代謝の促進、あるいは皮膚抵抗力の昂進(こうしん)などがある。

波長による分類として、波長 380–200 nm の近紫外線 (near UV)、波長 200–10 nm の遠紫外線もしくは真空紫外線(far UV (FUV) もしくは vacuum UV (VUV))、波長 121–10 nmの極紫外線もしくは極端紫外線(extreme UV,EUV or XUV)に分けられる。また、人間の健康や環境への影響の観点から、近紫外線をさらに UVA (380–315 nm)、UVB(315–280nm)、UVC (280–200nm) に分けることもある[2]。なお、以上の分類とは別に、IBMのリン博士が用いた深紫外線(Deep-UV、DUV、リン博士の概念では200?300nmの波長域)という概念が用いられることがあり遠紫外線と混同されることがあるが波長域が異なる[3]

太陽光の中には、UVA, UVB, UVCの波長の紫外線が含まれているが、そのうちUVA, UVBはオゾン層を通過し、地表に到達する。UVCは、地球の大気による吸収が著しく、通過することができない。地球の地表に到達する紫外線の99%がUVAである(UVCは、オゾンの反応で生成されるものもある)。

物質の屈折率は、入射した光の波長に依存する。光学部品(光学窓やレンズなど)の素材としてよく用いられるガラスは、紫外線の波長域では吸光係数が著しく増大し、透過率が急激に減少する。このため、ガラスを使った光学部品で、紫外線光を取り扱う事は困難であり、特殊な材料を使用した専用の光学部品が使用される(例えば、石英ガラス[波長 200 nm 以上で使用可]やフッ化カルシウム (CaF2)、フッ化マグネシウム (MgF2)[150 nm 以上で使用可])。

紫外線はガンマ線などの強透過性放射線のような透過力がなく、表面のごく近傍で吸収されてしまうことから、紫外線の照射量は吸収線量ではなく照度(mW/cm2)と積算光量(mJ/cm2)の積で表現される[3]
語源

人間の視覚は、波長の短いを「紫色光」として感じとるが、その下限は 360 - 400 nm 付近とされ、それより波長の短い光は知覚できない。すなわち紫外線である。

英語の ultraviolet も「を超えた」という語から来ている(ラテン語の ultra は、英語の beyond に相当)。

日本語では、紫外線と呼ぶのが一般的であるが、violet をスミレ色とも訳すことから、菫外線(きんがいせん)と呼ばれることもある。菫外線の表記は、紫外線より少ないものの、1960年代以前は学術用語としての用例[1]があるが、1960年代以後の用例[4]は極めて希である[5]
紫外線の波長ごとの特徴
近紫外線 (波長 200–380 nm)

UV-A (波長 315–380 nm)
太陽光線由来のもののうち、5.6%が大気を通過する。冬季及び朝夕でもあまり減衰しない。皮膚の真皮層に作用し蛋白質変性させる。皮膚の弾性を失わせ老化を促進する。細胞の物質交代の進行に関係しており、細胞の機能を活性化させる。また、UV-Bによって生成されたメラニン色素を酸化させて褐色に変化させる。日焼けとしては色素が沈着し皮膚が黒くなる、いわゆるサンタン (suntan)と呼ばれる日焼けを引き起こす。
UV-B (波長 280–315 nm)
太陽光線の由来のもののうち、0.5%が大気を通過する。表皮層に作用し、色素細胞がメラニンを生成し防御反応を取る。これがいわゆる日焼けである。この際ビタミンDを生成する。日焼けとしては皮膚が赤くなり痛む、いわゆるサンバーン (sunburn)と呼ばれる日焼けを引き起こす。なお、こちらの日焼けの場合も最終的には色素の沈着と黒化を引き起こす。
UV-C (波長 200–280 nm)
オゾン層で守られている地表には到達しない[2]。強い殺菌作用があり、生体に対する破壊性が強い。ハロン系物質によりオゾンホールが発生すると、地表に到達して生物相に影響が出ることが懸念されている。
遠紫外線、真空紫外線 (VUV, Vacuum UV) (波長 10–200 nm)
酸素分子や水蒸気分子によって吸収されるため、地表には到達しない。真空中でないと透過しない(窒素分子は 150 nm 程度以上の波長であれば透過する)ため「真空紫外線」 (vacuum ultraviolet)と呼ばれる。
極端紫外線 (波長 10–121 nm)
極紫外線とも呼ばれる。極端紫外線は、物質の電子状態の遷移により放出される。X線との境界はあいまいである。30 nm 近辺の波長は、価電子帯の電子が伝導帯に遷移する際に放出されるのに対し、それより短い波長のものは、内側の核電子のエネルギー状態の変化により放出される。この長波長側の端は、He+によるEUV/XUV放射が 30.4 nm である。波長の短いものはサイクロトロン放射によっても放出される。この領域の紫外線は、X線と分類されることもある。
紫外線の発見

17世紀に、アイザック・ニュートンプリズムを用いて、可視光線からに至る多数の色の光線から成り立っていることを証明したが、その後、この見える光線のほかに、見えない光線が存在すると考えられるようになった。1800年イギリスウィリアム・ハーシェルによって赤外線が発見され、この考えが立証されるとすぐ、ドイツの物理学者ヨハン・ヴィルヘルム・リッターが、スペクトルの反対側である、紫より短いスペクトルを探し始めた。1801年、リッターは光に反応する塩化銀を塗った紙を使用して、紫の外側の目に見えない光を発見した[6]。これは化学光(chemical light)と呼ばれた。その頃、リッターを含めた科学者は、光は「酸化発熱要素」(赤外線)、「照明要素」(可視光)、「水素化還元要素」(紫外線)の三つから構成されていると結論づけていた。スペクトルの他の領域との統合はマセドニオ・メローニアレクサンドル・エドモン・ベクレルらの研究まで分からなかった。その間、紫外線は、「化学線放射 (actinic radiation)」とも呼ばれていた。その後、1893年にドイツのヴィクトール・シューマンによって真空紫外線が発見された。
紫外線による健康への影響

人間が、太陽の紫外線に長時間さらされると、皮膚・免疫系へ急性もしくは慢性の疾患を引き起こす可能性がある。UVCは高エネルギーであるためUVAやUVBよりはるかに危険である。UVCはオゾン層を透過しないため、太陽からのUVCは地上には届かないため過去ほとんど注意が払われていなかった。しかし、人工的に発生された場合200 nmより長波長のUVCは大気を伝播することが可能であり注意が必要である。例えば、250 nm程度のUVCを使用する浸漬型紫外線減菌装置などは装置の外で紫外線光源のスイッチを入れれば被曝の危険性がある。

一方222nmのUVCなど紫外線の波長によっては角質層や角膜の最表層までしか届かないものもあり[7][8]、これらはヒト・動物のいる空間全体に照射したり褥瘡創傷に直接照射することも可能である。[9]チミン二量体の生成によるDNA損傷チミンの光二量体。左:胞子の光生成物。右:シクロブタンピリミジン二量体
皮膚「光老化」も参照

紫外線はたんぱく質を変性させるため、皮膚に紫外線が照射されるとコラーゲン繊維および弾性繊維にダメージを与えて皮膚を加齢させる。


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