素朴集合論
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素朴集合論(そぼくしゅうごうろん、: Naive set theory)は、数学の基礎論で用いられる集合論の一つである[3]形式論理を用いて定義される公理的集合論とは異なり、素朴集合論は非形式的に自然言語で定義される。離散数学で馴染み深い数学的集合の側面(たとえば、 ベン図ブール代数に関する記号の取り扱い)を説明するものであり、現代の数学における集合論の概念を日常的に扱うのに十分なものである[4]

集合は数学において非常に重要である。現代の形式的な扱いでは、ほとんどの数学的対象(関係関数など)は集合の観点から定義される。素朴集合論は多くの目的に十分であると同時に、より形式的な取り扱いへの足がかりとしても有効である。
方法

「素朴集合論」という意味での素朴論は、形式化されていない理論、つまり、自然言語を使用して集合と集合の操作を述べる理論である。かつ (and)、または (or)、もし?ならば (if ... then)、?でない (not)、 ある?に対して(for some)、すべての?に対して (for every) は、通常の数学と同様に扱われる。便利であるため、素朴集合論とその形式主義は、集合論自体のより形式的な設定を含め、より高度な数学でも用いられている。

集合論の最初の発展は素朴集合論であった。19世紀の終わりに、無限集合の研究の一環としてゲオルク・カントールによって構築され[5]ゴットロープ・フレーゲが自身の著書 Grundgesetze der Arithmetik で発展させた。

素朴集合論は、大きく異なる概念を指し示すことがある。たとえば以下のものである。

公理的集合論の非形式的な表現。たとえば、ポール・ハルモスの Naive Set Theoryのようなもの。

カントールの理論およびその他の非形式的システムの初期・後期版。

ラッセルのパラドックスを生み出したフレーゲの理論[6]や、ジュゼッペ・ペアノ[7]リヒャルト・デーデキントの理論など、明らかに矛盾した理論(公理的かどうかにかかわらず)。

パラドックス

任意の性質を用いて、制限なしに集合を構築できるという仮定は、パラドックスにつながる。一般的な例に、ラッセルのパラドックスがある。「自分自身を含まないすべての集合」で構成される集合は存在しない。したがって、素朴集合論を無矛盾なシステムとするためには、集合を構成するために使う原理に対して制限をかける必要がある。
カントールの理論

ゲオルク・カントールの集合論は、実際には集合論のパラドックスと関係ないと考える者もいる(Frapolli1991を参照)。これを確実に判断するのが難しい理由の一つは、カントールがシステムの公理化を行わなかったためである。 1899年までに、カントールは自身の理論の無制限の内包によっていくつかのパラドックス、たとえばカントールのパラドックス[8]ブラリ=フォルティのパラドックス[9]が生じることに気づいていたが、それらが自身の理論の評価を下げるとは思っていなかった[10]。カントールのパラドックスは、実際には上記の(誤った)仮定(任意の性質 P(x) を用いて集合を構成できること)と P(x) =「x は基数」を用いて導出できる。フレーゲは、素朴集合論の形式化された版を解釈できる理論を明示的に公理化した。バートランド・ラッセルがパラドックスを提示したときに実際に取り上げたのはこの形式理論であり、必ずしも(前述の通りパラドックスに気づいていた)カントールの理論ではなかった。もっとも、おそらく念頭に置いていただろう。
公理的理論

公理的集合論は、どの操作がいつ許可されるかを正確に定めることを目的として、集合を理解するこれらの初期の試みに応えて開発された。
無矛盾性

素朴集合論は、考慮できる集合を正しく指定していれば、必ずしも矛盾を生じるわけではない。これは、暗黙の公理である定義によって行うことができる。ハルモスの Naive Set Theory の場合のように、すべての公理を明示的に述べることができるが、これは実際には通常の公理的ツェルメロ=フレンケル集合論の非形式な表現となる。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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