紙(かみ)またはペーパーとは、植物などの繊維を絡ませながら薄く平(たいら)に成形したもの。日本産業規格 (JIS) では、「植物繊維その他の繊維を膠着させて製造したもの」と定義されている[1]。.mw-parser-output .toclimit-2 .toclevel-1 ul,.mw-parser-output .toclimit-3 .toclevel-2 ul,.mw-parser-output .toclimit-4 .toclevel-3 ul,.mw-parser-output .toclimit-5 .toclevel-4 ul,.mw-parser-output .toclimit-6 .toclevel-5 ul,.mw-parser-output .toclimit-7 .toclevel-6 ul{display:none} 広義の紙は、直径100マイクロメートル以下の細長い繊維状であれば、鉱物・金属・動物由来の物質、または合成樹脂など、ほぼあらゆる種類の原料から作れる[2]。例えば、不織布は紙の一種として分類されることもある。しかし一般には、紙は植物繊維を原料にしているものを指す[2]。製法からも、一般的な水に分散させてから簀の子や網の上に広げ、脱水(水を抜く)・乾燥工程を経て作られるもの以外に、水を使用しない乾式で製造したものも含まれる。 紙の用途は様々で、原初の紙は単純に包むための包装用に使われた[3]。やがて筆記可能な紙が開発され、パピルスや羊皮紙またはシュロ・木簡・貝葉などに取って代わり情報の記録・伝達を担う媒体として重宝された[3]。 やがて製法に工夫がこらされ、日本では和紙の技術確立とともに発展し、江戸時代には襖や和傘、提灯・扇子など建築・工芸材料にも用途を広げた[4]。西洋では工業的な量産化が進行し、木材から直接原料を得てパルプを製造する技術が確立された[3]。 19世紀に入るとイギリスでフルート(段)をつけた紙が販売され、瓶やガラス製品の包装用途を通じて段ボールが開発された。さらにクラフト紙袋など高機能化が施され、包装用としての分野を広げ現在に至る[5]。 材料としては種類や加工法が豊富、加工の技術が比較的容易、安全などの特徴がある[6]。 製紙用として使用される繊維素材には、植物性天然繊維、動物性天然繊維、人造繊維などがある[7]。 紙の原料である植物繊維細胞壁の成分は、セルロース・ヘミセルロース・リグニンに細分される。セルロースが骨格を、ヘミセルロースが接続を、リグニンが空隙充填を担う[2]。セルロースは、水素結合によって結びつく性質がある。紙を構成する繊維がくっつき合うのは、主にこうした水素結合のためである。一方、水素結合は水が入るとすぐ切れるため、防水加工していない紙は水濡れに弱い。 種子毛では木綿、果実ではカポック、殻ではココナツやヤシなどが原料になる[7]。 マニラ麻・サイザル麻・パイナップルの葉・バナナの葉などが原料になる[7]。 動物性天然繊維では羊毛や絹などが利用される[7]。
概要
紙の原料
植物性天然繊維
茎幹繊維
木材
広葉樹には、ブナ・カエデ・クリ・キリ・カバ・ニレなどがある[7]。
針葉樹には、スギ・マツ・モミ・ヒノキ・ツガなどがある[7]。
(#木材パルプも参照)
靭皮繊維
木材性のものとして、コウゾ・ミツマタ・ガンピなどがある[7]。
コウゾ - 和紙の主原料となっている。
ミツマタ - 日本の紙幣の原料として混ぜられている。
草本性のものとして、アサ・亜麻・ケナフなどがある[7]。
アサ - 中国で紙が発明されたときの主原料だった(リネンパルプ)。
亜麻 - イスラム世界で紙の主原料となった。ヨーロッパでも木材からの製紙が普及するまではよく使われた。
ケナフ - 成長が非常に早いため、木材の代替候補として注目された。
単子葉植物の維管束(藁・アシ・イグサ・パピルス・竹・バガスなど[7])
藁(稲わらや麦わら) - 中国では唐時代から紙の原料として使われた。日本では1890年代ごろは洋紙の主原料であり、中国などではまだ原料として使用されている。藁には、繊維が細くて短すぎるため弱い紙しかできない、年に1回しか収穫できず腐りやすいため保管が難しい、などの問題点がある。「わら半紙」参照。
アシ - 若いススキやアシを原材料にする。
カミガヤツリ(パピルス) - カミガヤツリは古来よりパピルスとして利用されてきた。
秩B- 竹紙は、中国で唐時代(7世紀)から作られ、宋時代(10世紀以降)には竹が紙の主原料:唐紙となった。竹の豊富な四川省夾江県や福建省では現在でも毛辺紙や玉扣紙などの竹紙が作られており、工場もある[8]。
サトウキビ(バガス) - インド・中国や南米諸国では、製糖時に発生したサトウキビの絞りかすであるバガスからバガスパルプを製造し、紙の原料としている[9][10]。バガスには、森林保護や、省エネルギー、地球温暖化への対策などのメリットがあるとされる。
果実繊維
木綿 - 木綿のぼろ(ラグ)は、欧米で木材以前は紙の主原料であった。しかし、15世紀に印刷技術が確立して紙への需要が大きくなると供給不足になり、木材からの製紙方法が開発される契機となった。日本でも、製造開始直後の1880年代ごろは洋紙の主原料だった。また、綿花の加工途中で生ずる地毛などの短繊維(リンター)を原料として紙を漉くこともできる。木綿のぼろから作られるパルプをラグパルプ
アブラヤシ - アブラヤシは実からパーム油を絞るために栽培されているが、この絞りかすの繊維は強度が高いため、これを用いて紙をつくることが中国などで実用化されつつある。
葉繊維
マニラアサ - マニラアサ(アバカ)は、フィリピンなどで栽培されているバショウ科の植物。アバカパルプは繊維が細長いため、しなやかで強い紙を作ることができる。現在、日本紙幣の主原料となっているほか、ティーバッグ、掃除機の紙パックの原料となっている。
バナナ - バナナの茎の繊維を用いて、和紙をつくる要領で紙を作ることができる。生産廃棄物の再利用として途上国での利用が期待されている[11]。
動物性天然繊維
毛 - パルプに羊毛を漉き込みフェルトのようなもこもことした見た目と温かなぬくもりやざっくりとした手触りを出すために開発された羊毛紙[12]など。
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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