糊化
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デンプン

識別情報
CAS登録番号9005-25-8 
ChemSpiderNA 
EC番号232-679-6
RTECS番号GM5090000
特性
化学式様々
モル質量様々
外観白色、粉状
密度1.5 g/cm3
融点

decomp.
への溶解度不溶
危険性
安全データシート(外部リンク)ICSC 1553
EU Indexnot listed
発火点410 °C
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。
アミロースの分子構造アミロペクチンの分子構造ヨウ素デンプン反応で着色された小麦デンプン顆粒

デンプン(澱粉、ラテン語: amylum、英語: starch)とは、化学式 (C6H10O5)n の炭水化物多糖類)で、多数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した天然高分子化合物である。構成単位であるグルコースとは異なる性質を示す。陸上植物におけるグルコース貯蔵の一形態であり、種子球根などに多く含まれている。

デンプンは植物が光合成によって体内(実や根など)に貯蔵した炭水化物で、工業上はそれを精製した製品をいう[1]。デンプンの特性は起源となった植物の種類によりかなり異なる[1]。代表的なデンプンにカタクリ(市場に流通する多くの製品では馬鈴薯)を原料とする片栗粉トウモロコシを原料とするコーンスターチなどがある[1]
分子構造

デンプンはその構造によってアミロースアミロペクチンに分けられる。アミロースは直状の分子で、分子量が比較的小さい。アミロペクチンは枝分かれの多い分子で、分子量が比較的大きい。アミロースとアミロペクチンの性質は異なるが、デンプンの中には両者が共存している。デンプンの直鎖部分は、グルコースがα1-4結合で連なったもので、分岐は直鎖の途中からグルコースのα1-6結合による。アミロースはほとんど分岐を持たないが、アミロペクチンは、平均でグルコース残基約25個に1個の割合でα1-6結合による分枝構造をもつ(直鎖部分の長さは18?24残基、分岐間は5?8残基の間隔がある)。また、アミロースの中にはα1-6結合を持つものも少量あり、中間体と呼ばれている。なお、動物における貯蔵多糖として知られるグリコーゲンはアミロペクチンよりもはるかに分岐が多く、3残基に一回の分岐(直鎖部分の長さは12?18残基、分岐の先がさらに分岐し、網目構造をとる)となり、アミロースやアミロペクチンとは区別される。トウモロコシの種子などでもこのグリコーゲンの顆粒が存在する。

α-グルコース分子が直鎖状に重合している部分は、水素結合によりα-グルコース残基6個で約1巻きの螺旋構造となっている。また、螺旋構造同士も相互に水素結合を介して平行に並び、結晶構造をとる。分子は二重螺旋状態での結晶と、一重螺旋状態での結晶を作りうる。まず二重螺旋状態の結晶には、お互いのグルコース残基上の水酸基同士で直接水素結合を形成するタイプ(A型。コーンスターチなどの穀類由来のものがこの形)、間に水分子一層をはさむタイプ(B型と呼ぶ。馬鈴薯などの根茎・球根由来のものがこの型)と、両者の混合したタイプ(C型。根由来のもの)がある。また一重螺旋状態の結晶はV型と呼ばれ、天然ではデンプン顆粒に含まれる油脂成分がアミロースの一重螺旋のなかに包接された、包接錯体として存在している。
デンプンの生合成

デンプンは植物のプラスチドで生合成され、特にデンプン合成が盛んでデンプンを貯蔵しているプラスチドをアミロプラストとよぶ。細胞質からプラスチドに輸送されたグルコース-1-リン酸グルコース-6-リン酸やADP-グルコース ( ⇒ADP-glucose) はプラスチド中で最終的にADP-グルコースとなり、ADP-グルコースのグルコース残基はデンプン合成酵素 ( ⇒starch synthase, EC 2.4.1.21, ⇒反応) によって伸長中のアミロースやアミロペクチンの非還元末端のグルコース残基の4位の水酸基脱水縮合して新たなα-1,4グルコシド結合を形成して取り込まれる。プラスチド中のデンプン合成酵素はデンプン粒結合型デンプン合成酵素 (GBSS: granule-bound starch synthase) と可溶性デンプン合成酵素 (SSS: soluble starch synthase) に大別される。GBSSはアミロースの生合成に関与している。SSSによって合成途中のα-1,4グルコシド結合のグルコース残基の直鎖が、枝分かれ酵素 ( ⇒branching enzyme, EC 2.4.1.18, ⇒反応) によって一部切断され、その切断されて生じた還元末端のグルコース残基の1位の水酸基と直鎖部分の中間のグルコース残基の6位の水酸基の間でα-1,6グルコシド結合が生じる。こうして生じた分子中に存在する複数の非還元末端はSSSによって伸長するとともに枝分かれ酵素によって新たに非還元末端の側鎖が次々と形成される。余分なα-1,6グルコシド結合部分は枝切り酵素によって切断され側鎖は整理されて、アミロペクチンは合成される。つまり、アミロースとアミロペクチンの含量はGBSSとSSSの活性によって制御されている。よって、GBSSが欠損していればアミロペクチンのみを含むモチ性となり、SSSの活性が低下していると高アミロース含量となる。

GBSSの欠損変異はトウモロコシイネにおいてはwaxy (ワキシー) として知られている劣性変異遺伝子による。被子植物の胚乳中の細胞のゲノムは重複受精によって3nとなるため、胚乳中のデンプンがアミロペクチンのみからなるモチ性となるためには、3nの全てのGBSS遺伝子がwaxy変異を持たなければならない。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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