節用集
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節用集(せつようしゅう、せっちょうしゅう)は、室町時代から昭和初期にかけて出版された日本の用字集・国語辞典の一種。漢字熟語を多数収録して読み仮名をつける形式をとっている。
概要[ソースを編集]

その中身は漢字熟語を並べて読み仮名をつけただけであり、用語の意味の解説は無いが、簡単な注を付すことはある。つまり、日常の言葉を漢字で表記するための辞書といえる。

その記載される日常生活用語は、原則的に「いろは順」での分類がなされている。しかし単語の単純な「いろは順」ではなく、単語の最初の仮名で「いろは順」とし、「い」「ろ」などそれぞれの部のなかを天地時節草木など部門別(門)に分類して用語を配列する形式をとっている。近世後期以降に部門別から仮名字数で細分するものが現れ、やがてこれが主流となった。

江戸時代に多種多様な形式が発生した。字引重視の型と付録重視で教養書的なものの二傾向がある。特に江戸時代後期の挿絵・付録の増加した節用集の影響で、「節用集」という語が一般名詞化して江戸時代にはいろは引き辞書の代名詞として使われるようになり、明治期には教養書の意味へ変容した。一方辞書的な面を表す一般名詞は「字引」となった。

現代では、国語学において、漢字表記・読み・字体・用字など漢字の用法の知識を得るのに利用される。また現代語との読みの異同・語義の相違を知ることも可能である。付録から当時の日常生活の様相を推測するのにも使われている。

ちなみに「節用」という言葉の語源はかつて『論語』学而篇の「節用而愛人」(節約の意)からと言われていたが、『史記』の「節用」(日常随時用いるという意味)からという説も存在する。
歴史[ソースを編集]
古本節用集[ソースを編集]

15世紀日本では「字引」形式の書物が発展してきた。意味で分類した用語集の『下学集』(文安元年(1444年)頃成立)、漢字音で分類した漢字字典(韻書)の『聚分韻略』などがある。頭文字で分類しかつ意味で部門分けする形式は早く平安時代末期(院政期)成立の『色葉字類抄』と、その増補と見られる『伊呂波字類抄』があり、これらの流れのなか成立したのが『節用集』であった。原本の著者は不明であり、原本に後世の加筆がなされる形で成立していった。いろは順・部門別が便利であったらしく、文明16年(1484年)に成立した『温故知新書』(五十音に分けて部門別)や『下学集』などとは対照的に広く流布していった。

室町時代から江戸時代初期までのものを「古本節用集」という。刊本に文明本(文明6年(1474年)頃成立)・黒本本・天正18年本・饅頭屋本・易林本などがある。文明本が最古であり、『下学集』が成立したらしき1444年から文明本の年記1474年までの間に、節用集は成立した。構成により大まかに「伊勢本」・「印度本」・「乾本」の3つに分けられる。

節用集は「いろは順」ののち意味による部門分類を行っていたのだが、部門分類のはじめが「天地」で旧国名が含まれていた。その結果、初期の節用集は一番始めに出てくる項目が「伊勢」であった。一番目の項目が「伊勢」であるこれらの節用集を「伊勢本」という。その後、伊勢など旧国名が付録として本の後ろにまわり、最初の項目は「印度」となった。この形式のものを「印度本」と称する。「伊勢本」・「印度本」では「いろは順」は「いろは歌」のような47文字ではなく、「ゐ」「ゑ」「お」部が無い44文字で構成されていた。平安時代末から鎌倉にかけて日本語の発音が変化し「」「」「を」は「い」「え」「お」と同音になっていたからである。しかし慶長年間に入ると、藤原定家の『下官集』「嫌文字事」で示された定家仮名遣に従って、いろは44文字は「ゐゑお」を含む47文字とする節用集が登場した。当時「い」-「ゐ」等の音韻的区別は失われていたと考えられ、語によって表記を区別するという意識は和歌・連歌の世界を除いてさほどなかったが、この分類変更の結果、「印度」は「ゐ」部に分類され、「い」部の最初は「」に変わった。これらを「乾本」と呼ぶ。乾本の初期のものに、後書に「易林誌」とあるため「易林本」とも呼ばれるものがある。江戸時代に広く流通する刊本でもある。

一般的に、項目名は漢字であり楷書である。また振り仮名は片仮名で表す。しかし乾本時代には、その派生として漢字を草書・振り仮名を平仮名にするものも登場してきている。
江戸時代以後[ソースを編集]

江戸時代、刊本は「乾本」の系統が付録の増大・形式の変化などで廃れるまで続けて利用された。そして使用される書体が変化する。室町時代の楷書中心の書体から、楷書と行書草書を二列併記する「真草二行(真草二体)」が広く使われるようになった。


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