算術平均
[Wikipedia|▼Menu]

算術平均(さんじゅつへいきん[1]: arithmetic mean)または相加平均(そうかへいきん[2])とは、広義の平均の中で最も代表的な値のことで、数の集合データ確率分布に対して、個数と合計を保ったまま均一に1つの値に代表させた(つまり均した)値のことである。統計学においてだけでなく、数学のその他の分野、物理学[3]経済学社会学歴史学などあらゆる学問分野で算術平均が使われている。

例えば、国内総生産を人口で割った算術平均からその国民の平均収入を推定することができる。

数学などでは、幾何平均調和平均などの他の広義の平均と区別するため、区別が必要な場合は算術平均または相加平均と呼ばれる。特に統計学では、データ(母集団標本)の代表値の一つであり、他の広義平均との区別が明らかであれば平均値と呼ばれる。

上記の平均年収の例を見ても分かるように、算術平均を代表値として使う場合には、ロバスト統計量ではないことに注意が必要である。外れ値の影響を大きく受ける。特に歪度の大きい分布では算術平均は最大値と最小値の「真ん中」から外れることがあり、中央値などのロバスト統計量の方が代表値としてふさわしい場合がある。

標準偏差相関係数を定義するために、算術平均は必要な概念となる。
定義

数の集合、またはデータ母集団標本)を考えるとき、それがとる値全体を a1, a2, …, an とすると、その算術平均 m は次の式で定義される。 m = 1 n ∑ k = 1 n a k = a 1 + a 2 + ⋯ + a n n {\displaystyle m={\frac {1}{n}}\textstyle \sum \limits _{k=1}^{n}a_{k}={\dfrac {a_{1}+a_{2}+\cdots +a_{n}}{n}}}
統計学における平均値

統計学においては、他の広義の平均(幾何平均調和平均など)と区別されることがことわりなくても明らかである場合は、算術平均は単に「平均値」と呼ばれる。平均値を考える対象が何であるかによって呼称と表記が異なる。
データの平均値

変量 x のデータの平均値を x ¯ {\displaystyle {\bar {x}}} で表す。
標本調査における平均値

母集団の平均を母平均 (population mean)、標本の平均は標本平均 (sample mean) と呼ぶ。母平均を μ、標本平均を m などと書いて区別する。
確率分布の平均

確率分布に対して、その確率変数が離散型である場合は、データの平均値と同様に平均(期待値)が定義される。「期待値#離散型確率変数」も参照

確率空間 (Ω, F, P) において、確率変数 X が高々可算個 x1, x2, … を取るとき(離散型確率変数)、X の期待値 E[X] は E [ X ] = ∑ i = 1 ∞ x i P ( X = x i ) {\displaystyle E[X]=\textstyle \sum \limits _{i=1}^{\infty }x_{i}P(X=x_{i})}

で定義される。

特に確率変数のとりうる値が有限個であるとき、この定義は#データの平均値の定義と同じである。連続型確率分布の平均については「期待値#連続型確率変数」を参照
動機となる属性

算術平均には、代表値として用いるのに適した次のような属性がある。

a 1 , ⋯ , a n {\displaystyle a_{1},\cdots ,a_{n}} の算術平均を m {\displaystyle m} とすると、
偏差総和(合計)は必ず 0 になる: ( a 1 − m ) + ⋯ + ( a n − m ) = ∑ k = 1 n a k − n m = 0 {\displaystyle (a_{1}-m)+\cdots +(a_{n}-m)=\textstyle \sum \limits _{k=1}^{n}a_{k}-nm=0}
この等式は、力学的には次のような意味になる:データの値 ak を横軸、度数を縦軸とするヒストグラムを作成すると、ヒストグラムの形をした物体の重心は平均値 m が表す点の上にある。

数 x {\displaystyle x} に対して、データの値との差の平方総和 ∑ k = 1 n ( a k − x ) 2 {\displaystyle \textstyle \sum \limits _{k=1}^{n}(a_{k}-x)^{2}} をとる関数を考えるとき、この関数はデータの算術平均値 x = 1 n ∑ k = 1 n a k {\displaystyle x={\frac {1}{n}}\textstyle \sum \limits _{k=1}^{n}a_{k}} (のみ)で最小となる。


次ページ
記事の検索
おまかせリスト
▼オプションを表示
ブックマーク登録
mixiチェック!
Twitterに投稿
オプション/リンク一覧
話題のニュース
列車運行情報
暇つぶしWikipedia

Size:36 KB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
担当:undef