筆談
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筆談(ひつだん)とは、通常であれば会話できる距離にいる人との間で、発話によってではなく、互いに文字を書いて意思を伝え合うこと。目次

1 概要

1.1 障害者

1.2 音声言語が苦手な人

1.3 ダイビング時


2 漢字による別言語話者の筆談

2.1 利点

2.2 欠点

2.3 各国の漢語表記の差異

2.4 日本と中国と北朝鮮・韓国の漢字の使われ方

2.5 繁体字と簡体字と新字体との差異

2.6 実例

2.6.1 日本人とベトナム人の筆談



3 偽中国語

3.1 例


4 英語圏等での筆談時の注意点

5 脚注

6 関連項目

概要

筆談は直接の会話が成り立たたないか直接の会話を避けるべき特殊な状況下において用いられる。
障害者

筆談の典型例としては、耳や口の不自由者と日本手話に拠らずに会話をする場合があるが、いちいち書く手間により、とっさの話など手話より意思疎通が劣る弱点がある。日本の刑事裁判では、手話が使えない被告人が陳述する場合に、紙やタブレット端末を用いた筆談が採られている[1]

病院などの公共施設やバスなどの公共交通機関には筆談具(筆談器、筆談ボード)が設置されていることも多い。

近年(2014年時点での近年)、タブレット用の「筆談アプリ」が開発されてきている。最近のタブレットには音声認識機能があるので、聴覚障害者はタブレット画面に指で文字を書き、健聴者のほうにはしゃべってもらってそれを自動的に文字に変換して画面に表示する、ということもでき、よりスムーズに会話ができるようになった。また、離れた場所にいる聴覚障害者同士がネット経由で指で書いた文字で会話することもできる[2]
音声言語が苦手な人

別言語話者同士のコミュニケーションにも用いられる。漢字文化圏の別言語使用者同士が会話をする場合や、英語の読み書きは出来るが会話・ヒアリングが出来ない日本人が、筆談で英語圏の人間と意思疎通を図るといったことがよく行われる。

このほか、筆談はラジオ番組進行中にスタジオ内のスタッフとのやり取りや、盗聴が疑われる環境下など、音声での会話を避けるべき特殊な状況下においても用いられる。
ダイビング時

筆談は、スキューバダイビングの水中での会話にも用いられる。磁石のペンでなぞると、そこが黒くなるボードなどを用いる。
漢字による別言語話者の筆談
利点

中華人民共和国香港マカオも含む)やシンガポール中華民国台湾)では、漢字を理解する者が多い為、日本人が漢字で書いても通じる事が多い。

欠点

日本で作られた
和製漢字や朝鮮で作られた朝鮮国字を使っても相手の国に通じない。

漢字で書いても、国によっては全く違う意味になってしまう事がある。

各国によって、漢語表記の差異がある。例えば「湯」の字は、日本語では「温めた水」という意味だが、中国語普通話では「スープ」の意味である。

大韓民国朝鮮民主主義人民共和国では、表音文字のハングルが使われ、漢字の使用頻度はあまり高くない、又漢字教育を殆ど受けていない世代もいる為、漢字の読み書きが出来る韓国人は、少数派になっている。

ベトナム社会主義共和国では、かつてチュノムでのベトナム語漢字教育があったが、クオック・グーによるアルファベット表記が一般的になった為、漢字を理解出来るベトナム人が非常に少なくなっている。

中華人民共和国やシンガポールでは北京語簡体字、中華民国は華語繁体字香港マカオでは広東語繁体字、日本では日本語新字体旧字体と二つあり、簡体字と新字体は同じ形をしていない為、相手の国では意味が通じない場合がある。

近代以前の筆談は、共通文語(=漢文)の知識の上で行われた為、通用性が高いが、現代の筆談は、それぞれの国の国語に含まれている漢語の語彙に基づく物である為、相手国の言語について理解出来なければ、単語の域に限られる。

各国の漢語表記の差異

英語日本語朝鮮(韓国)語中国語ベトナム語
letter手紙片紙信、書信書信 書辭
tissue塵紙休紙草紙、廁紙、衛生紙、手紙紙衛生
gift贈り物膳物禮物?贈
bill勘定計定??財款
dining table食卓食卓餐???
cheque小切手手票支票支票
name card,
business card名刺名銜、啣名片、名刺名帖
maid女中食母女傭?執役
prohibit禁止禁止禁止事禁斷
cancel取消取消取消??
study勉強工夫學習學習
mathematics数学數學數學算學
very大変大端非常、十分過、?、無窮
prisoner囚人囚徒囚犯、囚徒囚人、罪人
side room脇部屋舍廊、斜廊側房房?

日本と中国と北朝鮮・韓国の漢字の使われ方

漢字日本語での意味朝鮮(韓国)語での意味中国(北京)語での意味
彼彼(かれ)(あの、あちら)相手
他他(ほか)(ほか)彼
[3]あゆなまずなまず
[3]かつおカムルチーおおうなぎ
[3]はぎカワラヨモギよもぎ
何時なんじ,いついついつ
工夫よい考えや方法を見つけ出す勉強時間

これは中国が漢字を伝えるときに、誤解した可能性もあると思われる。
繁体字と簡体字と新字体との差異

繁体字簡体字新字体解説
新字形
對?対簡略化のわずかな差
寫写写
處?処
圓?円簡: 部分の簡化、新体: 記号化
澤?沢簡: 単純簡化、新体: 複雑部の置換
廣廣广広新形: 減画、簡: 削除、新体: 記号化
過過?過新形: 減画+筆画交換、簡: 記号化、新体: 減画
龜龜?亀残存部(日)の数

実例
日本人とベトナム人の筆談

《インドシナ物語》の作者の丸山静雄は、ベトナムで取材の時、現地のベトナム人と筆談を行ったことがある(1981年より以前)。

以下はもとの本の章節からの引用。私は終戦前、ベトナムが未だフランスの植民地であった頃、朝日新聞社の特派員としてベトナムに滞在した。私はシクロ(三輪自転車)を乗り付いだり、路地から路地にわざと道を変えて、ベトナムの民族独立運動家達と会った。大方、通訳の手を借り、通訳いない場合は、漢文で筆談したが、結構、其れで意が通じた。今でも中年以上の者で在れば、漢字を知っており、私どもとも漢字で大体の話は出来る。漢字と言っても、日本の漢字と、二の地域の其れとはかなり違うが、漢字の基本に変りはない訳で、中国?ベトナム?朝鮮?日本と繋がる漢字文化圏の中に、私どもは生きている事を痛感する。 ? 「インドシナ物語」,丸山静雄,講談社,昭和五十六年十月二十六日第一刷発行,ASIN: B000J7UJ4Q
偽中国語

主にインターネット上のテキストを介したコミュニケーションに置いて、漢字かな混じりの日本語文を仮名を排した漢字だけで一見すると中国語文の様に表現して成立する会話や文を、其の使用愛好者の一部が偽中国語と呼び、更に中国語使用者でも其の意味を概ね解する事が出来ると言う事が話題に登る事が有る[4][5]


「貴方明日何処行?」(日本語文:あなたは明日どこに行きますか?)
[5]、(現代中国語文(簡体字):?明天去?里?)

英語圏等での筆談時の注意点

英語は知っているが話せない(発音・ヒアリングが出来ない)日本人が、筆談で現地の人と意思疎通を図ると言う事は海外旅行等でよく行われるが、文字の表記に付いて一部注意を要する。
主な注意


アラビア数字の「1」と「7」の書き分け。活字の数字は世界共通だが、手書きによる数字の書き方は、必ずしも世界共通ではない。

脚注^“話せぬ被告、タブレット端末で筆談 さいたま地裁裁判で”. 朝日新聞. (2014年5月11日). ⇒http://www.asahi.com/articles/ASG5952Z3G59UTNB01H.html 2014年11月8日閲覧。


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