第33回世界遺産委員会(だい33かいせかいいさんいいんかい)は、2009年6月22日から6月30日にスペインのセビリアで開催された。セビリアは、1987年登録の世界遺産「セビリアの大聖堂、アルカサル、インディアス古文書館」を擁する都市であり、会場となったのは市内のセビリア会議・展示センター(スペイン語版)である[1]。この世界遺産委員会では文化遺産11件、自然遺産2件が新規に登録されたが、ドレスデン・エルベ渓谷(ドイツ)が世界遺産リストから抹消されたため、世界遺産の総数は890件となった[2]。 委員国は以下の通りである[3]。地域区分はUNESCOに従っている。 議長国 スペイン議長マリア・ヘスス・サン・セグンド 世界遺産は新規に自然遺産2件、文化遺産11件が登録された。新たに世界遺産保有国となったのは、キルギス、カーボベルデ、ブルキナファソの3か国であり、世界遺産保有国は148か国となった[4]。 見送られたり取り下げられた物件も含めて、以下で審議結果を見ていくが、物件名に * 印が付いているものは既に登録されている物件の拡大登録申請である。太字は正式登録(既存物件の拡大などについては申請用件が承認)された物件。英語名とフランス語名は諮問機関の勧告文書に基づいている[5]。 画像推薦名推薦国勧告決議
委員国
アジア・太平洋 オーストラリア副議長国
韓国
中国
アラブ諸国 チュニジア副議長国
バーレーン
ヨルダン
エジプト
モロッコ
アフリカ ケニア副議長国
ナイジェリア
マダガスカル
モーリシャス
ヨーロッパ・北アメリカ アメリカ合衆国副議長国
イスラエル
スウェーデン
カナダ
カリブ・ラテンアメリカ バルバドス副議長国
ブラジル報告担当国。報告担当者はアントニオ・オタヴィオ・サ・リカルテ。
キューバ
ペルー
審議対象の推薦物件一覧
自然遺産
ドロミーティ イタリア登録登録
The Dolomites
Les Dolomites
ドロミーティは過去に度重なる地殻変動を経験し、その作用によって生み出された美しい山岳景観を備えている[6]。また、中生代の化石の出土地でもある[6][7]。適用された世界遺産の登録基準は (7) と (8) である。2007年の第31回世界遺産委員会にて登録延期決議が出されていた[8]。
ワッデン海 オランダ/ ドイツ登録登録
The Wadden Sea
La mer des Wadden
ワッデン海には砂州や湿地などの地形が大規模かつ多様に形成されており、1200万羽もの渡り鳥が飛来するなど、湿地の生態系にとっても重要な保護区となっている[9][10]。適用された世界遺産の登録基準は (8)、(9)、(10) である。第38回世界遺産委員会で、デンマーク方面にも拡大されることになる。
韓国の白亜紀恐竜海岸
Korean Cretaceous Dinosaur Coast
Littoral coreen des dinosaures du Cretace
白亜紀の恐竜の化石が出土する朝鮮半島南岸の地域などが推薦されたが、自然遺産の諮問機関である国際記念物遺跡会議 (IUCN) は生痕化石の出土地などとしての一定の評価をしたものの、地球規模での「顕著な普遍的価値」は認めずに、「不登録」を勧告した[11]。不登録勧告を受けて、韓国当局は審議前に取り下げた[12]。
トゥバタハ岩礁自然公園(「トゥバタハ岩礁海中公園」の拡大)* フィリピン承認承認
Tubbataha Reefs Natural Park (Extension of the Tubbataha Reef Marine Park)
Parc naturel du recif de Tubbataha (Extension du Parc marin du recif de Tubbataha)
トゥバタハ岩礁海中公園は1993年に登録された世界遺産で、パラワン島周囲の絶滅危惧種を含む多くの魚類、海鳥、海亀などの生息域になっている保護区である[13]。2006年に公園名の変更と範囲の大幅な拡大が行われていたため、世界遺産名称と登録範囲もそれに合わせて変更することが認められた[14]。
レユニオン島の尖峰群、圏谷群および絶壁群 フランス――
Pitons, Cirques and Remparts of Reunion Island
Pitons, cirques et remparts de l’ile de la Reunion
レユニオン島の火山活動によって生まれた複雑な地形が提示する景観美と、それによって育まれた独特の生物多様性とを特色とする物件だが[15][16]、推薦国の要請によって、翌年に審議が延期された[17]。