第二級アルコール
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この項目では、化学物質の総称について説明しています。エタノールを重要な成分とする飲料(酒類)については「」をご覧ください。
アルコールの構造。炭素原子は他の炭素原子、または水素原子に結合する。

化学においてのアルコール(alcohol、 蘭語発音[ヘルプ/ファイル]、 英語発音[ヘルプ/ファイル])とは、炭化水素水素原子をヒドロキシ基 (-OH) で置き換えた物質の総称である。芳香環の水素原子を置換したものはフェノール類と呼ばれ、アルコールと区別される。

最初に「アルコール」として認識された物質はエタノール(酒精)である。この歴史的経緯により、一般的には単に「アルコール」と言えば、エタノールを指す。


目次

1 概要

2 構造

3 命名法

4 語源

5 利用法

6 製造

7 物理的性質

8 化学的性質

9 合成

10 反応

11 毒性

12 法律

13 アルコキシド

14 主なアルコール類

15 脚注

15.1 出典


16 関連項目


概要

アルコール類は、生体内での主要代謝物の1つであり、生物体に多種多様なアルコール体が広く見いだされる。蝋はセタノールなど高級アルコールであり、脂肪中性脂肪)は、グリセリン脂肪酸とのエステルである。そして、糖類もアルコール体である。ケトースアルドースカルボニル基が還元されたエリトリトールキシリトールソルビトールなどは、糖アルコールと呼ばれる。
構造アルコールの分類(左から、メタノール、第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコール)

ヒドロキシ基が結合している炭素原子に結合している炭素原子の数で第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコールという区別がある。酸化すると第一級アルコールはアルデヒドとなり、第二級アルコールはケトンとなる。第三級アルコールは酸化されにくい。なお、メタノールは炭素原子どうしの結合を持たないが、酸化してホルムアルデヒドとなるので、一般に第一級アルコールに含まれる。

それとは別に、炭素数が少ないアルコールを低級アルコール、炭素数が多いアルコールを高級アルコールという。低級アルコールは無色の液体であり、高級アルコールは状の固体である。

さらに、結合しているヒドロキシ基の数がn個であるアルコールを n価アルコール という。二価アルコールは特にグリコールとも呼ばれ、エチレングリコールプロピレングリコールなどの例がある。グリコールは一般に粘性や沸点が高い。三価アルコールでは、代表的なものにグリセリンがある。
命名法

一般名では普通、対応するアルキル基の名称に "alcohol" の語を続けて命名する(例: methyl alcohol, ethyl alcohol)。プロピルアルコールの場合、ヒドロキシ基がプロパンの末端(1位)炭素に置換した一級アルコール (CH3CH2CH2OH) は、n-プロピル基 (CH3CH2CH2-) にヒドロキシ基が結合した構造から n-propyl alcohol (n-プロピルアルコール)と呼ばれる。一方、プロパンの中心(2位)の炭素に置換した第二級アルコール ((CH3)2CHOH) は、イソプロピル基 ((CH3)2CH-) とヒドロキシ基が結びついた構造から isopropyl alcohol(イソプロピルアルコール)と呼ばれる。また、イソプロピルアルコールは第二級であることから sec-propyl alcohol とも呼ばれる。"tert-" の接頭語は第三級アルコールを示す(例: tert-butyl alcohol)。2つのヒドロキシ基を持つ二価アルコールの場合は、2価の置換基名(ethylene, propyleneなど)に "glycol" の語を続ける(例: HOCH2CH2CH2OH, propylene glycol)。

IUPAC命名法によると上記の一般名も維持されるが、IUPACの推奨する組織名では対応するアルカン鎖の名称の末尾の "-e" を "-ol" に変えて命名する(例: methanol, ethanol)。第一級アルコール、第二級アルコール、第三級アルコールの別は、"-ol" の前につける(例: propan-1-ol, propan-2-ol)。ほかにも置換基があり、ヒドロキシ基が主基にならない場合 "hydroxy" の語を前につけて表す(例: 2-hydroxypropanoic acid)。また多価アルコールの場合は "-ol" を "-diol"(二価アルコールの場合)、"-triol"(三価アルコールの場合)のように ol の前に数詞をつけて命名する。位置番号のつけ方は同様である。
語源

アルコール (alcohol) の語源については正確な起源が判明しているわけではないものの、"al-" がアラビア語の定冠詞であることから、アラビア語に由来すると考えられている。そもそも、12世紀にイスラム社会の錬金術の発見を大衆向けに翻訳した数々のヨーロッパの翻訳者によって、アルコールは蒸留技法とともにその蒸留物のこととしてヨーロッパに紹介された。

多くの辞書では "al-khwl" から来たとする説を紹介しているが、al-khwl は、アラビア語の原義では殺菌剤眉墨に利用されたアンチモン硫化物 Sb2S3 の非常に微細な粉体のことである。すなわち「さらさらしている」という意味であり、エタノールが水に比べてさらさらしているところから来ていると考えられる。

Oxford English Dictionary によると、1672年以来イギリスで流通している説では、アンチモン硫化物は天然鉱石の輝安鉱を閉じた容器の中で昇華し精製する。このことから他の精製技法も含め、蒸留一般のことを指していうようになり、その後、蒸留物であるエチルアルコールを示す語に転化したものと考えられている。

ただし、この説にも異論があり、コーランの37:47節にある "al-ghawl" が由来であるという説がある。al-ghawl の原義は、精霊 (spirit) や魔人 (demon) で「ワインの性質を与えるもの」という意味である。蛇足になるが英語の "ghoul" や星の "Algol" も起源を al-ghawl に持つ。"spirits" や "spirits of wine" がアルコールの意味として同義なので、西側社会言語では広く受け入れられている。語源「アルコール」=「悪魔」は、宣伝の目的でアメリカ禁酒運動によって1930年代に使われた。

日本には江戸時代オランダ語 "alcohol" が取り入れられ、オランダ語の発音のまま日本語でも「アルコホル」(ローマ字:arukohoru)と表記・発音した[1]。ただし、歴史的仮名遣いでは文節のはじめ以外の「」は「」と発音するため、「アルコオル」(ローマ字:arukooru)と発音する者もいたと考えられる。昭和初期頃になると "alcohol" に該当する物質は「アルコホル」「酒精」「エチル・アルコール」「エタノール」「木酸化エダン」「メチルカビビノール」等と呼称が多数になっていたため、1931年(昭和6年)4月に資源局が標準用語を決めて発表した際、「アルコール」に表記・発音が統一された[2]
利用法


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