空襲警報
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2023年現在、日本ミサイル飛来などを伝えるものについては「国民保護情報」をご覧ください。

空襲警報(くうしゅうけいほう)とは、戦争において敵軍航空機による空襲市民に知らせ、被害が出ないようにより安全な場所への退避を促す目的で発令される警報である。発令された場合には市民は防空壕への避難などを行うことになる。
日本
第二次世界大戦期の警報

第二次世界大戦日華事変大東亜戦争太平洋戦争)期の大日本帝國では、1937年(昭和12年)に本土防空における民間防衛に関する法律「防空法」(昭和12年法律第47号)が制定され、同年の防空法施行令(昭和12年勅令第549号)で空襲警報の基本規定が置かれた。

防空法施行令第7条では、「航空機ノ来襲ノ虞アル場合」に発令される「警戒警報」と、より切迫した「航空機ノ来襲ノ危険アル場合」に発令される「空襲警報」の2段階で警報が発せられる仕組みになっており、「防空警報」と総称した。当該地域を担当する帝國陸海軍の指揮官、即ち陸軍であれば防衛司令官および師団長ないしは要塞司令官、海軍なら鎮守府司令長官もしくは要港部司令官といったレベルの者が警報を発令する権限を有した。一般市民に対しては警戒警報発令時には灯火管制の実施、空襲警報に移行した場合は速やかな防空壕への避難をするように指示され、また防衛召集により待命中の軍人に対しては警戒警報のサイレンが鳴った時点で召集令状が交付されたものとみなして配置に就くことが義務付けられていた。詳細は「召集#太平洋戦争」および「民間防衛#日本における民間防衛」を参照

しかし、空襲を探知するレーダー聴音機の絶対数の不足、各地に設けられた軍民双方の対空監視哨(目視にて敵機を監視する見張り台)と司令部間の通信設備の不備などの問題から、大東亜戦争後期の日本本土空襲では必ずしもうまく機能しなかった。詳細は「日本本土防空#日本軍」および「日本本土空襲#日本の対策」を参照

戦時中の日本では空襲警報を国民に広報する手段としては、比較的普及していたAMラジオが活用された。当時は電波による放送自体が公共放送局であるNHKの完全独占であり、事実上の国営放送として伝達の役割を担った。「国営放送#日本の現状」および「無線電信法#私設無線の種類とその操作資格」も参照

空襲警報放送は警戒警報、防空警報共に定型化された放送内容を2度繰り返しアナウンサーが読み上げる形式で、最初に大きなブザー音が鳴り響いた後に『○○県 警戒警報』、防空警報の場合は『○○軍情報』(または軍管区情報)とまず読み上げられ、どこの軍管区から提供された何の情報かが明確に通知された上で、『○○時○○分、敵の編隊(または梯団)○○機は、△△(地名)を経て××(方角)へ進んでおります』『○○時○○分ごろ、△△(地名)へ来るものと思われます』『△△(地名)の高射砲斉射を行いますから、注意して下さい』など、軍事知識の乏しい国民でも理解しやすい比較的平易な短文(東部軍管区では文語体であったが、中部軍管区では口語体が用いられた)で構成された警報文が読み上げられた。周波数はNHKのR1と同一であり、緊急時には一般の放送に割り込む形で空襲警報放送が挿入され、警報放送内でもその旨の断りが読み上げられているが、後に本土空襲が激化すると軍司令部内にアナウンサーが24時間常駐して空襲警報放送を行う体制となった。「NHKラジオ第1放送#概要」および「大本営発表#制度」も参照

防空壕などへ避難中の国民はラジオ受信機から逐一流れてくる空襲警報放送に注視する事で、現時点で何が起きていて、それに対して帝國陸海軍がどのような対応を行っているかが伝わる仕組みになっており、時として軍内部でも通信手段に乏しい場所で勤務する将兵達は、空襲警報放送を通じて全体の戦況把握を行う事があったという。これらの空襲警報放送は当のNHKでも録音がされておらず、戦後長きに渡って現存する音源は存在しないものとされていた。その為、戦後に製作されたテレビドラマ映画などでは、当時の文書記録や市民の証言などを元に製作された再現放送を使用していた。しかし2010年代に入って、戦時中に兵庫県神戸市東灘区旧制中学に通い戦後は熊本市に在住していた男性が、吹込盤にて密かに録音していた戦時中のラジオ放送[1]NHKアーカイブスに寄贈、その中に1945年昭和20年)2月4日昼の神戸へのB-29編隊の空襲と、同年2月18日夜に大阪に単独機が飛来した際に中部軍司令部より発令された空襲警報放送が含まれており、2016年現在これが日本国内に現存する唯一の音源となっている。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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