空対空ミサイル
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上からR-73R-60R-27T、R-27R

空対空ミサイル(くうたいくうミサイル、英語: air-to-air missile, AAM)は、兵器の1種であり、空中から発射され空中の目標を攻撃するためのミサイルである。
概要

長い円筒形をした本体形状に加え、前後中央の内の2箇所に4枚程の安定翼や姿勢制御翼をそなえているものが多い。本体は前から、シーカーを含む誘導部、弾頭部、固体ロケットエンジンなどの推進部で構成される。

空対空ミサイルの多くが戦闘機から発射され、敵航空機の撃墜によって航空優勢を得るために使用されるが、攻撃機攻撃ヘリコプターのような航空機でも自衛的な目的など必要に応じて武装に加えられる。固定翼航空機では主翼下や主翼端、胴体下や胴体内部に搭載される。

第二次世界大戦中頃から開発が始まり、1960年代頃から本格的に用いられるようになった。成功した空対空ミサイルは地上発射機や海上艦艇に載せられ、比較的短射程の地対空ミサイル艦対空ミサイルとして使用されるものもいくつかある。

初期の空対空ミサイルは、無誘導による命中率の低さ、敵爆撃機が編隊で密集して襲来することなどに対応するため、核爆弾を内蔵したものも作られた。AIR2(ジーニ)がその一例である。
メカニズム
飛翔制御・推進方式詳細は「ミサイル#エンジン」および「ミサイルの飛翔制御方式」を参照

航空機同士の制空戦闘などでの使用が中心となり、短時間で高速度まで加速できる能力が要るためロケットエンジンが採用され、また、多くが小型で多数運用時での保守の手間やコストも考慮されて固体燃料ロケットが多い。近年では射程を延ばすためロケットエンジンに加え、ラムジェットエンジンを装備するものも開発されている。

姿勢制御翼によって飛翔方向を制御するものが多いが、推力偏向方式を取り入れたものもある。
誘導方式詳細は「ミサイルの誘導方式」を参照

空対空ミサイルの誘導プロセスは、発射前の目標捕捉、中間誘導、終末誘導の方式によって、それぞれ分類することができる。
捕捉方式

目標の発見、捕捉とミサイル発射の順序の違いにより、「LOBL」と「LOAL」に分けられる。
LOBL(Lock-On Before Launch)
ミサイル自身が搭載する
シーカーが目標を捕らえてからミサイルを母機から発射する発射形態を指す。複数目標に対して複数ミサイルを放つ時に一方では追尾漏れがありもう一方では2基のミサイルが1つの目標を重複追尾するようなムダが発生しないよう、母機が複数のミサイルを厳密に統制したい場合にこの発射形態が選択される。
LOAL(Lock-On After Launch)
母機の
センサーが目標を捉えているものの、ミサイル搭載のシーカーが目標を捕らえないうちから発射して、その後の飛行中にこのシーカーが目標を探知して追尾を開始する(Lock-on)ことを想定した発射形態を指す。シーカーの検知可能距離を上回る射程のためLOBLが不可能な中・長距離ミサイルで使われる事が多い発射形態だが、短距離ミサイルであっても、目標が母機の横や後ろに居る場合などミサイルのシーカー走査角内にない場合に使用されることがある。なお、短距離ミサイルがLOAL能力を持つようになったのは、比較的最近のことである。
中間誘導

中間誘導は「ミサイルが発射されてからミサイル搭載シーカーが目標を捕らえる(Lock-on)まで」の中間段階の誘導。慣性誘導と指令誘導がある。慣性誘導は指令した座標に移動するようにミサイル自身のジャイロ加速度計で誘導することである。指令誘導とは、移動する目標を母機などのレーダーなどで追尾し、ミサイルに進行方向の指令を送って、最終的にミサイル搭載シーカーが目標を検知するところまでミサイルを誘導させる方法である。慣性誘導に比較し、目標位置のアップデートがあるので命中率は高まるが母機などが誘導指令を発し続ける必要がある。

ミサイルによっては中間誘導を採用せず、終末誘導のみの誘導方式を持っているものもある。
終末誘導

終末誘導は「ミサイル搭載シーカーが目標を捕らえて(Lock-on)から後」の最終段階の誘導を指す。終末誘導は赤外線ホーミング(IRH)セミアクティブ・レーダー・ホーミング(SARH)アクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)の三種類がある。空対空ミサイルとして、普及が進んだ順はIRH-SARH-ARHの順になり、このうち、IRHとARHはファイア・アンド・フォーゲット性能を備えている。

一般的に、レーダー誘導(SARH・ARH)のほうが、赤外線誘導のミサイルよりも射程が長い。これは、電波のほうが赤外線よりも大気圏内での透過性が高いためである。このことから、旧西側諸国においては、視程外射程のミサイルにはレーダー誘導を、視程内射程のミサイルには赤外線誘導を採用していることが多い。一方、旧東側諸国においては、標的の回避を困難にして命中確率を向上させるために、電波誘導と赤外線誘導の2種2発のミサイルを同時に発射する戦法をとる。その戦術を実現するために、1つの基本型のミサイルが赤外線誘導型と電波誘導型の2つの派生型を持つものがある。視程外射程で赤外線誘導を採用する場合は、中間誘導として指令誘導が併用されている。
技術史・運用史
初撃墜

空対空ミサイルが初めて実戦で発射され、撃墜を記録したのは、第2次台湾海峡危機のさなか、1958年9月24日金門馬祖周辺の台湾海峡において、中華人民共和国中国人民解放軍空軍)と台湾中華民国空軍)との交戦とされている。この戦闘において、台湾空軍はアメリカから供与されたAIM-9B サイドワインダーを装備したF-86F戦闘機[1]をもって人民解放軍のMiG-17F(またはJ-5)と交戦、11機を撃墜した。


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