空中ブランコ
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「空中ブランコ」のその他の用法については「空中ブランコ (曖昧さ回避)」をご覧ください。
1890年頃のリトグラフに描かれた空中ブランコ

空中ブランコ (くうちゅうブランコ) は、ロープや金属で上から短い水平の撞木(バー)をブランコのようにぶらさげた装置、およびその装置を用いて行う曲芸を指す。これを用いた空中アクロバットサーカスなどでよく行われる。空中ブランコは静止状態で行うものの他、1点から吊って回転させる、揺らす、飛ぶなど様々な種類のパフォーマンスがあり、1人で行うこともあれば、複数人でパフォーマンスすることもできる[1]。「大空間を使った華やかな芸[2]」である一方、「失敗が命取りになる危険な芸[2]」であり、「サーカスのアクロバットの王座を守り続けている[3]」演目だと言われる。
分類トリプル・トラピーズ
揺り一丁撞木
パフォーマーがバーやロープにぶらさがってバランスや落下などのさまざまな動きを披露するものである[1][4]
大一丁
両端に球などをつけて前後に振り子のように振れるようにしたぶらんこで行うパフォーマンスを指す[1][4]
頭立ち一丁
パフォーマーが通常と逆さまになり、頭を撞木にのせた状態で行うパフォーマンスである[1][4]
空中飛行
飛び手とブランコからブランコへ飛び移るなどの技を披露するパフォーマンスであり、多くの場合は飛び手が受け手と組んで行う[1][4]。日本のサーカス用語でブランコからブランコへと飛び移るものを「ロシア飛び」、飛び交う形でのパフォーマンスを「バロスキー式」あるいは「バロフスキー式」と呼ぶことがあった[5][6]。これは1910年に来日しているバロスキー一座から来ている可能性が指摘されている[6][7]
ラウンダー
ブランコに乗った乗り手が前面に倒れるように見せかけて一回転する曲芸である[4]
ダブル・トラピーズ
2人がひとつのぶらんこを使って行うパフォーマンスで、スタティック・トラピーズやスウィンギング・トラピーズなどで行う[1][4]。2人より多い人数で行うこともある。
歴史

野外にブランコ状の器具を設置して競技や祭り、遊戯を行う習慣は朝鮮半島インドタイなどをはじめとして世界各地に古くから存在する[8]。19世紀半ばにヨーロッパでブランコが体操トレーニング用具として使われるようになり、最初は金属の棒でつるしたブランコが使われていたが、やがてただの棒でぶら下げるのではなく、綱や、鋼鉄が原料でもロープ状にしたもので吊り下げた可動域の広いブランコが開発され、これがサーカスに導入された[9]

1850年代の初めくらいから、だいたいは容姿の点でも魅力を売り物にできるような女性芸人が行うバランス芸的な演目として、静止した1丁のブランコを用いて行う演目(揺り一丁撞木)が演じられるようになった[10]

1人で行う空中飛行のパフォーマンスは、フランス人曲芸師であったジュール・レオタール (Jules Leotard) が1800年代半ば頃に発展させたと考えられており、レオタールはパリのシルク・ナポレオンにて、1859年に初めて、現在サーカスなどで見られる形に近い飛び技を駆使した空中ブランコを披露した[9][11]。レオタールの父は体操教師であり、レオタール本人も屋内体操場で体操を学ぶアスリートで、サーカスでもブランコを投げる助手役は父親がつとめた[9]。このショーは、下にマットを敷き、空中に3つぶらさげたブランコ同士の距離を離してその間を飛び移ることで、「本当に空を飛んでいるかのような印象を与え[12]」るものであった。このパフォーマンスは大きな評判を呼び、"The Daring Young Man On The Flying Trapeze"というレオタールにちなんだ歌が作られた他、レオタールがサーカスに出る際に着用していたコスチュームはその名にちなんでレオタード (leotard) と呼ばれるようになった[11]

レオタールのパフォーマンスは大変な評判を呼んだため、すぐにさまざまな軽業師が空中ブランコを習得するようになった[12]。1869年にはペテルブルクで活躍していた軽業師のリヒャルト・コンラーツが空中ブランコを売り物として宣伝している[12]。空中ブランコは、それまで世襲が多かったサーカスの現場に器械体操出身者が入ってくるきっかけのひとつとなったと考えられている[13]

2人乗りブランコも1850年代末から行われるようになったが、これは「もっぱら強力な軽業の連続から[14]」なるものであったという。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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