移植(いしょく)とは、提供者(ドナー)から受給者(レシピエント)に組織や臓器を移し植える医療行為のこと。移植で用いられる組織や臓器を「移植片」という。以下に示すように様々な移植の形態が存在するが、一般には臓器を移植する場合が話題となるため臓器移植(ぞうきいしょく)として知られている。 現在、日本で臓器移植を希望してJOTに登録している方の総数は、約16,000人。一方で、1年間で臓器移植を受けられた人は、約400人。わずか3%の人しか移植を受けることができていないというのが現状である。 ヒトの臓器移植は病気や事故により臓器が機能しなくなった人に対して他の人の健康な臓器を移植して機能の回復を図る医療をいう[1]。 臓器移植は難病治療などとともに生命科学の発展によって人類が恩恵を受けてきた分野である[2]。一部の疾病に対して現時点での医学レベルでは臓器移植が唯一の治療法である場合がある[3]。脳死後の臓器移植が可能となり、免疫抑制剤も進歩したことで臓器移植の成績も向上している[4]。ただし、免疫抑制剤は一生投与しなければならないうえ、免疫が低下しているため、生の肉や魚など細菌や真菌、ウイルスを含む可能性がある食物が摂取できなくなるというデメリットがある[5]。 一方で臓器移植については臓器提供者の脳死判定のあり方などに議論がある。死生観は国民性のほか宗教や時代によって大きく異なり臓器移植等の捉え方にも難しい問題が存在する[6]。思想的・宗教的立場から臓器の移植を否定する主張[7]もある。なおカトリック教会では臓器移植は道徳的に認められ、死後の臓器提供を崇高なものとしている[8]。 移植可能な臓器は次のように様々であるが、ドナーの心停止後(心停止移植)は臓器の機能が急速に衰えることから移植の対象は膵臓・腎臓・眼球といった一部の臓器に限られる[4]。
概説
分類
ドナーとレシピエントの関係による分類
自家移植 (autograft):自己の組織を自己の他の場所に移し変えること。
他家移植:自己以外の組織を移し変えること。
同種移植 (allograft):レシピエントと同一種の組織を用いる。
同系移植 (isograft):免疫的に同一である個体 (一卵性双生児や近交系動物) の組織を用いる。
異種移植 (xenograft):レシピエントと異なる種の組織を用いる。
人工移植:形成術ともいい、人工材料を用いて臓器修復することをいう。主に人工血管や皮膚、心臓弁置換術において行われる。
ドナーの状態による分類
生体移植:生きているドナーから提供されること。
死体移植:死亡したドナーから提供されること
脳死移植:ドナーが脳死と判断された後に臓器等を取り出すこと。
心臓死移植(心停止移植):ドナーの心停止後に臓器等を取り出すこと。
対象
輸血
心臓移植
肺移植
腎移植
肝移植
膵移植
小腸移植
造血幹細胞移植
骨髄移植
角膜移植
眼球移植[9]
皮膚移植
治療法としては一般的ではないが、研究的に以下のような移植手術も実施された事例がある。 ヒトの移植医療は1950年代から1960年代にかけて始まった。1956年、日本の新潟大学で急性腎不全の患者に対して一時的に腎臓を移植する手術が行われた[1]。 1963年には米国で世界初の肝臓移植及び肺移植が行われた[1]。また、1967年には南アフリカ共和国で世界初の心臓移植が行われた[1]。
頭部移植(@media screen{.mw-parser-output .fix-domain{border-bottom:dashed 1px}}2016年時点で、ネズミとサルで頭部移植手術が成功している[要出典]。2019年には、筋萎縮症という難病に苦しんでいるロシア人男性のワレリー・スピリドノフ氏に世界初の人間の頭部移植手術が行われる予定だったがワレリー・スピリドノフ氏が申し入れを撤回したことで計画は中止された。)
四肢移植(1998年にフランスで初めて腕の移植が行われ、世界で10数例の報告がある。)
陰茎移植(中華人民共和国で1例が学会報告され、[注釈 1]2例目は南アフリカ3例目、4例目がアメリカで行われ、その中の一例は陰嚢や下腹壁を含む精巣以外の完全移植に成功した。[10])
顔面移植(フランスで初の移植が行われ[11]、他にも数例の報告がある。救命目的の顔面移植はポーランドが初。[12])
子宮移植(数例の報告がある。)
歴史
生命倫理と国際基準