租税
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租税(そぜい、(: tax)とは、地方公共団体公共財公共サービスを提供するにあたって、法令の定めに基づいて国民や企業などの主体に、必要経費などの捻出方法として負担を強制する金銭通貨お金)で、日本では税金(ぜいきん)と言われる。一部の国で国防に係る徴兵制などが見られるが、安定した税収を確保するため、物納労働を採用することは減ってきている。税制(ぜいせい)(租税制度)は、歳入(財政)の根幹および政治経済経世済民)の要因となる。商売や契約・取引などの行為および所得や有形無形の財産などに対して税を賦課することを課税(かぜい)、課税された税を納めることを納税(のうぜい)、徴収することを徴税(ちょうぜい)、それらについての事務を税務(ぜいむ)という。政府の財政状況において租税徴収額を減額することを減税(げんぜい)、逆に増額することを増税(ぞうぜい)という。日本の租税については、日本の租税の項を参照
租税の機能

政府は、国家の基盤的機能を維持するため、個人から生殺与奪の権利を取り上げ、社会的ジレンマ外部性フリーライダー)を回避する施策を検討しなければならない。租税には、次の3つの機能・効果があるとされている。
公共サービスの費用調達機能 - 「市場の失敗」という言葉に象徴される市場経済のもとでは提供困難なサービス(軍事、裁判、警察、消防、公共事業など)の提供のための費用を調達するための機能[1]

所得の再分配機能 - 自由(私的財産権の保護)と平等(生存権の保障)は、究極的には矛盾する考え方であるが、今日の多くの国では、いわゆる福祉国家の理念のもと、国家が一定程度私的財産に干渉することもやむを得ないことと考えられている。このような考え方に基づいて持てる者から持たざる者に富を再分配する機能[2]

景気の調整機能 - 自由主義経済体制における特殊な調整機能。景気の循環は不可避のものとされるが、景気の過熱期には増税を行うことにより余剰資金を減らし投資の抑制を図る。逆に後退期には減税を行うことにより余剰資金を増やし投資の活性化を行う。これにより、ある程度景気を調節することが可能であるとされる。現代の租税制度は累進課税を採用している租税が国などの主要な財源を占めているため、所得の変動に応じた税率の変動により、景気が自動的に調整されるという効果を有する。この効果は「自動景気調整機能(ビルト・イン・スタビライザー)」と称される[3]

一方、税金は経済全体を調整するための機能とみなす機能的財政論は、前述の公共サービスの費用調達機能に否定的である。この論によれば、租税は、財源確保の手段ではなく、物価調整の手段であり、政府が負債を増やすことで、貨幣供給量が増えて、インフレに向かい、政府が増税によって負債を返却したら、その分だけ貨幣が消え、貨幣供給量が減るから、デフレへと向かうとされる。そのほかに、炭素税のように、二酸化炭素の排出抑制の手段にもなり(ピグー税)所得再配分の手段としても重要である[4]

また、表券主義によれば、租税の目的は政府が発行する通貨に対する需要を生み出すことであり、歳入を生み出すためではない。通貨の利用者たる国民が、通貨を手に入れようと、労働力、資源、生産物を政府に売却するように仕向けるためである[5]。政府が「お金」の価値を保証することと租税の制度を存続させることとは表裏一体で、日本においては、明治時代の紙幣・債権経済への移行期に地租改正を行い通貨による納税制度を取り入れている。政府が「お金」の価値を保証することは、近世社会以降において治安と並んで国家的機能の重要な働きの1つで、国内的なあらゆる取引における一定の価値および安全性を保証するものである。「グレシャムの法則」も参照
租税の基本原則

租税制度に関する一般的な基本原則として、アダム・スミスの4原則やアドルフ・ワグナーの4大原則・9原則、マスグレイブの7条件などの租税原則が知られており、それらの理念は「公平・中立・簡素」の3点に集約できる[6]。それらはトレードオフの関係に立つ場合もあり同時に満たされるものではなく、公正で偏りのない税体系を実現することは必ずしも容易ではない。種々の税目を適切に組み合わせて制度設計を行う必要がある[7]

租税原則[8]アダム・スミスの
4原則
公平の原則
税負担は各人の能力に比例すべきこと。言い換えれば、国家の保護の下に享受する利益に比例すべきこと。


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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)
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