租庸調
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租庸調(そようちょう)、または租調庸(そちょうよう)とは、日本中国及び朝鮮律令制下での租税制度である。
日本の租庸調

日本の租庸調制は律令制で整備された。中国の制度を取り入れ修正を施した。

租(田租)は班給した口分田に対する課税で[注釈 1]、その面積に基づき収穫物から規定の割合が徴収され、郡衙正倉へ運ばれ蓄えられ、各の財源へ当てた。

庸は労役が課されたが、課されない場合は物納とされ、その庸物は都の民部省へ納め中央政府の財源へ当てた。調は各国の規定の物資を、民部省・主計寮の監査の下、大蔵省へ運び入れた。徴収作業は8月から始め、郡家・国庁の倉庫に集められ、木簡が付けられ、11月末までに都へ運搬した。地震土砂災害などの天変地異が発生した場合には、地域的に免除されることがあった[注釈 2]

庸調物の都への物納は、郡司が運搬役(運脚夫)を選抜し(庸の労役の扱いだった)、集団を作り、都まで担いで徒歩で運搬した。

運脚の集団は、国府を直線で結ぶ官道(駅路)七道を歩き、で宿泊した(→日本の古代道路#民衆交通)。集団から逸れた運脚は、食料が尽き餓死することもあった。

租は、口分田1段につき2束2把とされ、これは収穫量の3 %から10 %分に相当した。原則として9月中旬から11月30日までに国府へ納入され(田租、この移送を「輸」と呼ぶ)、災害時用の備蓄米(不動穀)を差し引いた残りが国衙の主要財源とされた。しかし、歳入としては極めて不安定であったため、律令施行よりまもなく、これを種籾として百姓に貸し付けた(出挙)利子を国衙の主要財源とするようになった。一部は舂米(臼で搗いて脱穀した米)として、1月から8月30日までの間に、京へ運上された(年料舂米)。

また、戸ごとに五分以上の減収があった場合には租が全免される規定(賦役令水旱虫霜条)があり、そこまでの被害が無い場合でも「半輸」と呼ばれる比例免の措置が取られるケースがあったが、当時の農業技術では、全免・比例免を避けることは困難であった。そこで、1つの令制国内において定められた租の総額に対して7割の租収入を確保することを目標として定めた「不三得七法」と呼ばれる規定が導入されたが、これを達成することも困難であったため、大同元年(806年)に旧例として原則化されるまでしばしば数字の変更が行われた。

唐の律令では、丁の人数を基準とした丁租であるのに対して、日本の律令では田の面積を基準とした田租となっている。このため、日本における租は律令以前の初穂儀礼に由来するとの説もある。

正丁(21歳から60歳の男性)・次丁(61歳以上の男性)へ賦課された。元来は、京へ上って労役が課せられるとされていたが(歳役)、その代納物の納入、もしくは上京生活を支える仕送りとして、布・米・塩などを京へ送るものを庸といった[注釈 3]。庸を米で納める場合は庸米(ようまい)、布で納める場合は庸布(ようふ)と称した。改新の詔では、1戸あたり庸布1丈2尺あるいは庸米5斗を徴収する規定があり、それが律令制下でも引き継がれたと考えられている。京や畿内飛騨国(別項参照)に対して庸は賦課されなかった。現代の租税制度になぞらえれば、人頭税の一種といえる。

庸は、衛士や采女の食糧や公共事業の雇役民への賃金・食糧に用いる財源となった。
庸米

大宝律令・養老律令には庸米に関する規定は存在していなかったが、『延喜式』には正丁1名あたり米3斗とする規定があること、平城宮などから出土した木簡に庸米1俵として5斗・5斗8升・6斗などの分量が記されているものがあることから、古代を通じて庸米が徴収され、1俵=2丁分の庸米に相当したとみられている。また、庸が衛士や采女、その他雇役民の食糧に充てられたという点からも、庸としての米は重要な部分を占めていたと考えられている[2]
庸布

大宝律令では、当時一般的な基準とされていた常布132枚分に相当する布2丈6尺が正丁1名あたり徴収された(ともに幅は2尺4寸)。だが、実際には程なく庸は半減され、慶雲3年(706年)には定制化され、事実上正丁1丈3尺が徴収されることになった。養老元年(717年)には4丈2尺(1丁分の庸布+調布の長さ)を1端、2丈8尺(2丁分の庸布)を1段と称するようになり、端と段は後には長さの単位としても用いられるようになった。なお、庸布には納付した人物の国郡郷姓名を両端に墨書する規定が存在していた[2][3]
調

正丁・次丁・中男(17歳から20歳の男性)へ賦課された。繊維製品の納入(正調)が基本であるが、代わりに地方特産品34品目または貨幣(調銭)による納入(調雑物)も認められていた[注釈 4]。これは、中国の制度との大きな違いである。官人の給与(位禄季禄)に充てられる財源であり、民部省・主計寮の監査の下、大蔵省へ直接運び入れた。

京や畿内では軽減、飛騨では免除された。
正調


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