この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。ご自身が現実に遭遇した事件については法律関連の専門家にご相談ください。免責事項もお読みください。
私的録音録画補償金制度(してきろくおんろくがほしょうきんせいど)とは、私的使用を目的とした個人または家庭内での私的複製について、日本の著作権法で認められていることの例外として、デジタル方式で録音・録画する場合に於いては、一定の割合で補償金を徴収し、著作権者への利益還元を図ろうとするものである。 日本では、1992年(平成4年)の著作権法改正に伴って導入された。 DATやMDやCD-R、CD-RW、DVD-RW、DVD-R、DVD-RAM、Blu-ray Discのデジタル記録メディアを用いて、録音・録画する場合には、利用者は一定の補償金を管理団体に支払わなければならない。この補償金は、機器やメディアの販売価格に上乗せされている為、購入時に無自覚のうちに支払っている事がほとんどである(録音・録画の対象となるコンテンツの著作権を、機器やメディアの使用者自身が持っている場合は、権利申請する事で補償金の返金を受け取る事も出来る)。 著作権権利者団体が「制度の拡大」を要求している一方で、製造企業や利用者からは「DRM(Digital Rights Management、デジタル著作権管理)があれば補償金は不要」と要求しており、著作権法改正をめぐる重大な争点の一つとなっている。 私的録画補償金制度は、後述の裁判の影響で事実上制度破綻に陥り、私的録画補償金管理協会は2015年(平成27年)4月1日に解散した。 一般に著作物を複製することは、著作権者の許可なく行うことはできないが、個人的に使用することを目的とした複製については、その規模が零細であって権利者の利益を不当に害するとはいえないし、また仮に規制したとしても、現実に摘発・逮捕するのは困難であることから、自由にかつ無償で行い得るとされている(著作権法30条1項、私的複製。以下特に断らない限り条文は日本の著作権法のもの)。 日本では1970年の時点で、ビデオデッキ、ビデオテープの製品化がなされ、普及することが予見されており、日本音楽著作権協会が録音使用料規定案を作成するなど、著作権料の徴収に向けた準備が進められていた[1]。 その後、技術の発達により、デジタル方式で録音や録画を行うことにより、オリジナルと全く同質の複写が容易に作成できる高性能な機器が登場し、それらが一般家庭に広く普及したことによって、そのような利用方法で音楽・映画等を楽しむ利用者が増えている。これに伴い、個々の利用については零細であっても、全体として見れば無視できないほどの規模で録音・録画がなされるようになった。 そのため、これらの大規模な利用を自由に許していたのでは、権利者が本来得られるはずの利益が得られず利益が不当に害されることになるのではないか、という点が問題となった。特に日本では、レコードからコンパクトディスク(CD)に移行して以来、レンタルレコード店のCDを、デジタル方式で私的録音する利用者が増えたことによって、CDの売り上げ枚数が減少し、本来得られる利益が得られない、といった事態が生じたのである。 この問題を解消するために、西ドイツやアメリカ合衆国では、権利者に対する補償制度を既に導入しており(注:両国に限らず欧米先進国には、日本のようなレンタルレコード店はない。ただし、CDの価格は日本の半額以下と安価であり、再販売価格維持制度も無い)、日本でも同様の措置を講ずるべきではないか?との検討がなされその結果、1992年の著作権法一部改正によって、私的録音録画補償金制度が導入された。 これにより、利用者による私的な録音・録画を自由に許しつつも、その複製が一定の機器・メディアによって行われる場合に限って、権利者に報酬請求権を与え、補償金報酬を得させ、両者の利益の調和を図ることとなった。 利用者は次の場合に、権利者に補償金を支払わなければならない。 「政令で定めるもの」として2005年5月現在、次のものが指定されている(著作権法施行令第1条および第1条の2)。
概要
制度の趣旨と導入の経緯
日本での制度の概況
利用者の支払い義務補償金の流れ
私的使用を目的として、「デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器であって政令で定めるもの」により「当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるもの」に録音又は録画を行う場合(著作権法30条3項)
ただし例外として、「放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの」及び「録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するもの」を利用してデジタル録音・録画を行う場合には補償金を支払う必要は無い(同項)。
著作隣接権の目的となっている実演又は、レコードを同様の手段で利用する場合(102条1項)
録音機器・記録媒体
DAT(デジタル・オーディオ・テープ)
DCC(デジタル・コンパクト・カセット)
MD(ミニ・ディスク)以上3種類は制度導入時の1992年から。
CD-R(コンパクト・ディスク・レコーダブル)
CD-RW(コンパクト・ディスク・リライタブル)以上2種類は1998年11月1日から。