福島第一原子力発電所事故の影響
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福島第一原子力発電所事故の影響(ふくしまだいいちげんしりょくはつでんしょじこのえいきょう)では、2011年3月11日東北地方太平洋沖地震を端緒に発生した福島第一原子力発電所事故に起因する、放射性物質による環境食品人体への影響、社会的・経済的影響、住民の避難および風評被害について詳述する。
概要発電所周辺の汚染分布図 (3月22日 - 4月3日)

福島第一原子力発電所事故(以下「原子力発電所」は一般に「原発」という)により大気中に放出された放射性物質の量は、ヨウ素131と、ヨウ素131に換算したセシウム137の合計として、約90(900ペタベクレル(Bq)[1][2] と推算されている。日本国内では食品・水道水、大気・海水・土壌等から事故由来の放射性物質が検出され、住民の避難、作付制限、飲料水・食品に対する暫定規制値の設定や出荷制限といった施策が採られた。原子炉の停止、放射性物質検出の情報、施策および施策への懐疑的見方は、風評被害、人体の健康に関する論争、市民活動、経済への影響など多岐にわたる影響を及ぼした。

本記事では、その影響度や規制内容が多岐にわたるため、全体として重要と思われるもののみを記載した。また、実際に行われた判断、措置、報道された主張を妥当性の如何にかかわらず記載した。よって読者は、本項目に記載された内容が影響や規制対象の全てではないこと、相対的ないし確定的なデータに基づかない判断および措置、客観性を欠く主張、矛盾をきたす表現を含むことに留意する必要がある。
放射性物質による汚染の状況と影響

2011年3月17日、厚生労働省食品衛生法上の暫定規制値を発表し、規制値を上回る食品が販売されないよう対応することとして、各自治体に通知した。

内閣官房長官枝野幸男は、3月21日の記者会見で「今回の出荷制限の対象品目を摂取し続けたからといって、直ちに健康に影響を及ぼすものではありません」[3]、「仮に日本人の平均摂取量で1年間摂取した場合の放射線量は牛乳でCTスキャン1回分、ホウレンソウでCTスキャン1回分の5分の1」と述べ[4]、冷静な対応を求めた。
土壌と海洋汚染
土壌・地上

福島第一原発事故を含む大規模な原子力事故は、広範囲に放射性降下物による放射能汚染を生じさせる。

2011年3月23日、文部科学省は、福島第一原発から北西に約40km離れた福島県飯舘村で採取した土壌から、放射性ヨウ素が117万Bq/kgセシウム137が16万3,000Bq/kg検出されたと発表した[5]チェルノブイリ原子力発電所事故では55万Bq/m2以上のセシウムが検出された地域は強制移住の対象となったが、京都大学原子炉実験所(現・京都大学複合原子力科学研究所)の今中哲二によると、飯舘村では約326万Bq/m2検出されている[6]

3月31日、国際原子力機関 (IAEA) は、福島第一原発の北西約40kmにある避難区域外の福島県飯舘村の土壌から、修正値で10倍の20MBq/m2のヨウ素131を検出したと発表した[7]

5月の東京都内各地の一日単位の平均値は、東京都健康安全センターが地上18mでおこなっている環境放射線量測定によると、0.068μSv/h?0.062μSv/hであった。5月5日から5月25日まで日本共産党東京都議会議員団が地表1mで測定した結果では、同程度の濃度だった地域は大田区杉並区町田市など、都内全域で見るとごく限られた範囲であった。比較的高い地域は、青梅市あきる野市練馬区が0.09μSv/h台、江戸川区?江東区東京湾岸地域が0.1μSv/h台、最も高い地域が足立区?葛飾区で0.2μSv/h台?0.3μSv/h台であった。また、新宿区内約3.5kmという限られた範囲内の測定でも、0.066μSv/h?0.116μSv/hと大きな開きがあり、狭い範囲でもバラつきがみられた[8]。東京都の5月の調査によって、東京都大田区にある下水処理施設の汚泥の焼却灰から10,540Bq/kgの放射性セシウムが検出された[9]

日本政府の原子力規制委員会は事故後、福島県内の小学校などに放射線量計(モニタリングポスト)を約3000台設置し、年間6億円の維持費を支出している。放射性降下物の除染進展や線量計の耐用年数が近いことから、規制委は線量が比較的低い地域にある約2400台を撤去する方針を一時掲げたが、住民の反発が大きく、2019年に撤回した[10]

福島第一原発から遠く離れた地点でも、ホットスポットと呼ばれる点在する汚染地域が確認されている。
海洋汚染詳細は「福島第一原発事故による放射能水の放出(英語版)」および「ALPS処理水」を参照福島第一原発を視察し、浄化処理した汚染水を手にする菅義偉首相。菅首相が飲まなかったため、海洋へ放出された。2020年9月。[11]

2011年3月21日、東京電力が福島第一原発南放水口付近の海水を調査した結果、安全基準値を大きく超える放射性物質が検出されたことが明らかとなった[12]。22日には、原発から16km離れた地点の海水からも安全基準の16.4倍の放射性物質が検出された[13]

福島第一原発では汚染水が発生し続けており、敷地内に建設されたタンクで100万トン以上(2019年時点)が保管されている。多種の放射性物質が除去されているが、トリチウムは分離できないためである。国内外の他の原発では、トリチウムを含んだ水を海に流しているが、福島第一原発の汚染水については、漁業者などが海洋放出に反対している。全国漁業協同組合連合会は反対理由を、安心面で「事故を起こした炉心に触れた水は、他の原発の水と違う」と説明している[14]

2020年2月25日、政府の原子力災害対策本部は、福島県沖で漁獲される魚介類の出荷制限を全て解除した(最後まで規制対象だったのはエイの一種であるコモンカスベ)[15]

2023年8月、トリチウムを含んだ処理水が処理として海洋放出された[16]
食品の汚染
牛肉

2011年7月、福島県南相馬市で飼育されていた牛が(汚染された飼料によって)放射性セシウムに二次汚染され、その牛肉が検査を受けないまま出荷流通し、東京、神奈川静岡など10都道府県に放射能に汚染されたまま消費されていた。東京・府中市内の食肉処理業者が仕入れた牛肉は3400ベクレル、静岡市内の食肉加工業者が購入した肩ロースは1998ベクレルの放射性セシウムが検出された。この問題で、放射線防護学が専門の野口邦和・日本大学専任講師は、妊婦や子供が1、2回食べたところで問題はないが、県は農家に対して飼料の管理を徹底するように指導すべきだとコメントした[17]


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