福家警部補の挨拶
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福家警部補の挨拶
著者
大倉崇裕
イラスト山本重也(単行本)
くまおり純(文庫本)
発行日2006年6月30日(単行本)
2008年12月12日(文庫本)
発行元東京創元社創元クライム・クラブ
ジャンル推理小説
日本
言語日本語
形態四六判仮フランス装(単行本)
ページ数254(単行本)
348(文庫本)
公式サイト ⇒東京創元社|福家警部補の挨拶
コードISBN 978-4-488-01214-4
ISBN 978-4-488-47002-9(文庫本)

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『福家警部補の挨拶』(ふくいえけいぶほのあいさつ)は、大倉崇裕による日本の短編推理小説集「福家警部補シリーズ」の第1作。シリーズ続刊として2009年に『福家警部補の再訪』(ふくいえけいぶほのさいほう)、2013年に『福家警部補の報告』(ふくいえけいぶほのほうこく)が刊行されており、本項ではシリーズ全体についても述べる。単行本は創元クライム・クラブレーベル、文庫本は創元推理文庫より刊行される。

女性刑事・福家警部補を主人公とする本格ミステリシリーズの第1作[1]で、形式はいわゆる倒叙モノである[2]。著者は大の「刑事コロンボシリーズ」のファンであり、シリーズの小説版の執筆(英語小説は存在せず、映像とシナリオの翻訳から直接日本語でノベライズされた)を手がけたこともある。ヒロインにはコロンボのほか、風采の冴えない探偵としては元祖であるブラウン神父に共通する描写(目をパチパチさせる、傘をうまく扱えない、一見気弱そうなのに無頼漢などには結構強気に対応できる、小柄でしばしば大男と凸凹コンビを組むなど)も与えられている。3人ともファミリーネームしか判明していない(ブラウンはイニシャルJのみ)点も、共通している。

2007年度の本格ミステリベスト10で第8位にランクインした。

本作の一編「オッカムの剃刀」が2009年1月2日NHKにて永作博美主演でテレビドラマ化された。また、2014年1月14日から、檀れい主演で福家警部補シリーズを原作とした連続ドラマがフジテレビ系にて放送された。
シリーズ一覧

福家警部補の挨拶(2006年6月30日 東京創元社
ISBN 978-4-488-01214-4 / 2008年12月12日 創元推理文庫 ISBN 978-4-488-47002-9

福家警部補の再訪(2009年5月25日 東京創元社 ISBN 978-4-488-02533-5 / 2013年07月26日 創元推理文庫 ISBN 978-4-488-47006-7

福家警部補の報告(2013年2月25日 東京創元社 ISBN 978-4-488-02541-0 / 2016年12月16日 創元推理文庫 ISBN 978-4-488-47007-4

福家警部補の追及(2015年4月24日 東京創元社 ISBN 978-4-488-02544-1 / 2020年05月20日 創元推理文庫 ISBN 978-4-488-47008-1

福家警部補の考察(2018年5月25日 東京創元社 ISBN 978-4-488-02557-1

登場人物
福家(ふくいえ)
捜査一課の
警部補。身長152cmと小柄で、髪はショート、縁なしの眼鏡をかけている。「刑事に見えない」と良く言われる。寝食を忘れて捜査に没頭することを厭わず、同僚に「眠らずの魔女」と呼ばれている。関係者が漏らしたほんの小さな矛盾も聞き逃さず、人の顔と名前は一度で覚えることができる。持ち歩いているバッグの中身はどこに何が入っているか分からないほど雑然としており、事件現場に入る際には大抵警察手帳が見つからず、刑事に見えない風体も相まって、現場を規制する制服警官には毎回と言っていいほど止められ、押し問答になる。事件関係者に聴取する際も同様で、手帳を示すまでの最初のやり取りで、用心している容疑者の毒気を抜いてしまい、その後は自分のペースに巻き込んでいく。年齢については『未完の頂上』で「22歳か23歳で採用されてから10年ほど」と漏らしているが、女子大生と間違われるなど、かなり若く見えるらしい。相手からの主観描写で美貌であるような言及は一切ないが、カメラマンから突然モデルにと望まれるなど、何がしか専門家の審美眼を刺激するものは持っている模様である。当初は一見凡庸な印象の女性が高い捜査能力(推理、観察、聞き出し)を発揮するという意外性が持ち味だったが、次第に、不眠不休への耐性、広く深いオタク的知識、とてつもなく酒に強いなどの設定が加わり、特に異常な健脚など身体面のスーパーウーマン的特性を覗かせ始めている(ただし自転車に乗れない)。犯人以外の人間は彼女と接することによってネガティブモードから脱却するきっかけを与えられることが多いというジンクスもある。物腰は柔らかく、特に犯人と目される人物には下出に出ることが多いが、ヤクザやチンピラには凛然と対応できる。オタク的なファン心理を吐露する以外には自分の感情を語ったり説教めいたことを口にすることはない。尊敬する人物を逮捕することになっても黙然と対処する。苦手なものは犬と寒さ。下の名前は不明。
二岡 友成(におか ともなり)
機動鑑識班。福家のパートナーのような刑事。タフな福家と異なり、真夜中に呼び出されたり、睡眠時間が短いとその分疲労もたまる普通の人間。福家に振り回される。
石松 和夫(いしまつ かずお)
捜査一課の警部補。鬼瓦のような人相とは裏腹に、情に厚く優しい。
収録作品

いずれも東京創元社の『ミステリーズ!』に掲載された。
福家警部補の挨拶
最後の一冊
『ミステリーズ!』vol.12(2005年8月)掲載、「本を愛した女」を改題『すべては、本のために』、私設
図書館「江波戸図書館」の館長・天宮祥子は、オーナーでありながら本に興味がなく、本を愚弄する江波戸宏久を殺害する。完全犯罪のはずだったが、本を愛しすぎたあまりに、その目論見は崩れてしまう。

天宮 祥子:私設図書館・江波戸図書館の館長。本をこよなく愛する。

江波戸 宏久:図書館のオーナー。本には全く興味がなく、図書館もすぐに売る予定だったが、天宮に止められた。

オッカムの剃刀
『ミステリーズ!』vol.13・14(2005年10月・12月)掲載、テレビドラマ化作品かつて、科警研で数々の技術を残し伝説と言われた柳田は、退職後、大学犯罪学講師として教鞭を取っていた。しかし、同じ大学の准教授・池内に過去の“あること”を理由に脅迫され、彼を強盗に見せかけて殺害する。犯罪学のスペシャリストで警察の捜査手法も熟知した“教授”に福家の追及が迫る。

柳田 嘉文:城北大学犯罪学講師。元科警研科学捜査部主任。復顔術のエキスパートとして様々な事件を解決に導いた伝説の人物。“教授”のあだ名で呼ばれる。

池内 国雄:城北大学犯罪学の准教授。柳田に心酔し、復顔術を研究していた。ヘビースモーカー。柳田を脅迫する。



愛情のシナリオ
『ミステリーズ!』vol.16(2006年4月)掲載役を得るためにライバル女優・小木野マリ子を脅迫した柿沼恵美。しかし、小木野の方が一枚上手だった。小木野は自分のシナリオ通りにことを進めていき、翌朝、恵美は遺体で発見される。死因は一酸化炭素中毒だった。事故かと思われたが、普段の恵美の習慣と異なる点を、福家は見逃さなかった。

小木野 マリ子:女優。潔癖症。恵美とはデビューも同時期で、常にライバルとして競い合ってきた仲。

柿沼 恵美:女優。泥沼の離婚劇でイメージダウンしていた。イメージアップを図り、オーディションで勝つために、不倫をネタにマリ子を脅迫する。



月の雫
『ミステリーズ!』vol.15(2006年2月)掲載経営不振で大手の酒造会社に吸収合併される寸前の谷元酒造。合併とは名ばかりで、乗っ取り同然、しかも相手は大量生産と儲け主義に走り、粗悪品ばかり造る会社だった。いい酒造りを信念に掲げる谷元は、その矜持を守るために、相手会社の社長を殺してしまう。

谷元 吉郎:谷元酒造社長。いい酒造りを信念としている。酒はうまいが、性格は頑固で厳しい。

佐藤 一成:佐藤酒造社長。造っているのは、機械醸造による粗悪品ばかり。商売はうまいが人間的には今一つ。

福家警部補の再訪
マックス号事件
『ミステリーズ!』vol.19〈2006年10月〉、「福家警部補の災難」を改題警備会社社長の原田明博は、強請屋だった過去を脅迫してきた元同業者・川上直巳をクルーズ船「マックス号」の船内で殺害することを決意する。原田の計画は完璧だったが、逮捕された銀行強盗犯が前日に拳銃を船内に隠したと証言したため、警察の捜索が入り、出航時間が遅れに遅れた上、捜査一課の福家警部補が船を下り損なったことだけは誰にも予見できなかった。

原田明博 - ハラダ警備保障社長。強請屋という裏の顔で探偵社から警備会社へと成長した。

川上直巳 - 原田の元仕事仲間。借金苦で、過去をネタに原田を脅迫する。

仲谷良平 - マックス号船長。

奥村紀之 - マックス号パーサー。

岡山勝己 - マックス号乗客。直巳の債権者の部下。

失われた灯
『ミステリーズ!』vol.21・22〈2007年2月・4月〉脚本家の藤堂昌也は、自身のデビュー作が盗作であることを突き止め、脅迫してきた古物商の辻伸彦を殺すことを決める。


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