神経診断学
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神経診断学(しんけいしんだんがく)とは神経学の考え方を臨床医学へ応用したものである。近年の医学は生活習慣病悪性腫瘍といった慢性疾患のコントロールが主になり、随分と体系が変わってしまったが難病が多く治療が確立していない神経疾患の分野ではまだ古典的な医学の考え方が色濃く残っている。古典的な医学の考え方とは患者の症状を聴き、その主訴から開放することが医療者の勤めであるという考え方である。現在、自覚症状が出ない病気が増えたため医師の業務は大きく変わり、いかに上手く検査を扱うかになっている。
目次

1 神経学的診断のプロセス

2 病因的診断

2.1 病因的診断法

2.2 病因的診断のプロセス


3 解剖学的診断の総論

3.1 解剖学的診断のプロセス


4 解剖学的診断の各論

4.1 腱反射の診断


5 末梢神経障害

6 中枢神経障害

7 参考文献

神経学的診断のプロセス

神経疾患の診断は以下の3段階を経る。
解剖学的診断
患者の愁訴及び神経学的診察所見から病変部位を決定する。
病因的診断
症状の発症様式から病因を決定する
臨床的診断
病変部位、病因及び患者の年齢における疾患頻度などを基にして疾患を決定する。
病因的診断

まず神経疾患の主な病因を9つ挙げる。血管障害性、炎症性(感染及び免疫性)、占拠性(腫瘍性含む)、変性、遺伝性、機能性、脱髄性、代謝性及び中毒性、以上の9つに大体は分類できる。
病因的診断法

病因は発症様式によって決定される。神経内科では以下の6つに上記9つの病因を分類することができる。
突発完成発症型
血管障害性発症時刻(何時何分)を特定することができれば突発性という。突発完成発症型は1日以内に症状が完成する型であり、これは血管障害性である。
脳血管障害が有名である。
突発再発性
主に機能性繰り返し起こっていれば再発性という。突発再発性には血管奇形、機能性(神経痛発作、てんかんなど)、代謝性(低血糖など)がある。
急性発症:感染症、免疫性、中毒性、代謝性
数日から1週間以内で症状が極期に至れば急性と診断する。感染症などの炎症性疾患が代表である。
急性再発性:脱髄性
多くの自己免疫性疾患、例えば多発性硬化症、神経ベーチェット病、重症筋無力症が含まれる。
亜急性発症:占拠性、感染性、免疫性
数週間から数ヶ月で極期に至れば亜急性と診断する。結核性、または真菌性の髄膜炎脳腫瘍が代表である。
慢性(進行)性:遺伝性、変性
半年にわたってゆっくり進行すれば慢性と診断する。変性や遺伝性疾患が含まれる。遺伝性のうち劣性遺伝の形式をとるものは発症年齢が早く、例えばウィルソン病は10歳から25歳で発症する。優性遺伝のものは発症年齢が遅い、例えばハンチントン病は30?50歳で発症する。神経は遺伝性疾患が多いので家系図も重要である。
病因的診断のプロセス

救急診療を例に挙げる。頭痛を訴える患者が来たとしよう。救急では頭痛はクモ膜下出血か髄膜炎から考える。「感冒」「胃腸炎」と誤診するくらい元気に受診する患者がいる。「片頭痛」「高血圧性脳症」と誤診されることも多い。そのためクモ膜下出血を見つけるために以下の問診をする必要がある。

すごく突然痛み出したのですか?

こんなにひどい頭痛は初めてですか?

この2つの問診で「はい」と答えられたら、クモ膜下出血の疑いが高いので即座に頭部CTスキャンをする必要がある。髄膜炎などでは「次第に増強して我慢ができない」頭痛であり、頭痛が起こったとき何をしていましたかという質問に対してあいまいになったりする。
解剖学的診断の総論

まず第一に解剖学的診断と病因的診断が正しければ、臨床診断を誤ることは少ない。臨床診断の誤りは病因的な診断よりも解剖学的診断が原因のことが多い。画像上、身体所見上異常を見つけたら常にその局在で症状が説明できるかを検討するべきである。また、パーキンソン症候群の疑いの患者で頭部CTをとったら、大脳基底核にラクナ梗塞と思われる所見があったというだけで脳梗塞によるパーキンソン症候群と診断してはいけない。少なくとも病因的診断で血管性病変の発症パターンかどうか確認しなければならない。神経内科においては画像診断は補助診断であり、解剖学的診断は神経学的所見を優先する。
基本方針
中枢神経の簡略図を描き、推定病変部を塗りこむ。
重要な経験則
病変部位はできるだけ小さくかつ一箇所にした方が誤診率は低くなる。
解剖学的診断のプロセス

まず、病変が中枢神経大脳脳幹小脳脊髄)か末梢神経脳神経及び脊髄神経)か筋肉か、この3つのうちどれかを決定する。もし中枢神経系障害ならば、次に大脳から脳幹の障害か脊髄の障害なのかを決定する。中枢神経系、末梢神経系、筋肉の鑑別には筋萎縮、腱反射、感覚障害の三徴を重視すればおのずと明らかになる。
筋萎縮
筋疾患や下位運動ニューロン障害でおこるが、運動不足でも起こる。必ず左右差を比べる必要がある。
腱反射
合わせて病的反射もみる。麻痺筋のトーヌスも大事である。筋肉疾患では筋萎縮が高度になれば腱反射は消失するが、発症早期は腱反射は保たれる。
感覚障害
筋肉疾患では感覚が障害されることはない。末梢神経障害では運動神経と感覚神経が並走しているので通常は運動麻痺部に全感覚障害がおこる。中枢神経では感覚障害の様式は多様である。
解剖学的診断の各論


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